1:「事実」と「書き手の意見」を区別する
nullニュースやコラムなど、どんな文章を読解するうえでも心がけておきたいのが「事実と意見を区別する」ということ。
書き手の意見が含まれる一文では、以下のような語尾が使われています。
・~ようだ、~かもしれない
・~と言わざるを得ない、~と言えるだろう
・~べきだ
・~と思う、~と考える…etc
ニュースやコラムの中には、事実と意見を巧みに織り交ぜながら、特定の価値観へと誘導するようなコンテンツも混ざっています。書き手の意見・推測と事実は一線を画していることを心に留めておきましょう。
2:事実として書かれていること自体も疑ってみる
null「事実と意見を区別すること」が大切だと述べましたが、事実のように断定的に書いてあることでも、事実ではない、というケースがあります。
その文章が事実にもとづいて書かれているかどうかを判断するにあたり、以下のような点に注意します。
・データがあげられている場合、引用元が示されているか
・そのデータは信頼に値するのか
・海外ニュースの場合に出典が明らかにされているのか
・データが恣意的に使われていないか
全ての情報をうのみにせず、こうした確認作業を通じて“裏を取る”という作業を要することがあります。
結論ありきで都合のよいデータを引用している記事も目にします。「そのデータは信頼できるものか」という点にも着目しておきましょう。
3:「あおり」を排除して本題を見極める
null膨大な情報が飛び交うインターネット空間においては、タイトルの中や導入文、SNSの短い文章の中に、読み手の関心をひく“あおりの言葉”が高い頻度で使われています。
読者のクリックを誘い、アクセス数を稼ぐ意図が含まれている場合もありますが、そうした“あおり部分”は排除して、「結局、この記事の本題は何か」という点を見極める必要があります。
4:識者やインフルエンサーとは「適度な距離」を
nullたくさんの情報があふれる今、難しいことを簡潔にわかりやすくかみくだいてくれる識者やインフルエンサーの存在感が増しています。
特定の存在に信頼を置いている場合「~さんが書いているから・言っているから」という理由で事実として認識しがちです。
意見についても「ここまでは賛成できるけど、ここは賛成できない」と批評する視点も持ちながら、誰が言ったかよりも、何が言われているのか、何が根拠かを意識することが大切です。
以上、国語講師の吉田裕子さんに大人に必要な読解力を身に着けるためのコツについてうかがいました。
個人的な感情で文章の内容を拒絶したり絶賛することなく、客観的に読み、必要に応じて根拠を調べたり複数のニュースを比較して精査するリテラシーは、不確かな時代を生きるうえで重要なスキルです。
吉田裕子さんの新刊の『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)には、読解力を鍛えるための具体的な実践法が数多く紹介されています。
読解力をブラッシュアップしたい方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。
【取材協力】
吉田裕子
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)。東京大学卒業。