「おしゃれ」や「可愛いもの」が好きな子に絵本を選ぶなら
nullこんにちは、絵本ナビの磯崎です。「おしゃれ」って大人になるとセンスを問われる、ハードルが高いものになっていく感じ、ありますよね。でも、自分が可愛い!素敵!と感じるものを、好きに選んで組み合わせれば、それだけでもう、その人らしさの詰まった“個性”になるのではないでしょうか。
例えば小さな子が、全身柄の服だったり、同じ色だったりと、大人が見るとちょっと驚くような組み合わせを気に入って着ているとき。
「それ、ちょっとヘンかもよ?」と言いたくなる気持ちもわかりますが、その子にとってはきっと何か、譲れないこだわりがあるはず。だからこそ、そういった主張はとても愛おしいし、大事にしてあげたいな、と思います。
今回のテーマ「おしゃれ」「可愛いもの」では、好きなものを“選ぶ”ことから始まって、どうしてこの服を着るのか、着たらどんな気持ちになるのかといった“ときめく理由”に繋がるような本を選びました。
他人に褒められることが前提ではなく、あくまで大事なのは自分が“好き!”と感じる気持ち。そう気づけたら、既にもう、おしゃれ上級者なのかもしれません。
【分類の見かた】
●入門編:もともと「おしゃれ」「可愛いもの」が好きな子はもちろん、はじめの1冊としても楽しめる絵本(目安/1歳~)
●発見編:「おしゃれ」「可愛いもの」が好き!という子が、どんどん読み進めるのにぴったりな絵本(目安/3歳~)
●探求編:ちょっとディープで、自分はどんなものを「おしゃれ」「可愛い」って感じるんだろう?など、さらに興味が広がるような絵本(目安/5歳~)
【入門編】~新しい「好き」の入り口に~
null●あかちゃんから!「おしゃれの第一歩」はこの1冊
『プリンちゃん』
おかしのくにのプリンちゃんが、おしゃれをして「プリンアラモードひめ」に変身してお出かけするというストーリー。キラキラしたお菓子やふわふわのホイップを、自分で選んでいく様子は、まさに“おしゃれの入門編”。
「てっぺんにさくらんぼをのせたい!」というこだわりは、きっと男女問わず、誰にでもあるはず。好きなものを自由にのせていったら「こんな可愛いことになっちゃった!」「こんな大胆な組み合わせになっちゃった!」と、わくわくしながら楽しめます。
ちなみに、プリンちゃんのおかあさんはアイスクリーム。着飾ってパフェになった“あこがれのおかあさん”が登場する、『プリンちゃんと おかあさん』もあわせてどうぞ。
●「帽子っておもしろい!」めくって驚くしかけ絵本
『ぼうしとったら』
この本は、どのページも帽子部分が絵がわりしかけになっていて、上にめくって帽子を取ると「え?こんな髪型?」とびっくりするような、魅力的な展開が待っています。
帽子ってかぶるだけで、ちょっと変身するみたいなところもあるアイテムですよね。帽子をかぶると印象が変わったり、逆に帽子によってイメージが固定されたり。コック帽を被りたいから料理人を目指す、なんて子もいるかもしれません。
これをみて「この帽子かぶりたい!」「自分ならこんな髪型がいいな」と思うお子さんもいるのではないでしょうか。どれが好き?と、一緒に話しながら読むのもいいですね。
【発見編】~もっと「好き」を楽しもう!~
null●楽しい「きせかえ遊び」・・・だけじゃない!
『10かいだての まほうつかいの おしろ』
絵本の中で“きせかえ遊び”のような感覚が味わえる「10かいだて」シリーズ。第1弾は「おひめさま」、第2弾となるこちらは「まほうつかい」がテーマです。
どんなまほうつかいになるかを考えて、バリエーション豊富な服や髪型、靴などから選んでいくのが楽しい! おかしが好きだから、パティシエっぽいドレスと、チョコレートの靴と……などなど、組み合わせは無限大。出てくる髪型を真似たり、新しいドレスを考えたりといった楽しみかたもできますね。
さらに、「まほうを つかうための こころえ」として、“よく調べ、練習して、ときには休憩したり、やりかたを変えてみたり……”といった、生きる上での大事な知恵を授けてくれるようなページもありますよ。
●「受け継がれる服」に込められたストーリー
『ふゆのコートをつくりに』
これはお母さんが大事に着ていたコートを、子どものために仕立て直す様子をとても丁寧に描いたストーリーです。
お母さんが着ていた時の想い出を知って、さらにそこに、どのボタンにする?裏地はどうする?といった自分らしさをプラスして……。「こんな贅沢なおしゃれって他にあるかしら」って思うくらい!
こういったおしゃれもあるんだ、と感じるだけでも十分なんじゃないかと思えるような、素敵なお話です。つい忘れがちですが、誰かが身につけているもの/身につけていたものには、1つ1つに思い入れや歴史があるんですよね。
【探求編】~「好き」が導く!未知の世界~
null●どんな組み合わせも、ヒグチさんにかかれば「おしゃれ」に変身!
『ファッション マジック』
イチから「おしゃれ」を考えるのは、なんだか敷居が高いかも……? そんな人も、まずはあるものからチョイスして組み合わせて、「おしゃれ」を楽しんでみよう! そんなメッセージが、この本からは感じられます。
どれを選ぶかで「あ、私やっぱりズボンが好きなんだな」とか「花柄をいっぱい選んでるな」とか、自分でも気がつかなかったことが見えてきたりするかもしれません。
“無難”じゃない、収まりきらないほどの個性に溢れたヒグチユウコさんの絵はとっても魅力的。そんなヒグチさんの描く可愛い猫たちと一緒に、気軽におしゃれが楽しめるなんて! 私自身が子どもの頃に好きで追い求めていたのも、きっとこういうファッションだったな、と思います。
●「好きなものを着る」って、きっとこういうこと
『ボタン』
ママがしまっていた古いボタンから、娘のまゆちゃんが「どんな服についていたんだろう?」とイメージを膨らませていく絵本。この葉っぱの形のボタンがついてた服って、緑のワンピース? それともお花模様? その頃、ママはどんな風に過ごしていたんだろう……?と考えるまゆちゃんの、豊かな想像力が素晴らしいです。
最後にはママがボタンをたっぷりつけてくれた、オリジナルの服で出かけます。
服ができてよかったね、で終わらないのがこの絵本のすごいところ。
「私はこの服が好きだから、他人にヘンと言われても堂々としていられる」「だって、ボタンの数だけ“ママといっしょ”だから!」という、一歩先の展開が待っています。おしゃれの行き着く先ってこういうことだよね、と実感する奥深いストーリーです。
選ぶ楽しさから、背景にあるストーリーの話まで、「おしゃれ」や「可愛いもの」の世界は本当に奥が深い! 他にも好奇心を刺激する絵本がたくさんあるので、親子で探してみてくださいね。
次回は「電車」が好きな子に向けてセレクトした絵本をご紹介します。
撮影/横田紋子(小学館)
構成/苗代みほ