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85歳現役イラストレーター・田村セツコ先生の「ポジティブな生き方」が素敵!「好き」を続ければハッピーに

こんにちは! 漫画家兼イラストレーターの新里碧(にっさとみどり)です。みなさんは、“女性イラストレーターの元祖”とも言われる、田村セツコ先生をご存じですか?「おちゃめなふたごシリーズ」の挿絵やサンリオのいちご新聞でイラストを見たことがあるという方も多いかもしれませんね。

セツコ先生は、85歳の現役イラストレーターで、70年代にはイラスト入りグッズが爆発的人気となり“セツコグッズブーム”も巻き起こしました。かわいくてオシャレな女の子のイラストが、世代を問わず大人気のイラストレーターなのです。

筆者は幼い頃、母が大事にしていたセツコグッズを見せてくれた時「こんなにかわいい絵を描く人がいるんだ」と、ときめきと驚きを感じたことを鮮明に覚えています。大人になってからは、セツコ先生のハッピーでポジティブな言葉が綴られた本のファンになりました。

初めてお会いしたセツコ先生は、先生の描く女の子そのもののかわいさと物腰のやわらかさで、あたりを和やかな空気で包んでしまう素敵な魔法使いのような方でした。

「絵に描けば、何でも手に入る」という喜び

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最近はコラージュ作品も作っているそう。

60年以上現役で絵を書き続けているセツコ先生が、絵を描きはじめたきっかけは何だったのでしょうか。

「物のない時代だったから、紙と鉛筆だけで“ああだったらいいな、こうだったらいいな”という夢を叶えてくれる落書きが大好きだったの。ドレスや靴も、絵に描いたら何でも手に入るから」(以下「」内、セツコ先生)

セツコ先生が子ども時代を過ごしたのは昭和20年代。戦後の混乱が落ち着いていくなかで、まだまだ暮らしには足りないものが多かった時代。

セツコ先生はそんな子どもの頃、どんな絵を描いていたのでしょうか?

「やっぱり人物ね。女の子とかお姫様とか、あとは家族のスケッチも。当時は絵を描く仕事があると思わなかったけど、その“好き”の延長線上でイラストレーターになれたのはすごくラッキーだなと思います

“好き”を続けて、伸ばしていくことが大事なんですね!

筆者も子どもに絵を教えていると、「人物が上手く描けない」など苦手意識を持っている子も多い印象です。やはり、上手い下手よりも本人が好きで楽しく描けるかが重要なんだと思いました。

上手く描く必要はない、「アート魂」があればいい

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「鉛筆も好きだけど、消しゴムも好き。消しゴムがないと焦っちゃうの」と語るセツコ先生。

筆者はよく「子どもの絵の才能を伸ばしたいのですが、どうしたらいいですか?」と質問され、悩んでしまいます。そこで、今回セツコ先生にも同じ質問をしてみました。

あまり欲張らずに、その子がやりたいことをさせてあげるのが良いんじゃないかな。もし、“絵が嫌い”って言ったら、“ああ、そうなんだ”って受けとめるくらいで(笑)」

親が頑張りすぎず、子どもの気持ちやペースに合わせて、ありのままを尊重するのが良いんですね!

絵を教えているときに、「自分は絵が上手く描けない」と言われてしまうことがよくあります。そんなお子さんに、セツコ先生ならどんな言葉をかけるのでしょうか?

「“わー、いい感じ”、“おもしろい”、“もっといっぱい描いて”、“またみせて”とかね。上手く描く必要はないんです。絵に上手い下手はないんですから、好きなように、のびのび描けば良いんです。『“アート魂”というものがある』っていう言葉を人から聞いて、“アート魂”を持っていれば、何でもアートになるっていうの。私はその言葉がすごく気に入っているんです。人に褒められることなんて考えないで。自分をびっくりさせてね」

上手い下手という価値観で測らずに、その子の個性を認めることが大切なんですね。

筆者も子どもの描いた絵を褒める時に「この絵はあなたにしか描けない特別な絵なんだよ」と褒めるようにしています。

お母さんは頑張り過ぎないで

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セツコ先生の口ぐせは「OK、OK〜!」。

子どもと絵についてのお話の流れで、育児に悩むお母さん方がポジティブになれるようなアドバイスも伺ってみました。

セツコ先生ご自身は独身ですが、毎朝新聞を読むことを日課にしていたり、世の中のニュースや街ゆく人々をよく観察されているからこその言葉にはハッとさせられました。

「今の時代は情報が多すぎて、お母さんたちもシンプルに考えられなくなっているのかもしれないわね。それに、“子どものため”と思って、お母さんがいろいろ頑張り過ぎてしまうと、逆に子どもは窮屈に感じてしまったりするものよね

“ニュースやSNSと接する時間を減らして、子どもの気持ちに耳を傾ける”、ほんの少しの変化が親子の関係をより良くしてくれるかもしれません。

「あまり、頑張りすぎないで。夜ちゃんと眠れて、朝元気で起きてニッコリ“おはよう”って言えればオッケーじゃないかしら(笑)。最低限、“元気なら良いわ”くらいの気持ちで良いと思うの

あとは、お母さん自身が地に足をしっかりつけて、自分のことをきちんとやって、堂々としてなきゃね。“おおらか”なお母さんって、すてき!!」

子どものことを考えるのももちろん大事ですが、自分をないがしろにせず、親自身もきちんと自分の心の声に向き合って、好きなことをしたりする。そんな姿を見せることも大事ですよね。

「自分自身がエンジョイしていないと、ついピリピリしてしまうかも? 心配しすぎるがあまり、常識的な、まるで大人のような子どもにはしてほしくないです。気に入らないときも“え~、子どもってそうなんだ。ふふ”と珍しがったり、おもしろがったりするような……。子どもはとにかく、機嫌のいいお母さんがだ~い好きなので、よろしくネ!!!

自分の落ち着くアイテムを身につけて過ごす

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セツコ先生のファッションは、先生の絵の中の女の子のようにかわいい要素がたくさん!

その中でもチャーミングなぬいぐるみたちのことを伺ってみました。

「身につけているぬいぐるみたちは、いないと落ち着かないのよね(笑)。一緒にいると安心する、お守りのようなものなの。私は原宿に住んでいるので、もーどんなファッションでもOK、OKなの。私みたいに何年も同じエプロンに古いスカートで歩いていても、誰も見ないし自分でも気にしないの。実は……ダンディな男物のネクタイとか、たっぷりサイズの上着とか今考えてるの。楽しみ。おじさんみたいなおばあさん。ふふ」

みなさんは「誰かに何か言われるのでは?」と不安になって、本当に自分がしたいファッションを控えた経験はありませんか?

自分が安心できる “好きなもの”に囲まれて過ごす。そんな当たり前のことを筆者も大事にしていきたいと思いました。

「自分のまわりはゴミ屋敷(?)でも、本人が気に入っていればそういうものたちがキラキラッと不思議なパワーで助けてくれる時もあるから楽しいんですヨ」

「終活」は考えていない

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「も〜、この年齢になったら、終活とか健康法とかばかり聞かれるの」と笑うセツコ先生。

85歳という年齢を感じさせない、はつらつとしたセツコ先生ですが、年を重ねることについて考えるときはあるのでしょうか。

終活は考えたことないの。今のところ。でも、考えなきゃね。どーなんでしょう? 毎日、“明日考えよう”とひと眠りしてしまいます。

もし寝たきりになったら、ベッドの上を好きなものがいっぱいのワンダーランドにしようかなって。バスケットに大好きなお茶とかワインとか切り抜きとか入れたりして」

チャーミングな回答に思わずほほが緩みました。

セツコ先生は著書の中で『いつか使うときのために、ステッキを集めている』と書いていました。今のセツコ先生はステッキを手にしてはいませんし、背筋もぴしっとシャキシャキ歩いています。それらのステッキは、どうしているのでしょうか?

「そうなんです! 初めてヨーロッパへ行った当時、お年寄りじゃなくても凛とした姿でステッキを持って歩いているおしゃれな女性がいて、素敵だなって思って。それ以来素敵なものがあると買って、いくつか持っています。でも、そろそろ持とうかしら。それに、持っていたら電車で席も譲ってもらえるかもしれないしね(笑)」

おしゃれのアイテムとして、ステッキを収集するという発想がとても素敵です!

セツコ先生のように、年を重ねることをポジティブに楽しみたいですね。

過去のことには興味がない

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先日放送されたNHK『グレーテルのかまど』の「田村セツコのドーナツ」編で登場した、セツコ先生の昔の写真も素敵でした。昔のセツコ先生の姿を掲載したいと、テレビや雑誌などから問い合わせがあるそうですが、家にはきっとたくさんの思い出の写真が……?

「テレビや雑誌のお仕事で『昔の写真をください』って言われることがあるんだけど、見ていると疲れちゃうから、普段は見ないの。おばあさんは昔を大切にすると思われているけれど、そんなことないのよ。“昔はよかった”とか“モテモテだった”とか、懐かしんでいるヒマがもったいないわネ(笑)

今も現役イラストレーターとして忙しくされているからこそ、昔を振り返らず、つねに“今”に目を向けて過ごすセツコ先生らしい言葉でした。

今回のインタビューでお話を伺えば伺うほど、“年齢はただの数字”という言葉が実感を持って響いてきました。

「もう○○歳だから」「母親なんだから」というように、年齢や見えない世の中の価値観にとらわれて、動きにくくしてしまっているのは、誰かのせいではなく自分自身なのかもと思いました。

「“Enjoy yourself self made stand alone”って言葉が好き。壁に貼っています

自分の“好き”を認めて、大事にしていきたいですね。

ハッピー気分あふれるトートバッグつきイラスト集

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「バッグの色はワインの色なの(笑)」と語るセツコ先生。

85歳の現在も現役バリバリでイラストレーターとして活躍中のセツコ先生。そんなセツコ先生の最新刊が発売になりました。

読めば、セツコ先生のように「OK、OK〜!」と、前向きな気持ちになれそう♪

公式サイトからぜひチェックしてみてくださいね!

どんなことでも現実をしっかり受けとめてから、前を向いて「それが人生よ」とばかりに明るい笑顔で話す姿は、まるでフランス映画やシャンソンの中に出てくる人のようで、その言葉ひとつひとつに心打たれました。

インタビューを終えてから、心がポカポカとして、前向きな魔法にかかったみたいです。

セツコ先生のハッピーでポジティブな気持ちが、みなさんに伝わると嬉しいです。

 

撮影/黒石あみ(小学館)


トートバッグつきイラスト集『田村セツコ 85歳のHappy Surprise!』

価格:2860円(税込み) 刊行:小学館

https://www.shogakukan.co.jp/books/09942031

 

田村セツコ

イラストレーター。1938年東京生まれ。60年代に『りぼん』『なかよし』『マーガレット』などの表紙を担当。『おちゃめなふたご』シリーズの表紙イラストほか、多数の童話作品のイラストを手掛ける。最新著書はトートバッグがついた『田村セツコ 85歳のHappy Surprise!』(小学館)

新里 碧
新里 碧
取材漫画家/イラストレーター/アーティスト
芸大を卒業後、広告業界を経て独立。2018年、自身の体験を元に描いた『アプリ婚 お見合いアプリで出会って1年で婚約→結婚しました』(小学館)発売。旅と工作が大好きな新米キャンパーです。
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