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突然やってきた、超大物の鱈(タラ)との格闘の結果は…【お米農家のヨメごはん#16】

こんにちは。富山県の黒部市というところで、お米だけを作っている小さな小さな農家の濱田律子です。旦那とココ(娘・11歳)と3人で、地道に真面目にコツコツとお米を作りながら、仕事に子育てにドタバタもがきつつも楽しく暮らしている、そんな私たちの食卓周りの日常を、皆さんにお伝えする連載の16回目。

今回は、この時期から美味しくなってくる富山湾の海の幸と、田んぼでの土づくり作業についてお届けしたいと思います。

お裾分けでやってきた、超大物の鱈

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冬に入ろうとしている。

山の上はもう真っ白になっていて、あとはいつ平野部で雪が降るか……。スタッドレスタイヤへの交換はもう済ませた。防寒具も長靴の準備も万端。あとは、雪を心待ち……ではなく、できるだけ先でありますようにと祈るばかりだ。

日本海側の冬は、朝から真っ暗で厚い雲が空を覆い、鬱々とした日が続く。あまり嬉しくない季節だけれど、富山湾の魚が美味しくなるのは大歓迎だ。

なんといっても鰤が有名だろうけれど、一般的な富山県民は、高価な鰤を日常で食べる事はほとんどない。もっとお手頃な、美味しいお魚がたんまりある。

これは冬に限らずだけれど、よくお裾分けでお魚をいただく。そしてそれは突然、こちらの事情に関わらずやってくる。

できれば時間にも心にも余裕がある時に。
できればそんなに大物ではないお魚で。
できれば捌きやすいお魚を。
できれば程々の量で。
できれば翌日が生ごみの日に。

というこちらの願いとは裏腹に、先日どーんと、大きな大きな鱈をいただいた。嬉しい! 嬉しいけれど、ちょっと困った。この日は仕事が山のようにたまっていて、とても鱈と格闘している時間はなさそうだ。というわけで一旦は冷蔵庫に入れてみたものの、あまりのシュールさに笑ってしまった……。

せっかくのいただきもの! 仕事はとりあえず置いといて、鱈をさばいてみよう、と意気込んだものの、あまりの大きさ、そしてヌルヌル滑る鱈に怖気つく。
これまで何度か大きなお魚をさばいた事はあったけれど、ここまで難易度が高い魚は初めて。しかも臭いが強烈……。

あまりの修羅場に娘は自分の部屋に避難するほど……

スーパーで切り身で並ぶ鱈は、あんなにも綺麗な白身で美味しそうに見えるのに、さばかれる前の鱈ってこんなんなんだ……。

さばいている最中の写真はとても撮影できないスプラッター状態。ちょうど学校から帰ってきた娘は、あまりの修羅場に恐れおののき、自分の部屋に避難したくらい。

ネットで「鱈 捌き方」と検索して、大汗をかきつつ何とか切り分けていく。大好きな白子だけれど、不気味なくらい腹から大量に出てきて、私でさえちょっと引いてしまったくらい。

まさに、命あるものをいただく、その言葉通りだ。

その白子は、シンプルに天ぷらにした。

娘はとっても怖がって、最初は食べようとしなかったけれど「とりあえず一口でいいから食べてごらん! 食べてみて、食べられそうにないと思ったら無理に食べなくてもいいから」と言葉をかけた。

もしかしたら美味しいかもよ? と、娘にはどんな食べ物でもまずはトライさせるようにしている。

 恐る恐る食べる娘。外はカリッと、内はクリーミーで、ちょっと驚いてた様子だった。美味しいとは言わなかったけれど、あの鱈が、凄まじい状況を経て、こんな食べ物になる、という事だけは実感してくれたと思う。

透き通ったプリップリの白身は、ジャガイモと一緒にオーブン焼きに。

弱火のフライパンで、薄くスライスしたジャガイモをオリーブオイルでじっくり炒めて、ニンニクとベーコンを加えてさらに炒める。薄く塩をふった鱈も加えて、鱈にサッと火が通ったら、塩コショウで味を調えて、バターを塗った耐熱容器に移し、さらに上にバターを散らして、オーブンかトースターで15~20分ほど。火が通って表面に焼き色がつくまで焼く。パセリのみじん切りを散らせば完成!

鱈の旨みがジャガイモに浸み込んで、それはそれは美味しくなった!

自分でさばいたというストーリーが加わって、美味しさが倍増しただけかもしれないけれど、でもやっぱり、幸せな食卓になった。

田んぼでは、来年の米作りのための準備が着々と

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さて田んぼでは、来年の米作りが既に始まっている。仕込んでおいた堆肥が熟成されて、サラッサラの完熟に仕上がった。それを田んぼ1枚1枚に、せっせと撒いていく。

堆肥は、化学肥料のように即効性はないけれど、籾殻を田んぼに返したいという思いもあって、米作りを始めた当初からずっと続けている。

マニュアスプレッダーという堆肥をまく専用の農機具は、昔のサンダーバード(わかりますか!?)みたい。コンバインやトラクターみたいな、いかつい農機具と違って、コミカルな風貌でちょこちょこ田んぼを走り回る姿は、どこか愛おしさも感じてしまう。

刈り取った稲株からは、また次の新しい葉がグングン成長していて、中には稲穂をつける株もあるくらいだ。稲は本当にたくましい。けれど、そろそろ平野部でも雪が降る季節。

雪で埋もれる前の、青々とした田んぼでの農作業はまだもう少し続きます!

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