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真似できるポイントも! ハリポタ女優の印象を変えた「エマ・ワトソン」のスピーチテク 【届く、響く! プレゼンのお作法】vol.10

プレゼンテーションや発表会でプレゼンテーターをすると、場合によってはひとりで数十分間喋り続けなければなりません。できることなら、聞き手を惹きつけて飽きさせないコツを知りたいですよね。【届く、響く! プレゼンのお作法】vol.10〜12は、番外編として世界的な有名人3人のスピーチを取り上げ、それぞれのテクニックや素晴らしいところ、真似するときのポイントなどについて、チームビルディング・コンサルタントの尾方僚さんに教えていただきます。

思わず前のめりになって聴いてしまう、歴史に残る“名スピーチ”。多くの人を魅了する秘密は一体どこにあるのでしょうか? 1人目は英国出身の女優、エマ・ワトソンです。

『ハリポタ』で人気女優に! 改めてエマ・ワトソンをおさらい

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2001年、11歳のときに映画『ハリー・ポッターと賢者の石』の魔女 ハーマイオニー・グレンジャー役で女優デビューしたエマ・ワトソン。

以降、『ハリー・ポッター』シリーズの映画全作品に出演し、世界的に有名になりました。2009年には、「過去10年間で最も興行収入を稼いだ女優」としてギネス世界記録にも認定。同シリーズ完結後も、TV映画『バレエ・シューズ』などの話題作に出演し、現在も女優としてキャリアを築いています。また、米国の名門ブラウン大学を卒業した才女でもあります。

イメージ一変! エマ・ワトソン「国連でのスピーチ」の特長

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今回取り上げるのは、“『ハリー・ポッター』シリーズの人気女優”というエマ・ワトソンのイメージを一変させたスピーチです。

2011年にスタートした、女性の地位向上を目的とした活動をする国連組織「UN Women」。2014年に親善大使に任命されたエマは、国連本部で「He For She」というキャンペーンへの参加を呼びかけるためにスピーチを行いました。当時彼女は24歳でした。

まずは、動画でスピーチを見てみましょう。

(1)奇をてらわずに、「超基本の型」でシンプルな構成

下記のように、スピーチの組立てはとてもシンプル。プレゼンや発表の“超基本型”の構成で、自らの主張を丁寧に語り上げました。

<スピーチの構成>

・「He For She」キャンペーン発足の目的と背景

「UN Women」の活動目的

自分がスピーチをする目的

・フェミニズムについて

18歳までの自身の経験

フェミニズムに対する自分の意見

フェミニズムを取り巻く現実と実状

・男性と“ジェンダー・ステレオタイプ”について

自身と周囲の男性との間に築かれた平等な関係性

1997年に行われた北京でのヒラリー・クリントンの演説について

“男らしさ”に苦しめられる男性たちの実状(データを用いて)

・「He For She」キャンペーン参加の呼びかけ

キャンペーンが目指す本質

参加の呼びかけ

お礼

構成は、テーマの開示 テーマにまつわる背景を詳しく説明 もう一度テーマのまとめ → お礼となっています。

冒頭では国連本部という場に登場した自分を客観的に解説し、「なぜあなたが?」という印象を受け止めて聴衆と向かい合い、引きつけます。

本題では、大きなテーマに対して身近なエピソードから話を始めます。“人は人に興味がある”ということを踏まえ、適度に“自分”を出し、聴衆と自分をフラットにして距離を縮めることに成功していますね。また、時々難しい言葉を使って知的なニュアンスを盛り込む反面、「私でなければ、誰が?」「今やらないなら、いつ?」といった短いセンテンスやキャッチーで簡単な言葉をくり返して印象づけています。

後半部分で「ハリー・ポッターの女の子が何を言っているんだ、とお思いでしょう」というひと言はありましたが、女優という立場を利用した演出も一切なかったことも、特徴のひとつかもしれません。

(2)ギャップ上等! ノンバーバルでもイメージを裏切ることに成功

ビジュアル面でも、“ハリー・ポッターの女の子”を微塵も感じさせない白のスーツにまとめ髪という姿で聴衆のイメージを大胆に、そして見事に裏切りました。国連本部でのスピーチ、男女平等を訴えるテーマであるため、TPOを考慮して正統派の印象に仕上げたのです。

今までのイメージとのギャップで聴衆の心を掴んだだけでなく、同時に “エマ・ワトソンという女優”のイメージまでをも一新することに成功したと言えるでしょう。

取り入れたい! エマのスピーチに学ぶ真似ポイント

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エマ・ワトソンの印象をガラリと変えたとも言われるこの名スピーチ、プレゼンやスピーチ初心者でも真似できるテクニックをご紹介しましょう。

(1)自らの経験談を交える

今回取り上げたスピーチでは、ところどころエマ・ワトソン自身の体験談が盛り込まれていますよね。これは聞き手の共感を得たり、説得力を増すことができるテクニック。とくに“男女平等”といった大きなテーマには最適の手法です。聴衆の関心を引いて距離が近くなり、“自分事”ととらえてもらいやすくなります。

(2)目線を丁寧に配りながら、ゆっくり話す

スピーチを見ていると、右・左・右……と交互に目線を配りながら、ゆっくりと丁寧に話していることがわかりますよね。目線を聴衆全体に配ることによって聞き手に信頼感を与え、より話に耳を傾けてもらえるようになります。

また、エマのようにゆっくりと丁寧に話すことも“伝える”ための第一歩。スピーチなど自分だけが喋るときは焦って早口になりがちなので、ゆっくりめに話すことを心がけましょう。

(3)キャッチーな言葉をくり返す

先ほどもお伝えしましたが、「私でなければ、誰が?」「今やらないなら、いつ?」というキャンペーン参加を呼び掛ける言葉をくり返して使っています。このように、聞き手の心に訴えかける言葉をくり返すことは、印象を深めるためにとても効果的。その後の行動をうながすことにも繋がるでしょう。

(4)TPOを考え、テーマに合わせた身なりにする

白いスーツワンピースと、きっちりしたまとめ髪で登場したエマ・ワトソン。女優という職業から想像するイメージとのギャップだけでなく、とても誠実な印象を受けますよね。

話す内容とノンバーバル(言葉と内容以外から得る相手の情報全て)が合っていないと、かえって不信感を与えてしまうことも。この日の彼女は、TPOやスピーチのテーマにふさわしい100点満点のノンバーバルだったと言えます。【踊らず進む!会議のお作法】vol.9「最初が肝心!? “ノンバーバルコミュニケーション”とは」などでもお伝えしてきたノンバーバルの大切さがはっきりと分かりますね。

エマのように、“自分がどんな話し方でどんな格好をすれば聞き手にギャップを与えられるか”を把握しているなら、あえてギャップを狙って服装や言葉遣いの演出にチャレンジしてみるのもいいかもしれませんよ。ただ難易度は高めなので、見当違いのギャップ狙いにはくれぐれもご注意を!

勉強になる! スピーカーとしても優れたミシェル・オバマ氏

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TPOを重視したエマ・ワトソンのスピーチとはまた趣きが異なりますが、オバマ前アメリカ大統領夫人のミシェル・オバマ氏も印象的なスピーチをする女性です。

声もジェスチャーも力強く、メッセージ性にあふれています。特に2016年7月25日に行われた、大統領選に向けたヒラリー・クリントン氏の応援演説は、その迫力と説得力が話題となりました。

気になる方はぜひ一度彼女のスピーチを見て、良いところやマネできるポイントなどを自分なりに分析してみてください。勉強になるはずですよ。

いかがでしたか? 初心者がいきなりプロのテクニックを真似するのはなかなか危険ですが、場数を踏んで徐々に慣れてきたら自分のプレゼンなどに取り入れてみましょう。次回は、元アメリカ合衆国大統領 バラク・オバマ氏のスピーチを取り上げます!


 

【取材協力・監修】

チームビルディング・コンサルタント

尾方僚

大手就職情報会社に9年間勤務した後、コンサルタントとして独立。大学や企業人事担当者向けの講演を数多く行い、企業の採用コンサルテーション・研修に従事する。現在、日本女子大学リカレント教育課程 講師、日本工業大学、デジタルハリウッド大学の非常勤講師としてキャリア系科目を担当。著書は『プレゼン以前の発表の技術』(すばる舎)、『100人の前でもキチッと話せる本』(インデックスコミュニュケーションズ)など多数。

【参考】

尾方僚(2011)『プレゼン以前の発表の技術』(すばる舎)

尾方僚(2007)『100人の前でもキチッと話せる本』(インデックスコミュニケーションズ)

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