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「破天荒」の意味は「豪快」「ハチャメチャ」じゃない!本当の意味と使い方は?【間違いやすい日本語#2】

“破天荒”という言葉は、大胆で豪快な人を形容する際によく聞かれる言葉ですが、本来の意味とは? 今回は“破天荒”の意味や語源をご紹介します。

解説していただいたのは『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「破天荒」の意味とは?

「破天荒」の意味とは?

皆さんは“破天荒”の意味はどちらが正しいと思いますか?

  1. 誰も成し得なかったことをすること
  2. 豪快で大胆な様子

正解は1。“破天荒”は、今までに誰もできなかったことを初めて行うことを表す言葉です。前代未聞のことを成し遂げたとき、誰もできなかった偉業を成し遂げたときなどに使われています

ところが、令和2年度の「国語に関する世論調査」によれば、正解率は23.3%。「豪快で大胆な様子」の意味で解釈している人が多数派でした。

現在は、メディアでも”破天荒”という言葉を「豪胆」という意味で使っているケースが見受けられます。言葉の意味は、時代とともに少しずつ変わっていくものですが、過渡期にある言葉の1つなのかもしれません。

「破天荒」の語源は?

“破天荒”は、中国由来の言葉。

かつて、難関の科挙試験の合格者が出ていない土地が“天荒”と揶揄(やゆ)されており、その土地からの初の合格者を「天荒を破る者」と呼んだという故事に基づいた言葉です。

転じて「すごいことを成し遂げる」という意味で使われるようになりました。

「破天荒」の使い方の注意点は? よく見かける間違った使い方

「破天荒」の使い方の注意点は? よく見かける間違った使い方

先述のように、“破天荒”は日常会話の中で「気質が豪快である」「ハチャメチャである」という意味で使われるケースがあります。本来の意味を踏まえると、以下のような使い方は正しくありません。

【要注意例文】

・彼は、泥酔して路上で寝てしまうような破天荒な人物だ。

・部長は仕事中に堂々と居眠りをするような破天荒なキャラクターだそうだ。

例文のように「めちゃくちゃである」「常識外れだ」のような文脈で使うのは、本来の意味を踏まえると正しくない。

多くの人が“破天荒”を“豪胆”という意味で解釈しています。そのため、本来の“誰もなしえない偉業”の意味で使った場合に相手に真意が伝わらない可能性もあるかもしれません。

「破天荒」の例文は?

「破天荒」の例文は?

“破天荒”を用いた例文を通じて使い方をイメージしていきましょう。

・その試みは破天荒な挑戦だといえる。

・新進気鋭の経営者が打ち出した破天荒な事業計画は、世間の耳目を集めている。

・岡本太郎の破天荒な人生は伝説として語り継がれている。

「破天荒」を言い換えると?類語は?

「破天荒」を言い換えると?類語は?

“破天荒”の類似の意味を持つ言葉をご紹介します。

(1)「前人未到」

“前人未到”または“前人未踏”(読み方:ぜんじんみとう)は、まだ誰も足を踏み入れたことがないこと。誰もやったことがないことをしたり、新記録を打ち立てたときなどに使われています。

【例文】

・彼の業績は、前人未到の域に達している。

(2)「前代未聞」

“前代未聞”(読み方:ぜんだいみもん)は、これまで一度も聞いたこともない珍しいことの意。ネガティブな文脈でも、ポジティブな文脈でも使われています。

【例文】

前代未聞の不祥事が起こり、社内は騒然としている。

・彼女はアスリートとして前代未聞の快挙を成し遂げた。

(3)「未曾有」

“未曾有”(読み方:みぞう)は、いまだかつて起こったことがないこと。

【例文】

未曾有の事態に陥り、世界から注目が集まっている。

(4)「金字塔」

“金字塔”(読み方:きんじとう)は、後世に長く残るような偉大な業績・事業・著作などを表す際に用いる言葉です。ピラミッドの異称でもあり「金字塔を打ち建てる」という表現が使われています。

【例文】

・文学界に金字塔を打ち建てた。

「破天荒」の対義語は?

「破天荒」の対義語は?

“破天荒”の対の意味を含む言葉をご紹介します。

(1)「変哲もない」

「変哲もない」は、ありふれていて取りたてて変わったところのない様子。平凡であること。

【例文】

・商品自体は何の変哲もないが、破天荒なプロモーション方法が功を奏した。

(2)「十人並み」

“十人並み”(読み:じゅうにんなみ)は、人並みであること。

【例文】

・彼のスキルはまだ十人並みですが、卓越した素養があると思います。

 

今回は“破天荒”という言葉をご紹介しました。

正しい意味で解釈している人は少ないと思います。この機会に言葉の由来などを覚えておきましょう。

 

取材・文/北川和子

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【参考】

破天荒の意味 – 文化庁

令和2年度「国語に関する世論調査」の結果の概要 – 文化庁

吉田裕子
吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。

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