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熱中症予防は6月から!しっかり「発汗できる体」を作って、猛暑に打ち勝つ

梅雨入りが遅れている今年ですが、梅雨が明けたら、海にキャンプに花火にBBQ、楽しい予定が目白押しの季節がやってきます。一方で、ひどい場合は救急搬送や死の危険性もある「熱中症」リスクが高くなる時期も近づいてきたわけで……。

大丈夫、必要以上に恐れるなかれ! 夏本番をむかえる前の、6月からできる予防策があります。それは「梅雨時の発汗」。教えてくださったのは、熱中症に詳しい広島大学大学院人間社会科学研究科の長谷川 博教授です。

梅雨明けまでに「汗をかくトレーニング」をする

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「そもそも熱中症は、暑い、湿度が高い、無風など、環境条件が厳しい場合に起こりやすくなります。とくに湿度が高いと汗がうまく蒸発せず、体温が過剰に上がって脱水を引き起こし、熱中症になってしまうパターンが多いのです」(以下「」内、すべて長谷川 博教授)

長谷川教授曰く、もっとも熱中症が起こりやすいのは梅雨明け直後の3日間とのこと。

「この時期は、まだ暑さに慣れておらず、汗がうまくかけない方が多い。それなのに急な暑さが襲ってくるので、体には大きな負担がかかります。すると体温が過剰に上がったり、汗をダラダラかきすぎて脱水したりと、熱中症のリスクが高まるのです。

そうならないよう、梅雨の間に汗をかくトレーニングをしましょう」

自分にあった、無理のない運動でOK。汗をかく練習をすることで、体が覚えてくれます。

これは「暑熱順化」といいます。ふだんより気温や湿度が高い環境で、1週間ほどかけて無理のない範囲で汗をかき、体を暑さに慣れさせるのです。

「プロアスリートも暑い国で試合する前などに取り入れていて、一般的な方々でも実践できます。あくまでも無理のない範囲で、汗をかく運動を日々継続するのがおすすめ。運動することで体力がつきますし、そのうえで暑さにも慣れて、真夏への体の準備ができます」

半身浴やサウナで汗をかくのも効果あり。

運動をする時間がとれない、もしくは体力にあまり自信がない場合は?

「いつも日傘をさしている方なら、日傘なしで歩くだけでもOK。半身浴やサウナで汗をかくのもいいですよ。

要は、普段より暑い環境で、ちゃんと汗をかくこと。近頃、汗をかけない方も少なくありません。トレーニングして、汗腺をひらきます。

少しずつ、自分にできる方法で備えましょう。そして、梅雨明け直後の3日間は、無理をしないでくださいね」

熱中症の予防と心得

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こうして汗をかきやすい体を作って、いざ猛暑の夏に挑みます。ここからは、長谷川教授に教えていただいた、暑い時期の熱中症予防をご紹介します。

「体重」の変化と「尿の色」に注意する

体の脱水は、熱中症につながります。予防の一つとして、水分補給は多くの方が意識されていますよね。

よく「喉が渇いたと思ったらすでに脱水している。その前に水分を摂ろう」と聞きますが……。実際のところ、どのタイミングで飲めばいいのでしょうか?

人間の体の90%は水分、朝晩で体重が減っているとしたら明らかに脱水です。

「体が脱水すると、一日の中でも体重がガクンと減る場合があります。

たとえばスポーツや屋外で仕事をするなど、体を動かして汗をかく場合、前後で体重をはかると1kg2kg減っていることがあります。これは痩せたのではなく脱水です。

スポーツ選手などは、そもそも動く前にしっかり水分を摂っています。もちろん、動いた後も汗で失われた水分と塩分を補給します。発汗による極端な体重の変動がないことも大体調管理の一つです」

朝いちばんの尿の色が濃すぎる場合は脱水しているので、水分をとりましょう。

「また、尿の色にも脱水のサインが現れます。いつもより濃いと感じたら、要注意。

インターネットで『尿カラーチャート』と検索してみてください。すると、健康な状態から脱水レベルごとの尿の色が一覧になったチャートが出てきます。薄い黄色が健康な状態ですが、脱水が進むとだんだん黄色が濃くなってきます。さらに脱水がひどくなると、最終的には緑がかった黄色になるんです。

これを目安に、朝いちばんの尿で色をチェックする習慣をつけるとよいでしょう」

毎日の「暑さ指数」をチェック

パソコンやスマホからお住まいの地域ごとにチェックできる熱中症の危険性。出かける前にチェックしましょう。

近年の酷暑もあり、この4月から政府による「熱中症特別警戒アラート」の運用がスタートしました。これは危険な暑さが予想される場合に熱中症への警戒を呼びかけるものです。

いまや天気予報と同じくらい、チェックするのが常識となりつつある、こうした熱中症関連の情報。

長谷川教授が教えてくださったのは、気象庁が発表する「暑さ指数(WBGT)」です。これは、熱中症予防を目的に、1954年にアメリカで提案された指数。気温・湿度・太陽からの輻射熱も加味した数値で、熱中症の危険性を知ることができます。

「まずは環境を把握すること。そして、無風状態なら扇風機を回したり窓を開けるなど、適切な対応をとりましょう」

熱中症に効く食べ物はないけれど……

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ちまたには、熱中症によいといわれる栄養素や食材の情報があふれています。しかし、多くのアスリートを見てきた長谷川教授が大切にしているのは基本中の基本。

「もっとも基本的で忘れてはならないのは、十分な栄養・睡眠・休養をとることです。

暑さや日焼けなどの刺激が入ると体は傷つきます。だから、暑さに慣れることはもちろん、汗で失った水分や塩分を摂る、バランスのとれた食事をしっかり摂る、日焼け止めを塗る、お風呂に入って心身をリラックスするなど、日頃からコンディションを整えましょう。体調を崩さないことも熱中症予防に欠かせません」

今年の夏も猛暑が予想されています。昨年、熱中症になりかけた方、体力に自信のない方、アウトドアでの活動が多い方はもちろん、誰もが熱中症にならないためにも! 今からできる予防策を取り入れて、夏の準備をしませんか。

【教えてくださった方】

長谷川 博教授

広島大学大学院人間社会科学研究科教授。1971年東京都生まれ。横浜国立大学大学院教育学研究科修了(体育学修士)。東京都立大学大学院理学研究科修了(理学博士)。運動生理学を専門とし、運動および環境ストレス時における生体反応や身体の適応反応について、生理学的手法を用いて分析。研究のキーワードは、熱中症予防、暑さ対策、身体冷却、体温調節、スポーツパフォーマンス。日本スポーツ協会「スポーツ医科学専門委員会スポーツ活動中の熱中症事故予防に関する研究プロジェクト」班員、国立スポーツ科学センター「東京オリンピック特別プロジェクト」研究員などを務める。

ニイミユカ
ニイミユカ

兵庫県出身、浅草在住。一児の母。主に食や体のことなど、生活にまつわる地に足のついた企画を、雑誌や書籍、WEBメディアなどで編集・執筆する

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