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靴底でわかる足のクセ!それ「外反母趾」のサインかも…5分でプチ診断【靴のマイスターに聞く!#1】

靴は私たちの姿勢や歩き方を支えてくれている、大事な存在。靴や足の悩みを放置していると、それがどんどん悪化していってしまったり、膝や腰の痛みに繋がることも多いんだそう! 普段履いている靴の「クセを見るだけ」の“プチ診断”で、自分の足の状態をチェックしてみませんか?

医療靴の本場・ドイツで「整形外科靴マイスター」の資格を取得し、義肢装具士・靴職人として活躍する中井要介さんに、靴の履き方・選び方を教えていただく全5回のシリーズ【靴のマイスターに聞く!】。第1回のテーマは、「自分の靴のチェック方法」です。

「自分の足を知る」ことで、負担の少ない靴選びを!

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「今、足の状態にあった靴を履くことで、60代以降の歩行が大きく変わってくるんです」と中井要介さん。

中井さんが代表を務める「マイスター靴工房 KAJIYA」では、さまざまな理由で足や歩き方に悩みを抱えた人に向けた「整形外科靴」を、1つ1つ、手作業でつくっています。

「靴は、おしゃれなファッションアイテムというだけでなく、体全体を支える重要な役割を持っています。そのため、腰や膝の痛みの原因が、実は靴にあった……ということもよくあります。

若い時からできるだけ自分にあった靴を履くことで、体への負担が減り、60代以降の健康な体をつくっていくんです」(以下「」内、中井さん)

「正しい靴の選び方」は次回の記事でご紹介しますが、自分にあった靴を選ぶためにも、まずは自分の足を知ることが大切!

中井さんによると、普段から履いている靴をじっくり観察することで、自分の足の状態を大まかに知ることができるんだそう。

いざ!5分でできる「プチ診断」にチャレンジ

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「まず、チェックする靴を選びます。できるだけ、

・普段よく履いている&長い期間履いている靴(例:通勤に使っているパンプス、ウォーキングで使っているスニーカーなど)

・靴底の地面に接する面積が広い靴

を選ぶと、傾向が観察しやすくなります」

(1)平らなところに置き、後ろから見る

Aさん(女性)のレースアップシューズ。
同じくAさんの、ヒール太めのパンプス。

「まず、靴を平らな場所に置き、真後ろから見てみましょう。斜めになっているようなら、おそらく靴底が削れています。

写真の例だと、どちらも左足の靴がちょっと内側に傾いていますね。内側に傾くということは、内側の靴底が削れているということ。この方の場合、特に左足に“外反傾向”(※)がある可能性が高いです」

※外反傾向:足の裏が真下ではなく、体の軸に対して外側(左足なら左側)に向いている状態のこと。“外反母趾”は“外反傾向”とは別の症状で、足の親指が小指の方向に「くの字」に曲がった状態を指す。

「反対に、靴を置いた時に外側に傾いている場合(=外側の靴底が削れている場合)、“内反傾向”があると考えられます。

今は軽度で痛みなどがなくても、削れて斜めになった靴をそのまま履いていることで、より重症化してしまう恐れもあります。“自分の足の傾向”を知っておくことは、とても大事なんです」

(2)靴底を見る

かかとからつま先に重心が動くので、前後に関しては、自然に削れるものなんだそう。
かかと・つま先以外が削れていたら要注意!こんな原因が考えられます。

「おおまかな傾きが確認できたら、次に靴底の“削れ”をチェックしていきます。靴底に溝が入った靴であれば、“溝の深さがどれくらい残っているか”を見ることで、どの部分が削れているかを確認することができます。

一般的に、足を一步踏み出したときにはかかとに重心がかかり、足が地面から離れる際はつま先に重心がかかります。そのため、かかとやつま先は、歩くなかで自然と靴底が削れていきます。

自然な歩き方をしている時は、つま先はまっすぐ進行方向を向くのではなく、少しだけ左右に開いた形になるので

・かかと部分の少し外側

・つま先部分の少し内側

が削れるのは本来の削れ方であり、心配する必要はありません。(ただし、靴底の溝が見えなくなるほどすり減ってしまっている場合には、新しい靴に替えるか修理に出すようにしましょう。)

それ以外の箇所、特に左右部分が削れている場合は、

・内側の削れ⇒“外反傾向”

・外側の削れ⇒“内反傾向”

がある可能性が高いです。

ただし、外側の靴底が削れていても、いわゆる“がに股”のような歩き方になっている場合は、“内反”ではなく“外反”かもしれません。ひとくくりには言えないことも多いので、心配な点がある場合には、専門の病院などの受診をおすすめします」

Aさんのレースアップシューズ。“外反傾向”が見られます。
Aさんの旦那さんのスニーカー。削れ方に違いはありますが、こちらも同じく“外反傾向”なよう。

「例えば上の画像の2例は、それぞれ別の方の靴ですが、どちらも内側が削れており、“外反傾向”が見られます。

また、靴底のなかでも、特に“中指のつけ根”あたりの溝が薄くなっています。一概には言えませんが、これは“外反母趾”(外反扁平足)の可能性が考えられます」

足は本来、つま先側から見た時に、中指部分が少しふくらんだアーチのような形をしているんだそう。

「足は本来、つま先側から見た際に左右の中央部分が少しふくらんだアーチのような形をしているのですが、外反母趾の場合はそのアーチが平らになってしまい(=開張足)、中指のつけ根あたりに負荷がかかってしまうんです。

そのほか、インソール(中敷き)の一部が削れていたり、足にタコができたりするのも、なんらかの理由でそこに負荷がかかってしまっているというサインなので注意が必要です。

歩き方の癖は、自分で意識して変えようと思ってもなかなか難しいもの。だからこそ、足をしっかり支えてくれる、自分にあった靴を選ぶことはとても大切です。

加えて、アキレス腱を伸ばすストレッチなどで足をなるべく柔らかく保つことも、足のトラブルの改善に繋がります」

ヒールタイプの場合、靴底はどうチェックする?

Aさんのヒール太めのパンプス。先ほど見た、左が少し内側に傾いている靴です。

チェックする靴は「靴底の地面に接する面積が広いもの」がおすすめ、とのことでしたが、ヒールタイプの靴の場合、見るべきところはありますか?

「ハイヒールやピンヒールの場合、特に体重がかかるのはやはりヒールの先端部分になります。

長く履いていると段々と、ゴムなどが削れてきますよね。特に、置いた時に明らかに靴が斜めになっているような場合は、くじきやすくなってしまいますので、早めに修理に出して直すようにしてください」

レースアップシューズと同様、このヒールも特に内側が削れている様子。くじきやすい状態になっていました。

「放置すると、悪化や怪我を招きかねないのが足のトラブル。健康診断や歯科検診と同じように、足や靴についてもぜひ1年に1~2回、欠かさず確認する習慣をつけるようにしてください」

(3)上から見る

Aさんのレースアップシューズ。しわが入っているので、靴の横幅が広すぎるよう?

「最後に、上から見たときのチェックポイントです。

指のつけ根あたりにしわが寄っている場合、靴の左右幅や縦幅に余裕がありすぎて、歩くたびに靴が不自然に曲がっていることが原因として考えられます。

“自分の足は幅広だ”と認識していらっしゃる方も多いのですが、実際はそこまで幅広なわけではなく、むしろ広すぎて足に合っていない……というケースもよくあるのです。

特に外反母趾の傾向がある方の場合、足が当たるのを避けて横幅が広い靴を選びがちなのですが、左右が広い靴を履いていると、足のアーチ状の形を十分に保持することができず、逆に外反母趾が悪化してしまいます。

肝心なのは、当たらない靴を履くことではなく、“当たる部分に縫い目などの固い素材がなく、柔らかい面がくるような設計になっている靴”を選ぶこと。

縦のサイズだけでなく横幅も、できるだけ、自分の足にぴったり合ったものを履くようにしましょう」

靴の選び方については次回の記事で詳しくご紹介するので、そちらもぜひあわせてお読みください。

足や靴に不安を感じた時は、どうしたらいい?

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では、もともと靴や足についての悩みがあったり、ご紹介した“プチ診断”を実践するなかでなんらかの不安を感じたりした時は、どうしたらいいのでしょうか?

今回『kufura』が20~50代の男女436人にアンケート調査を実施したところ、そのうちの310人、実に7割以上が「靴や足に関する悩みがある」と回答しました。

なかでも多かったのが「足が疲れる/痛くなる」で、約4人に1人が選択。続いて多かったのは、「タコ/マメ/ウオノメができる」、「靴ずれしやすい」という回答でした。また、複数の悩みを選択している人も目立ちました。

「現在、日本で暮らす多くの人がなんらかの“靴や足の悩み”を抱えていますが、それに対して“悩みを解決するための知識”や“医療的な面からサポートする靴選び”については、まだ十分に認知されていないのが現状です。

アンケートであげられている症状には、それぞれの関連が見られる場合も多く、1つの原因からいくつかの症状が同時に起こっている可能性もあります。靴や足の不調のサインを見逃さず、

・症状の原因を正しく知るため、医療機関を受診する

・できるだけ足に合った、かつ負担が少ない靴を選ぶ

などの対処をするようにしてください。

特に痛みがある場合や、既製品の靴では合わないと感じた場合などは、病院の受診やオーダーインソール・オーダーメイド靴などが必要になります。(オーダーメイド靴は高額になりますが、症状によっては保険で費用の一部を賄える場合もあります。)

症状が軽いうちに対処することが、悪化を防ぐことに繋がるので、ぜひ一度専門家に相談してみてください」

ただし、日本では足に特化した専門医制度がなく、単科ですべての症状をみるのが難しいのだそう。病院選びには「日本フットケア・足病医学会」の専門病院リストなどもご活用ください。

 

全5回のシリーズ【靴のマイスターに聞く!】、第1回は「自分の靴のチェック方法」についてお届けしました。手軽にできる“プチ診断”。ぜひあなたも、普段履いている靴の傾きや靴底の削れを観察して、自分の足の癖をチェックしてみてくださいね。

次回は「自分に合った靴の選び方」について教えていただきます。

 

撮影/五十嵐 美弥(小学館)


【教えてくれた人】

中井要介(なかいようすけ)さん

医療靴先進国であるドイツで9年間修業し、ドイツ国の職人最高職位であるドイツ整形外科靴マイスターを取得。ドイツ整形外科靴マイスターと、日本国内の義肢装具士資格の両方を取得した初の医療技術者であり、2016年からは「マイスター靴工房 KAJIYA」の代表取締役を務める。

現在も、経営と並行して義肢装具士・靴職人としての靴づくりを勢力的におこなっており、「足に問題を抱える方の可能性をひろげるような靴を提供し、一人でも多くの人を笑顔にする」という理念のもと、日々奮闘している。

「マイスター靴工房 KAJIYA」(東京都・東久留米市/兵庫県・神戸市灘区)

1980年に「梶屋製作所」として開業して以来40年以上、「歩く喜びをあなたに」というビジョンのもと、様々な悩みや問題をかかえる人々に向けたフットウェアを研究・製作してきた靴工房。

「機能面での歩きづらさ」「デザイン面での心理的なハードル」を取り除くような下肢装具・医療用靴をオーダーメイドで製作しており、「外反母趾」や「扁平足」、小さなキズが大きな足の問題になりやすい「糖尿病」の患者に向けたインソールなどにも注力している。

※装具やインソールの製作は、内容によって、事前に必要な手続きが異なります。来店の前に、まずはホームページからお問い合わせください。

編集部・関口
編集部・関口

音楽&絵本&甘いものが大好きな、一児の父。文具や猫もとても好き。子育てをするなかで、新しいコトやモノに出会えるのが最近の楽しみ。少女まんがや幼児雑誌の編集を経て、2022年秋から『kufura』に。3歳の息子は、シルバニアファミリーとプラレールを溺愛中。

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