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夏場の麦茶、何時間で飲みきるべき?常温はNG?水筒での持ち歩きや、作り置きの注意点も【専門家に聞きました】

夏の飲み物といえば、やっぱり麦茶! 水筒に入れて出かけたり、家で作り置きしたり。でも、どれくらいもつの……?と心配になったことはありませんか?

そこで今回は、『株式会社 食品微生物センター』の管理栄養士・香川葵さんに、麦茶の保存について詳しく教えてもらいました。

麦茶は、「夏の外出時の飲み物」第1位!

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夏の外出時の飲み物として人気なイメージがある麦茶。実際、どれくらいの割合の人が飲んでいるのでしょうか?

そこで『kufura』では、中学生以下の子どもをもつ女性138人に、「夏の外出時によく飲んでいる飲み物」についてのアンケート調査を実施。するとなんと、子ども・大人の両方で、麦茶が第1位という結果に!

子どもがよく飲んでいる飲み物
(※3つまで選択可)

第1位:麦茶・・・79.7%(110票)
第2位:水・・・58.7%(81票)
第3位:スポーツドリンク・・・34.8%(48票)
第4位:牛乳・・・13.8%(19票)
第5位:緑茶・・・13.0%(18票)

親がよく飲んでいる飲み物
(※3つまで選択可)

第1位:麦茶・・・62.3%(86票)
第2位:水・・・57.2%(79票)
第3位:緑茶・・・23.2%(32票)
第4位:スポーツドリンク・・・18.1%(25票)
第5位:塩味のあるドリンク(ソルティライチ、うめソルティなど)・・・13.0%(18票)

水筒やマイボトルの麦茶、持ち歩く際に注意することは?

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そんなポピュラーな飲み物・麦茶ですが、1日持ち歩くと、悪くなったり腐ったりするのでは……と心配ですよね。『食品微生物センター』の香川さんに、詳しく教えてもらいました。

「人気のある麦茶ですが、実は、麦茶は穀物を原料としているため炭水化物などの栄養素が多く、水や緑茶、紅茶などと比べて、菌が比較的増えやすい飲み物なんです。

なお、Ph値が低い(=酸性度の高い)オレンジジュースやスポーツドリンクなどでは、菌の増え方は比較的緩やかです。ただし、水筒の素材などによって、酸性の飲み物はNGな場合も多いのでご注意ください。

牛乳やミルクティーなどの栄養価が高いものは、菌が爆発的に増えやすいので、夏場の長時間の持ち歩きには適していません」(以下「」内、香川さん)

麦茶は菌が増えやすい!? では、麦茶の持ち歩きはやめた方がいいのでしょうか……?

「いえいえ、いくつかの点に気をつけて、菌がなるべく増えないように工夫すれば、麦茶を水筒で持ち歩くこと自体は問題ありません。注意したいポイントは、

(1)中身をしっかり冷やした状態で持ち歩く
(2)夕方頃には飲みきる
(3)普段から、水筒をきれいな状態に保つ

の3つです」

(1)中身をしっかり冷やした状態で持ち歩く

「1つめは、水筒の温度についてです。菌が増えやすい温度は、だいたい20℃~40℃ほど。特に、人間の体温に近い30℃~40℃は要注意です。人間が心地いいと感じる温度は、菌にとっても心地いい……とイメージしていただくといいかもしれません。

そのため、飲み物を持ち歩く際は、なるべく中身が20℃~40℃にならないようにすることが重要です。麦茶を長時間持ち歩く際は、生ぬるいまま水筒に入れるのは避け、しっかり冷ましてから氷と一緒に入れるようにしましょう。

あわせて、冷やした状態が長くもつように、保冷機能がある水筒を使うことをおすすめします」

なるほど! 菌が増えないようにするには、温度管理が鍵になるんですね。

(2)夕方頃には飲みきる

「とはいえ、しっかり冷やして氷と一緒に水筒に入れたとしても、1日中冷たい状態を保つのは難しいと思います。そのため、一番いいのは、なんといっても早めに飲みきること。

以前、『kufura』の記事でご紹介したデータですが、口をつけたペットボトルの麦茶を常温で放置した場合、菌は10時間で約3倍に増加するという実験結果もあります。家庭で作る麦茶は、工場の無菌環境で製造するペットボトル入り飲料と違い、どうしても作る過程で雑菌が入ってしまうため、ペットボトル以上に菌が増えやすいと思った方がいいでしょう」

10時間で約3倍! ちなみに、菌が増えた飲み物を飲むと、何が起きるのでしょうか……?

菌が〇倍になったら必ずお腹をこわす……というものではありませんが、菌が爆発的に増えた飲み物を飲むと、いわゆる“食あたり”と同じような状態になり、腹痛や下痢、吐き気などの症状が出ます。

それを防ぐためには、やはり朝水筒に入れた麦茶は、夕方には飲みきるようにするというのが、1つの目安になると思います。飲みきれずに残ってしまっても、翌日以降に飲むのは避けましょう。

また、口をつけて飲む際に唾液と一緒に菌が水筒内に入るので、長時間持ち運ぶなら、液体に直接口をつけるタイプの水筒ではなく、コップがついたものを選ぶのも効果的です。紙コップなどに注いで飲むのもいいでしょう」

(3)普段から、水筒をきれいな状態に保つ

「3つめのポイントは、水筒の衛生管理です。

本来は、週に1~2度、ボトル用の洗浄剤や酸素系漂白剤などで殺菌をするのが理想的です。その際、材質によって対応しているものと非対応のものがあるので、事前によく確認してから使用しましょう。

熱湯消毒や煮沸消毒も、殺菌効果としては有効ですが、本体が変形してしまうなどの理由でNGの場合も多いようです」

恥ずかしながら、私はズボラな性格で週に1度の漂白殺菌をちゃんとやれる自信がありません……。

「漂白殺菌が難しい場合も、お手入れの際は普段から、洗剤を使ってしっかり洗うように心がけましょう。特に口をつける部分は、食べ物のカスなどが残りやすいので念入りに汚れを落とします。

あとは、洗ったあとによく乾かすことがとても大切。水分が残ったままだと雑菌が増殖してしまう原因になるので、水分を拭き取って、しっかり乾燥させましょう」

ペットボトル入りの麦茶の場合は…

では、ペットボトル入りの麦茶についてはいかがでしょうか?

「市販のペットボトル入り飲料は、無菌状態で製造されているので、その点では水筒の麦茶よりも安心です。

ただ、保冷機能つきの水筒と比べて温度が変わりやすいので、口をつけた状態の飲み物を、菌が好む20℃~40℃で長時間放置することはできるだけ避けましょう。冷蔵庫や保冷剤で冷やしたり、口をつけずに紙コップで飲むようにするのが有効です」

子どもやお年寄りの場合は、さらに注意が必要!

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その他に、麦茶の持ち歩きについて知っておいた方がいいことはありますか?

菌への抵抗力が低い子どもやお年寄りの場合、特に注意が必要です。

菌は目に見えませんが、腐っていると酸味が強くなったり、本来と違う味や臭いが出てきたりするので、大人であれば気づくことができる場合もあります。しかし、子どもだと“味がおかしいからやめておこう”といった判断ができません。

いつ作ったもので、どれくらい時間が経っているかを大人が把握し、臭いなどに注意しながら飲ませるようにしましょう」

自分で判断するのが難しい子どもの分まで、親が注意してあげるのが重要なのですね。

「ただし、必ずしも味や臭いに違和感がなければ大丈夫、というわけではないので、持ち歩き時間なども含めて、総合的に判断する必要があります」

作り置きの麦茶は、「煮出し」「お湯出し」「水出し」どれがいいの?常温保存はOK?

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最後に、作り置きの麦茶についてうかがいます。

作り置きの場合、どれくらいの期間もつのでしょうか。また、注意すべき点はどんなことでしょうか?

冷蔵庫での保存であれば、2~3日は問題なく飲むことができます。また、作った際の衛生状態や作り方によっては、1週間近くもつという実験結果もあります。

常温で放置してしまうと菌が増殖しやすい温度になってしまうので、必ず冷蔵で保存するようにしましょう」

水出しの麦茶と、煮出し/お湯出しの麦茶では違いはありますか?

煮出しやお湯出しの場合、容器が耐熱であれば、沸かした麦茶やお湯の熱によって、容器を殺菌することができます。

やかんなどで煮出す際は、冷ましてから容器に移すのではなく、熱い状態のままの麦茶を容器に注ぐようにしましょう。

お湯出しでも同様で、耐熱容器にパックを入れて熱湯を注ぐことで、麦茶を作りながら、同時に容器を殺菌する効果が期待できます。

ただし、煮出し/お湯出しの場合、作ったあとに長時間室温で放置するのはNG。せっかく容器を熱で消毒しても、温度が下がる過程で20℃~40℃の状態が長く続くと、空中などから入った菌が再び増殖してしまいます。氷や保冷剤などを使って早めに冷まし、粗熱が取れたら冷蔵庫に入れるようにしましょう。

また、麦茶のパックを取り出す際は、手を使わず、清潔なお箸などで取り出しましょう」

熱い麦茶や熱湯を注ぐことで、殺菌効果も期待できるのですね。では、水出しは避けた方がいいのでしょうか?

水出しの場合も、作ってすぐに冷蔵庫に入れる、もしくは冷蔵庫内で作るなどの工夫をすることで、温度を低く保ち、菌の増加を抑えることが可能です。パックを取り出す際は、煮出し/お湯出しの場合と同様、清潔なお箸などを使います。

また、水出しの場合は熱による容器の消毒効果がない代わりに、週に1~2回の漂白殺菌や、洗った後にしっかり乾燥させるといった点により注意し、容器を清潔に保つようにしましょう。乾燥機能つきの食洗機なども有効です。

煮出し/お湯出し/水出しのどれにすべきか、というよりは、それぞれで注意点が変わるだけと考えていただけたらと思います」

香川さんのお話をうかがっていて、「注意点をしっかり押さえておけば、必要以上に怖がらなくて済む」のだなぁと感じました。ぜひ美味しく健康に麦茶を飲んで、熱い夏を乗り超えていきましょう。

 

【取材協力】株式会社 食品微生物センター


 

【教えてくれた人】

香川 葵(かがわ あおい)

株式会社 食品微生物センター 検査事業部 お客様サポート2課 主任。管理栄養士。
得意料理は餃子で、いろんな包み方に挑戦中。ガイドブックを片手に、都内で餃子の食べ歩きをしたり、カフェや喫茶店巡りをするのが好き。

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