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【大人にいま必要な読解力#1】「大人の読解ミス」によるトラブルが増えている?人間関係にも影響が…

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世の中にはさまざまな職種がありますが、どのような仕事においても欠かすことができないのが“読解力”です。

今回は国語講師の吉田裕子さんに読解力の重要性や、ブラッシュアップ方法についてうかがいました。

大人も「文章が読めない人」が増えている?

吉田裕子さんの新刊『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)には読解力を高めるための具体的なテクニックが紹介されています。

なぜ今、“大人の”読解力というテーマを選んだのでしょうか。

それは、吉田さんが国語講師として学生や社会人に向けた授業を行う中で芽生えた「もしかしたら、文章を読めない人が増えているのではないか」という問題意識に起因します。

現在の状態を例えるのなら、多くの人が読解力の欠けたまま、文章の洪水に触れている状態

日ごろからさまざまな情報に触れていても、“文章を精読して吟味する”機会が減り、読解力を伸ばすチャンスが少なくなっています。

また、読解力を育むことでどのようなメリットがあるのか、普段から意識する機会はそう多くありません。

というわけで今回は、大人に必要な読解力や、読解力を育むためのコツについて吉田さんにうかがいました。

読解力ってどんな力?なぜ、大切?

まず、読解力とはどんな能力で、どんな場面で役立っているのかうかがいました。(吉田さん、以下「」吉田さん)

読解力とは、文章を誤解したり曲解したりせずに、客観的に正確に理解する力のことです。

学生時代には、物語や説明文を読み込んで、主人公の気持ちや作者の意図などを解釈する際に“読解力”という言葉が使われているので、“読解力=国語の勉強”“読解力=深読み”というイメージが強い方、そして、苦手意識を持っている方も多いかもしれません。

しかし、私たちは大人になってからも、日常的に“読解”を行っています。

書籍、ビジネスメール、マニュアル、資格試験のテキスト、ニュース、著名人のブログ、テキストメッセージなど、さまざまな文章を読み解いて、知識をインプットしたり、文章を要約して誰かに伝えたりしています。

どのような文章においても共通して大切なのが“曲解することなく、正確に理解すること”です」

 

最近増加している「読解ミス」の傾向は?

吉田さんは、国語講師として生徒が文章を読むという行為を定点観測する中で、ある変化に着目しています。

「文章が長文の場合、最後まで読んで、吟味するための耐久力を要しますが、その耐久力が文章の最後まで続かない人が増えてきたような気がします。

その背景の1つにインターネットの情報収集があげられます。ネット記事では“見出し”と導入の部分、記事の一部分をかいつまんで読めば、最後まで読まなくてもだいたい理解している“つもり”になることができます」

こうした情報収集の環境が一般的になる中で、近年の読解ミスには“ある傾向”があると言います。

「読解ミスにもさまざまなものがありますが、近年は、自分の主観で曲解してしまうタイプの読解ミスが多いと感じています。

自分とは相いれない価値観やものの考え方に対して先入観が凝り固まっているために、情報を客観的に理解するということが難しくなっているケースも見られます」

速読、乱読、熟読など、たくさんの読み方がありますが、文章を“最後までじっくり読む”機会が減っているのでは、というのが吉田さんの仮説です。

読解の際には、思い込みや先入観をいったん脇におき、「いったんニュートラルな目線で書いてあることを読んでみる」ということが必要だそうです。

大人の「読解力の欠如」はどんなトラブルを発生させている?

それでは、大人の読解力の欠如は、どんなトラブルにつながっているのでしょうか。

「身近な例をあげると、マニュアルや業務フローを正しく読解できなければ仕事のミスにつながります。また、相手の意図を汲み取る力、語彙力の不足などにより、意思疎通がうまくいかないことがあります。

場合によっては、文脈を把握できないまま特定の単語を曲解することで人間関係の不和を招くケースもあります。こうしたケースは結果的に職場の業務効率に影響します。

コロナ禍以降、多くの職場ではメールやメッセージアプリを通じた文章や資料のやりとりが増加していると思います。コミュニケーションや業務効率の面からも読解力は重要だといえます」

“非対面式”のコミュニケーションによって視覚的な情報が限られた場合には、文章から相手の意図をくみとる必要が生じます。

意思疎通の齟齬を防ぐためにも「文章を客観的に読んで理解する」というプロセスが重要度を増しているようです。

読解力はどうしたら伸ばすことができる?

それでは、誤解・曲解せずに、客観的に正しく読む読解力は、どのような方法で育むことができるでしょうか。

吉田さんによれば、日常生活のちょっとした習慣で読解力をブラッシュアップすることは可能とのこと。

「すぐに始められることとしては、日常的に触れる文章の“量”を増やし“幅”を広げることを心がけることです。

例えば、ネットのニュースだけでなく週1回だけ新聞を読む、自分の関心外のビジネス本を読む、普段触れているメディア以外から情報を取り入れるなど、“ちょっとしたこと”を続けることが、読解力の向上につながります。

また、読んでインプットするだけではなく、“アウトプット”を心がけることもおすすめです。

・読んだ記事をピックアップしてメモする
・スマホのメモ機能に残しておく
・文章を要約する

このように、自分に合った方法でかまいませんので“アウトプット”することで、インプットした語彙や情報が自分の中にとどまりやすくなります」

 

以上、今回は国語講師の吉田裕子さんに読解力の重要性や、ブラッシュアップ方法についてうかがいました。

インターネットの情報収集では、記事の見出しを見て、文章を素早くスクロールするクセがついている方は多いと思います。慣れ親しんだサイトで素早く情報収集するだけではなく、触れる情報の“幅”を広げ、“量”を増やすことが読解力の向上につながるようです。

文章にはさまざまな読み方がありますが、“じっくり読む”機会も意識的に作ってみてはいかがでしょうか。

次回はさらに「大人の読解力」を向上させる実践的な方法をお届けします。


 

【取材協力】

吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)。東京大学卒業。

 

 

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