大豊作の苺。そのままでは酸っぱくてとても食べられないのだけれど……
null苺の旬は、天候にもよるけれど、この辺りではだいたい5月下旬から6月初旬くらいだ。 クリスマスという需要に合わせてビニールハウスの中で栽培される苺ではなく、 土の上でお天道様の下で、野生のようにたくましく育つ苺、の場合の旬だ。
苺はランナーを伸ばして毎年どんどん広がっていく。畑の苺も庭の苺もどちらも野放し状態なので、その味わいは残念ながら甘い!というわけではなく、顔をしかめるくらい酸っぱい。とてもそのままでは食べられない。
今年は天候に恵まれたのか、大豊作。土で汚れているうえに虫もついているし、何より完熟だから少しの衝撃ですぐに傷む。丁寧に洗って、傷んだところを取り除いてヘタを取って。最後に水分をしっかり切る。それだけでかなりの労力を要するけれど、苺の香りに包まれて幸せな気分になれる時間だ。
苺を使って作る定番は、ジャムとシロップ
苺加工の定番といえばジャムとシロップ。
ジャムはしっかり砂糖を加えるのが好み。苺の重さの40~50%の砂糖をまぶして一晩おいて水分を出したら、強めの中火で一気に炊き上げる。レモンは入れても入れなくても、アクも取っても取らなくても。 難しい事は考えずにとりあえず火にかけておけば(10分くらいか)、ちゃんと美味しくできあがる。 パンにヨーグルトにと朝食に大活躍。 自分で作る苺ジャムは、こんなに簡単なのに格別の味わいだ。
シロップの方はもっと簡単。 苺100gに対して砂糖は120gとかなりの量にちょっと驚くけれど、ひるまず思い切って入れよう。水20ccと、レモン汁を好みで少し加えてすぐに火にかけて。 煮立ってから1分くらいですぐに完成する。
かき氷にかけたいけれど、それにはまだ少し早い気がするので盛夏の楽しみにとっておく事にして、今は炭酸で割ってスッキリしたドリンクにしたり、牛乳で割って苺ミルクにしたり。どれだけでも飲めてしまう危険な美味しさなので注意が必要なくらいだ。
苺のピューレ(苺をミキサーにかけたもの)を練りこんだシフォンケーキも焼いた。
焼きあがる頃にはあたり一面、ふんわり苺の香りが漂う。これも毎年かならず1回は作る我が家の定番。シフォンケーキのレシピは検索すればたくさん出てくるけれど、卵黄と卵白が同量、ベーキングパウダーを使わないレシピがお気に入り。 卵白をしっかり泡立てさえすれば、失敗の少ない作りやすいケーキだと思う。
ケーキのデコレーションや、娘(12歳)が大好きなパフェにも大活躍!
そのままお行儀悪くちぎって食べるのも好きだけれど、今年は仲良くさせていただいている飲食店オーナーの奥さまに、記念すべき50歳のお誕生日ケーキを仕立ててみた。
美人のデコレーションなのでシンプルに、でも、上品な雰囲気に。 そのままだと酸っぱい苺は、少し砂糖と絡めて時間を置いてマリネ風にしたものを飾り付けてみた。
娘はやっぱりパフェが好きなようで、学校から帰ってきて用意したこのオヤツにすごい勢いで飛びついてきた。
下から、
苺ジャム → 生クリーム → チョコフレーク →
苺 → 苺アイスクリーム → バニラアイスクリーム → トッピングにさらに苺
という豪華版。
実はこの前に作ったパフェが、あまりにも盛り付けが雑でテンション上がらないと娘からダメ出しされていた。ので、今回はできるだけ丁寧に作ってみた、つもり。味は変わらないけれど、見た目は大事。より美味しく食べる為の見た目の重要性を、娘から学んだ。
苺を料理にも!春キャベツと合わせたコールスロー
最後に、苺のお料理も。
ラジオでふと耳にした苺と春キャベツのコールスローというお料理が気になって、いろいろレシピを検索して自分なりに作ってみたのがこちら。
フォークで潰した苺にマヨネーズとオリーブオイル、塩胡椒で味を調えたドレッシングは、苺の酸味と爽やかな甘みが絶妙で、その美味しさに驚いた。塩もみしたキャベツと適当に切った苺と合えれば出来上がり。 娘もすごい勢いで食べていたから、子どもウケもいいと思う。 白ワインにもすごくあうので、ちょっとした持ち寄り食事会にも良さそう。
来年また作ろう! 来年の苺の季節がまた楽しみになった、そんなお料理だ。
田植えが終わって、野上がりです!
nullさて田んぼの様子はというと……。
5月下旬、長い長い2ヵ月にわたって続いた春作業を終えて、野に上がってきた。そう野上り(のあがり)だ! かつてまだ田植え機がなかった時代、田植えは地域の人々が協力し合いながら行ったそうだ。そして田植えが終わって田んぼから野に上がってくると、野上がりといってご馳走を食べてゆっくり休んだ。
今でも野上がりという言葉はしっかり残っていて、農家同士で労をねぎらい飲み会をする。今年は残念ながら皆でワイワイというわけにはいかなかったので、家族で野上がりを祝った。
野に上がってきたのに、その直後にまた、田んぼに下りていく旦那さん。手で苗を植えていく補植という作業だ。
一般の方が想像される、または、体験してみたい、と思う田植えはこの手植えかもしれないが、私たち専業農家はほとんど手植えをしない。 田植え機で植えきれなかった、あまりにも悲惨な箇所を手植えするのみだ。 全ての田んぼできちんと補植しようとすると、 膨大な時間がかかる上に、やっても収穫量にほとんど差はなく、また食味に影響もない。
日本の原風景のようないい写真だけれども、 実際の米作りの実情はこうだ。
そしてもう1つ、米作りの実情というか裏側というか、田植えと稲刈りだけではない日々の地味な作業が、苗箱洗い。
苗箱は長方形のプラスチックの箱で、この中に土を敷き詰め種をまいて苗を育てる。田植えが終わって空っぽになった泥だらけの苗箱の数、おおよそ2000枚。 を、1枚1枚しっかり洗って消毒して乾かして片付ける。 大事な作業だとはわかっていても、非常に退屈で億劫な気持ちになる。
でもこういう作業1つ1つの積み重ねの上に、秋の収穫を迎えたり、また次の春に田植えができるのだ。
これも米作りの大事な作業。そういう気持ちで黙々と苗箱を洗う日々です!