「電車」が好きな子に絵本を選ぶなら
nullこんにちは、絵本ナビの磯崎です。今回のテーマである「電車」は、子どもから大人まで、多くの人を魅了してやまない存在ですよね。
すでに成人したわが家の息子も、子どものころ、電車が大好きでした。
「プラレール」に親子でハマって、難しいレールの組み方ができるようになったのを見て「天才じゃないかしら!?」なんて思ってみたり、一緒に気になる電車に乗りに行ったり……。一口に「電車」と言っても、人によってさまざまな楽しみかたができるのが、乗りもののいいところ。
今ではもう、息子と話していても電車の話題は出ませんが、あの頃に培った知識はまだ私のなかにバッチリあります(笑)。同時にもちろん、その頃の想い出も。ぜひ、今だけの親子の時間を存分に楽しんでくださいね。
【分類の見かた】
●入門編:もともと「電車」が好きな子はもちろん、はじめの1冊としても楽しめる絵本(目安/1歳~)
●発見編:「電車」が好き!という子が、どんどん読み進めるのにぴったりな絵本(目安/3歳~)
●探求編:ちょっとディープで、「電車」以外の分野にも興味が広がっていくような絵本(目安/5歳~)
【入門編】~新しい「好き」の入り口に~
null●一人旅の心細さも温かさも、全部がここに
『でんしゃにのって』
小さい子が一人で電車に乗る時の心細さ、ちょっとした乗客同士のやりとり、そして目的地で待っていてくれる人……。そんな一連の“大冒険”をこんなに丁寧に描いている本は、なかなか無いと思います。
最初は「わにだ駅」、次は「くまだ駅」……と続いて、到着するのは「ここだ駅」! そんな言葉の1つひとつが心地いいんですよね。
この本はわが家でも、本当に何度も何度も読みました。子どもをひざに乗せて、「ガタゴトー ガタゴトー」と揺らしながら読むと、臨場感がよりUPしますよ。
●自分の「好き!」も、相手の「好き!」も大事に
『くるまね? でんしゃさ!』
今日は仲良しの2人でおでかけ。でも……1人は電車で、1人は車で! 横長の絵本をさらに上下に分けた画面で、電車と車、それぞれの道のりが描かれます。
車内の様子や街並みなどの細部まで可愛く、眺めるだけで“電車の旅”と“車の旅”、それぞれの楽しさが伝わってくるよう。
そして2人が到着したのは、おもちゃ屋さん。でも、乗ってきた乗りものじゃなくて、相手の乗りもののおもちゃが気になって……? 自分の好きなものも、相手の好きなものも、どっちも大事にしたいね。好きなものが違ったって仲良くなれるよね。という気持ちになる、優しい絵本です。
【発見編】~もっと「好き」を楽しもう!~
null●絵本と実体験、セットで楽しむのも◎!
『モノレールのたび』
突然ですが、モノレールには車両の下にレールがある「跨座式(こざしき)」と、車両の上にレールがある「懸垂式(けんすいしき)」の2つがあるってご存じですか?
この絵本で描かれているのは、懸垂式の湘南モノレール(神奈川県・「大船駅」~「湘南江の島駅」間)。レールから車両が吊り下げられた構造なので、道との間に遮るものがなく、まるで空を飛んでいるみたい! 独特な風景が楽しめるんです。
そんなモノレールの旅を、細部までリアルに描いたのがこの絵本。読むだけでももちろん楽しいのですが、近くに住んでいる方なら“読んでから実際に乗りに行く”と、さらに楽しさがアップしますよ。
この本に限らず、家から行ける範囲を走る電車の絵本を探して、現実の体験とセットで楽しむのは、“電車絵本ならでは”の楽しみかた。旅行の想い出として、絵本を探すのもいいですね。
●穴が開くほど楽しめる!最新のイチオシ電車絵本
『でんしゃ すきなのどーれ』
こちらは12月20日(水)に発売される新刊。画面いっぱいに並んだ電車たちと、繰り返し出てくる「すきなの どーれ」という言葉。電車好きな子に読むと、好きな電車を指さしながら、びっくりするほど盛り上がります。
図鑑のようでもあり、読み聞かせもできるこの絵本。電車の“顔”や“形”、“色”に“模様”、そして“種類”など、さまざまなポイントに注目しながら展開していきます。さらには、昔の電車と今の電車の比較まで!
絵だからこそ、背景などの余計な情報が無く、じっくり観察・比較できるのも大きな魅力! シンプルで見やすいのに、かつとっても正確なタッチが、電車好きの心をくすぐります。
【探求編】~「好き」が導く!未知の世界~
null●「電車愛」が、いつしか「地図への興味」に…
『せんろはつづく にほんいっしゅう』
コロナ禍まっただ中の、2021年9月に刊行されたこちらの絵本。日本中の電車が、地図にあわせて所狭しと描かれていて、自分自身が日本をぐるっと一周したような気分が味わえます。
電車が好きな子が、いつしか地理や歴史にも詳しくなることって多いですよね。この本も、興味が広がるいいきっかけになってくれるはず。「電車を乗り継げば、日本を一周できるんだ!」って気づいたら、きっとみんな感動すると思うんです。
ちなみにこちらは、名作『せんろはつづく』のシリーズ4作目。著者の鈴木まもるさんいわく、1作目で「線路を引き」、2作目で「技術を磨き」、3作目で「電車の多様性を描き」……、そしてこの4作目では「それが現実でどう走っているのか」と、一繋がりの流れになっているそう。シリーズで続けて読むのもおすすめです。
●驚くべき密度!マニア垂涎の、知識の宝庫
『乗り物ひみつルポ(1) 新幹線と車両基地』
『ひみつルポ』というタイトル通り、膨大な取材がないと描けない圧倒的な情報量。読んでいてちょっとでも疑問に思うようなことと、その答えが、ページの隅々までぎっしり書き込まれています。
子ども向けながら決して手を抜かない、あくなき探究心は、まさにルポ絵本の最高峰! 「電車好き」の知識欲が、“ものの仕組み”や“科学”など、どこまでも際限なく広がって行きます。
著者は、模型やミリタリーなど、さまざまなジャンルに造詣の深い漫画家・絵本作家のモリナガ・ヨウさんで、同じシリーズに(2)『消防車とハイパーレスキュー』、(3)『ジェット機と空港・管制塔』もあります。
どの本も、「電車」が好き!という子なら間違いなく喜ぶんじゃないか、という本ばかり。好きなものを入り口に、さらに好きなものが広がって……、その先には、どんな楽しい未来が待っているのでしょう。子どもたちの成長が楽しみですね。
撮影/横田紋子(小学館)
構成/kufura編集部