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靴選びで「かかとに指1本」「横幅広めでゆったり」はNG!? 意外な落とし穴5つ【靴のマイスターに聞く!#2】

靴や足の悩みは、放置していると膝や腰の痛みに繋がることも! でも「本当に自分に合った靴」を選ぶのって、実は意外と難しいことなんです。一体、どんなところに注意して選んだらいいのでしょうか?

医療靴の本場・ドイツで「整形外科靴マイスター」の資格を取得し、義肢装具士・靴職人として活躍する中井要介さんに、靴の履き方・選び方を教えていただくシリーズ【靴のマイスターに聞く!】。第2回は「自分に合った靴の選び方」がテーマ。「靴選びのよくある勘違い」を5つ教えていただきました!

勘違い1:「サイズ表記が同じものを買えば大丈夫」

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「自分の足にあった靴を探すとき、まず何をチェックしますか? おそらく、多くの人がまず見るのが“サイズ表記”ではないでしょうか。もちろんサイズ表記も参考にはなるのですが、自分が前に買ったのと同じサイズだからといって、試し履きをせずに購入するのはNGです。

と言うのも、実はサイズ表記って、メーカーによってそれぞれ基準が違うんです。測り方や、どれくらいのフィット感を想定して設計しているかがそもそも異なるので、表記は同じでも、比べてみるとまったく履き心地が違います。また、同じメーカーの靴であっても、形状や素材によって自分に合うサイズは変わってきます。

海外製の靴の表記にはUS/UK/EUなどがありますが、そちらも同様に、基準も単位もまちまちです。早見表もありますが、あくまで目安であって、そのまま日本の靴のサイズに当てはめることはできません」(以下「」内、中井さん)

サイズ早見表の例(kufura編集部が作成)

「今は何かとネットでの購入も多い時代。ですが、こと靴については実物を見て、必ず試し履きをしてから購入しましょう。合わない靴を無理して履くと、“巻き爪”や“外反母趾”、“かがみ指”(ハンマートゥ・屈趾症)の原因にもなってしまいます」

勘違い2:「履いたとき、かかとが指1本あまる靴が最適」

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「靴の試し履きをするとき、“つま先を合わせて、かかとに指が1本入る”というチェック方法を実践している人もいるかもしれません。しかし、この方法もおすすめはできません。

靴は、かかとが合った状態で適切に履けるように設計されています。そのため、つま先を合わせようとすると、実際に履いているときのサイズ感を正しくチェックすることができないのです。

その代わりに、自分に合うサイズを確認する方法としておすすめしたいのが、靴のインソール(中敷き)を出して自分の足を重ねてみる方法です」

インソールのかかと部分に足を合わせ、指をのばした状態で、つま先よりもインソールが1~1.5cm長いのが適正サイズ。

「かかとを合わせて、つま先部分が1~1.5cm余っているのが適正サイズ。これより短いと、歩いている時につま先が靴に当たり、足の指に負荷がかかってしまいます」

インソールが取れない靴であれば、履いた状態のまま、つま先部分が1~1.5cmほど余っていることを確認します。

「ただし、インソールが取れないつくりの靴もありますので、その場合は履いた状態でかかとを合わせて、つま先部分を靴の上から指で触りながら、1~1.5cm余っていることを確認してください」

勘違い3:「足に合う靴=幅広でゆったりした靴」

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「その他に、よくある勘違いが足の横幅(足幅・足囲)です。『自分の足は、横幅が広めで……』と思っている方、きっと多いのではないでしょうか。

靴のJIS規格では、横幅がA~Fのアルファベットで表され、量販店等では3E、4E、5Eといった横幅が広めの靴の人気が高く、数多く並んでいます。

ですが、実際に日本人の足に多いのは女性でD~E、男性でE~2E。しかも統計を見ると近年、少しずつ足が細くなっています。もちろん実際に横幅が広い足の方もいるものの、あくまで少数派なんです。

ではなぜ3E~5Eが多く販売されているかというと、それは“売れるから”。横幅が広い分、履いた時にゆとりがあって心地よく感じるため、“足に合っている”と錯覚しやすいのですが、それは間違いです。

左右が当たらないということはつまり“足を支えられていない”ということで、“開張足”(※)や“外反母趾”などの症状に繋がります。足を甘やかす靴ではなく、足にフィットして適切に保持してくれるような靴を選びましょう。

かかとを合わせて、しっかりひもを締めた状態でトントンと動かしたときに、足が靴の中で動かないくらいの“多少の締め付け”があるのが、適切なサイズです」

※開張足:本来アーチ状になっている足が、左右方向に広がって、平たくなってしまっている状態。

素材の境目や縫い目が、痛い部分に当たらないようなつくりの靴を選ぶのが肝心。

「横幅がフィットする靴だと、外反母趾などで指が当たって痛い……という場合にも、横幅が広い靴を履くのはさらなる悪化に繋がってしまうので、できるだけ避けましょう。

その代わりに、チェックしてほしいのが靴のデザイン。パターンの境目や縫い目、素材が2重になったような箇所は固く、かつ厚くなっているので、そこに痛む箇所が当たらないようなデザインの靴を選びましょう。材質も、革などの柔らかい素材のものを選んだ方が、痛みが軽減されます。

パンプスであれば、足の甲が広くなるようなカットラインのものは特に足に負荷がかかりやすいので、なるべく深く足を包み込むようなつくりのものを選ぶようにしてください」

勘違い4:「固定できれば、ひももマジックテープも同じ」

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「足をしっかり固定するためには、ひも靴が最適。パンプスやスリッポンなどの留め具がない靴は、足の健康を考えると推奨はできません。

出勤時には留め具がない靴を履く機会が多い、という場合も、その分、せめて休日はひもの靴を履くなどして足を休ませてあげるといいでしょう」

一番のおすすめは、やっぱりひも靴。

「ひもでなくマジックテープ式でも、固定できれば同じでは?と思われるかもしれませんが、ひも靴は足の先端部分まで締め具合を調整できるため、足全体をしっかり支えることができるんです。

靴には、かかとを包むように硬い芯材が入っているので、足をかかとに合わせてから靴ひもをしっかり締めることで、歩くときに足が前後左右に動いてしまうのを防げます。

ただし、かかとを一度でも踏んでしまうと、足をホールドする機能が失われてしまうので、絶対に踏まないようにしてくださいね」

靴のかかとを潰して履くのは絶対厳禁!

「特に、足のむくみが気になっている方の場合、朝と夜でも足の状態が変わるため、コンディションに合わせて調整できるひも靴がおすすめです。

とはいえ、逐一ひもを結び直さずに済むマジックテープ式や“ひもファスナー”(=ひも・ファスナーが両方付いている靴)も、大変便利ですよね。

足の症状が気になっている人には、できればひも靴を履いていただきたいですが、そうでなければマジックテープ式や“ひもファスナー”の靴を選んでいただいても問題はありません」

勘違い5:「大人になったら、もう足の形は変わらない」

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「最後に、知っておいていただきたいのが、成長過程の子どもだけでなく、大人でも足の形は少しずつ変化しているということ。特に50代、60代、70代……と少しずつ筋肉が衰えてくると、足の不調が出やすく、それが膝・骨盤・腰などのトラブルにも繋がっていきます。

だからこそ、足に合った靴を履くのが大切。今どう靴を履くかで、未来の健康寿命が変わってきます」

妊娠中は、足にも大きな負担がかかってしまいます。

「女性の場合は筋肉量が少ない分、より注意が必要です。また、あまり知られていないのですが、妊娠中は出産に備えて体中の関節がやわらかくなり、体重も一時的に重くなるため、実は“扁平足”になったり“外反母趾”が進んだりするケースが多いんです。

やわらかくなった関節は、出産後に以前の状態に戻ろうとしますが、一度扁平足になり、じん帯がのびきってしまうと元には戻りません。

そのため特に妊娠中は、適切な靴を履くのがとても重要になってきます。多少費用はかかってしまうのですが、その時期だけでもオーダーメイドのインソールを使うなど、できるだけの対策をしておきたいところです。

私にも1才の子どもがいますが、妊娠は女性にとって、やはり精神的にも身体的にも大きな負担を伴います。夫はもちろん、社会全体で、もっとケアして支えていくのが当たり前になればと思います」

 

オーダーインソールやオーダーメイドの靴は、足の症状があって医師の処方がおりれば、一部保険適用で購入できる場合もあるそう。また、手づくりのインソールに比べれば質は劣るものの、各種メーカーが手軽な金額でオーダーインソールをつくれるサービスを提供していたりもするので、チェックしてみてはいかがでしょうか。

次回はシリーズ第3回。テーマは「子ども靴の選び方」!……ですが、今回紹介しきれなかった、大人でも知っておきたい情報が満載です。全5回を通して、ぜひ一緒に“靴のいろは”を身につけましょう!

 

【参照】
「日本皮革産業連合会 2021年 大人の足サイズ計測から」(最終参照日:2024/02/26)
https://www.jlia.or.jp/enjoy/ashi/cat2022-1.html

 

撮影/五十嵐 美弥(小学館)


【中井さんおすすめの本】

『“歩く力”を落とさない! 新しい「足」のトリセツ』著:下北沢病院医師団(日経BP・税込み1,595円)

「長く歩き続けるために役立つストレッチや知識をわかりやすく解説する本です。筆者の『下北沢病院』とは、東京・世田谷区にある“日本で唯一”の足の総合病院で、信頼感も抜群。

私たち『マイスター靴工房 KAJIYA』とも提携している病院なのですが、足のトラブルや怪我から、足を失うこともある糖尿病による神経障害まで、専門の知見を持って幅広く対応しています」

【教えてくれた人】

中井要介(なかいようすけ)さん

医療靴先進国であるドイツで9年間修業し、ドイツ国の職人最高職位であるドイツ整形外科靴マイスターを取得。ドイツ整形外科靴マイスターと、日本国内の義肢装具士資格の両方を取得した初の医療技術者であり、2016年からは「マイスター靴工房 KAJIYA」の代表取締役を務める。

現在も、経営と並行して義肢装具士・靴職人としての靴づくりを勢力的におこなっており、「足に問題を抱える方の可能性をひろげるような靴を提供し、一人でも多くの人を笑顔にする」という理念のもと、日々奮闘している。

「マイスター靴工房 KAJIYA」
(東京都・東久留米市/兵庫県・神戸市灘区)

編集部・関口
編集部・関口

音楽&絵本&甘いものが大好きな、一児の父。文具や猫もとても好き。子育てをするなかで、新しいコトやモノに出会えるのが最近の楽しみ。少女まんがや幼児雑誌の編集を経て、2022年秋から『kufura』に。3歳の息子は、シルバニアファミリーとプラレールを溺愛中。

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