「寿命を延ばす履き方」のポイント5つ!買い替えどきは?
null中井さんによれば、靴の履き方&メンテナンスにおいて、特に注意すべきことはこの5つなんだそう。
【靴の履き方&メンテナンスで注意したいこと】
1:靴ひもやマジックテープで「しっかり固定」
2:かかとは「絶対に踏まない」こと!ひもも毎回「結び直す」のが基本
3:「脱いですぐ下駄箱に入れない」で休ませる!3~4足を履きまわそう
4:湿気が大敵!「下駄箱には除湿剤を」
5:クリームを塗るのは必ず「汚れを落としてから」
それぞれについて詳しく見ていきつつ、「買い替えどきの見分け方」もあわせてご紹介します。
1:靴ひもやマジックテープで「しっかり固定」
null「靴の役割は、足を適切な形に保持すること。
足は本来、側面から見ても、つま先側から見ても、ゆったりしたアーチ型になっています。しかし、ぶかぶかめな“足を甘やかす靴”や、ひもがしっかり締まっていない靴を履いていると、“扁平足”や“開張足”の原因になってしまうんです」
「靴はかかとの周りが硬い芯材で作られているので、ひも靴の場合、履いた状態でかかと部分をトントンと合わせたあと、先端の方からひもをしっかりと締めるようにしてください。マジックテープの場合も、足をかかとに合わせてから留めましょう。
ゆるんだまま履くと足が靴のなかで擦れやすく、靴の寿命を縮める原因にもなります。
パンプスやローファー、スリッポンなどの留め具がない靴の場合も、足をしっかりホールドできるように、必ず自分に合ったサイズのものを履くのが大切です」
2:かかとは「絶対に踏まない」こと!ひもも毎回「結び直す」のが基本
null「本来、靴を長持ちさせるためにも、足にしっかりフィットさせるという意味でも、ひもは毎回脱ぐときにほどいて、ゆるめておいた方がいいもの。工房のお客さんにも『ひもは毎回ほどいて、結び直してくださいね』とお伝えしています。
ですが、それはちょっと大変!という人もいますよね。特に子育てをしていると、ときに子どもを抱えたまま靴を履く必要があったりして、毎回ひもを結んでいる余裕がない……という場合もあるかもしれません。
その場合でも、必ず守っていただきたいのが“靴のかかとをつぶさない”ということ。
靴のかかとは足をホールドする要(かなめ)になる部分。1回でも踏んでしまうと、折れたところをきっかけに軟らかくなってしまい、耐久性が失われます。ひもをほどかないとしても、靴べらを使うなど、かかとがつぶれない履き方を心がけましょう。
お持ちの靴のかかとを見て、既に踏んだ跡がついてしまっている場合は、買い替えを検討したほうがいいでしょう」
3:「結び方の特性」を知って、自分にあった靴ひもに
null「靴ひもの結び方にはさまざまなものがあり、それぞれ機能性も違うんです」
「例えば、一般的な結び方として、穴(ハトメ)の外側から内側に向けてひもを通していく“オーバーラップ”。こちらは足を固定する力がアップする結び方です。
内側から外側に向けて通す“アンダーラップ”は反対に、足への締めつけが優しくなり、ひもを緩めるのも簡単になります」
おすすめの靴ひもの結び方「ダブルアイレット」
「私がおすすめしたい、手軽でかつしっかり足を固定できる結び方は“ダブルアイレット”。途中までは先ほどのオーバーラップと同じで、最後の2つの穴だけ通し方が変わります。(アンダーラップでもできますが、足を固定する意味では、オーバーラップの方がおすすめです。)
よく、一番上(手前)だけ2つの穴が並んでいるスニーカーを見かけると思うのですが、あれはこの結び方をするときに使う穴なんです」
「オーバーラップの場合、外側から内側へひもを通していくのですが、上から2つめの穴だけは内側から外側に向けてひもを通します。
一番上の穴には外側から通しますが、その際、最後まで引っ張りきらないようにすると、輪のような形になりますよね。そこに、反対側のひもを、上から下に向けて通します」
「左右とも同様に通したら、両方のひもの先を持って、左右に振るようなイメージでキュッと締め、最後に蝶結びをしたら完成です。
この結び方であれば、足首をしっかりホールドできるため、足が靴の中でずれてしまわずに済むんです。ぜひ一度、試してみてください」
4:「下駄箱には除湿剤」を!3~4足を履きまわして
null「靴を長持ちさせるには、3~4足を履きまわして、靴を休ませるのが大事です。
人は1日に、両足でコップ1杯分(200cc以上)もの汗をかくと言われていますが、湿気は靴の大敵で、革のカビやウレタン素材の変質などに繋がります。
脱いですぐの靴を下駄箱に入れてしまうと、下駄箱の中に湿気がたまっていってしまうので避けましょう。
下駄箱内には除湿剤を入れておき、定期的に下駄箱を開け放しておくようにすると、湿気がたまるのを防げます。特に梅雨や夏場は月に2~3回、それ以外の時期も2~3カ月に1回の頻度で空気を入れ換え、乾かすのがおすすめです。
あわせて、年に1~2回を目安に、定期的に持っている靴の靴底を見て、削れ方をチェックします。
- 片側だけが削れていて、平らなところに置くと傾く
- 靴底の溝がわからなくなるほど削れている箇所がある
- 地面に触れる部分の素材が極端に薄くなっている
といった場合には、靴底を補修して新しくするか、靴自体を買い替えます。
また、ひもをしめてもしっかり足が固定できないほど靴自体がゆるくなってしまったり、臭いがとれなくなってしまっている場合も、買い替えどきのサインです」
5:クリームを塗るのは必ず「汚れを落としてから」
null「最後に、本革でできた靴のメンテナンスについてです。
例えば3日に1回履いている靴であれば、月に2回ほどは靴クリームを塗るようにすると、油分が補われてツヤが出るほか、表面の細かい傷も目立たなくなります。
ただし、その際には必ず先に革靴用クリーナーで“汚れ落とし”をすること。クリームだけを塗り重ねていくと、革の通気性が失われ、表面もかえって汚れて見えてしまいます」
「お化粧で例えれば、クレンジングせずにメイクを上塗りしていくようなもの……と考えると、イメージしやすいかもしれません。
今回ご紹介した、履き方やメンテナンスのポイントを押さえると、気に入った靴をより長く履くことができますよ」
靴をきれいな状態に保つことは、足への負担を減らすことにも繋がります。逆に、買い替えどきが来ている靴を無理にはき続けていると、健康だった足に不調が出てきてしまうこともあるそうなので、この機に一度、お持ちの靴をチェックしてみては?
全5回のシリーズも次で最終回。テーマは、中井さんが留学を通して感じた日本とドイツの「靴の教育」の違いや、知っておきたい「靴の当たり前」について教えていただきます。
撮影/五十嵐 美弥(小学館)
【教えてくれた人】
中井要介(なかいようすけ)さん
医療靴先進国であるドイツで9年間修業し、ドイツ国の職人最高職位であるドイツ整形外科靴マイスターを取得。ドイツ整形外科靴マイスターと、日本国内の義肢装具士資格の両方を取得した初の医療技術者であり、2016年からは「マイスター靴工房 KAJIYA」の代表取締役を務める。
現在も、経営と並行して義肢装具士・靴職人としての靴づくりを勢力的におこなっており、「足に問題を抱える方の可能性をひろげるような靴を提供し、一人でも多くの人を笑顔にする」という理念のもと、日々奮闘している。
「マイスター靴工房 KAJIYA」(東京都・東久留米市/兵庫県・神戸市灘区)
1980年に「梶屋製作所」として開業して以来40年以上、「歩く喜びをあなたに」というビジョンのもと、様々な悩みや問題をかかえる人々に向けたフットウェアを研究・製作してきた靴工房。
「機能面での歩きづらさ」「デザイン面での心理的なハードル」を取り除くような下肢装具・医療用靴をオーダーメイドで製作しており、「外反母趾」や「扁平足」、小さなキズが大きな足の問題になりやすい「糖尿病」の患者に向けたインソールなどにも注力している。
※装具やインソールの製作は、内容によって、事前に必要な手続きが異なります。来店の前に、まずはホームページからお問い合わせください。
音楽&絵本&甘いものが大好きな、一児の父。文具や猫もとても好き。子育てをするなかで、新しいコトやモノに出会えるのが最近の楽しみ。少女まんがや幼児雑誌の編集を経て、2022年秋から『kufura』に。3歳の息子は、シルバニアファミリーとプラレールを溺愛中。