この連載では、“転職のカリスマ”としても知られる森本千賀子さんに、後悔しない転職活動のためのノウハウを教えてもらいます。
「WILL」「CAN」「MUST」3つの指標
null経験や実績より「WILL」を重視する企業も
nullこれは、ある会社が財務職の募集を行ったケースです。高いスキルと実績を持つAさんと、スキルも経験も浅いBさんが応募。書類選考では当然ながらAさんの評価が圧倒的に高かったのですが、結果的に採用されたのはBさんでした。その決め手は、人柄や社風との相性といったものではなく「WILLを持っているかどうか」でした。
実績豊富なAさんは面接の場で「私はこれができますので、御社のお役に立てます」というアピールだけに終始していたそうです。一方のBさんは、その会社で「こんな仕事にチャレンジしたい」「いずれはこんなふうに成長したい」という思いを語りました。
面接担当者は、Aさんを「完成されてしまっている人」、Bさんは「伸びしろがある人」と評価したのです。
もちろん経験やスキルも大切ですが、この会社のように「やりたいことを持っているか」を重視する企業は少なくありません。会社からの要求や指示に応えるだけの人よりも、やりたいという意思を持っている人のほうが、「努力して成長を続けられる人」と期待できるからです。
「やりたいこと」を明確にすることは、面接を突破するだけでなく、膨大な求人情報からぴったりの1社を選び出すためにも重要ですので、ぜひこのプロセスをちゃんと踏んでください。
過去にさかのぼって「WILL」を見つける
nullとはいえ、自分がやりたいことがよくわからない…という人も多いと思います。「会社から与えられた役割をこなす」という働き方に慣れてしまっていると、そうなるのも無理はありません。実際、優れたキャリアを積んできた方であっても、自分のWILLを認識できていない方は大勢います。
そんなときは、これまでの仕事の中で「ワクワクした瞬間」「面白いと感じた業務」などを思い出してみてください。それでもピンと来なければ、学生時代にさかのぼって、夢中になっていたことを振り返ってみましょう。
例えば、人材サービス会社で営業マネジャーを務めていたCさんの場合、次のキャリアを考えるにあたり「どんな業界が自分に合うんだろう?」と悩み、転職相談に訪れました。
そこで、一緒に過去にさかのぼって楽しかった思い出をお聞きすると、Cさんは「高校時代の体育祭」を挙げました。クラス対抗の応援合戦の企画や準備をしたのがとても楽しかったのだとか。
そこをさらに深掘りすると、Cさんは「皆が団結する一体感」「個々が得意なことを活かして、一つのものを創り上げていくプロセス」を楽しむという志向が浮き彫りになったのです。
「そんなふうに働ける仕事」という軸で求人を探した結果、Cさんが選んだのは、「ウェディングプロデュース会社のマネジャー」でした。プランナー、キッチンスタッフ、ヘアメイク、カメラマンなど、さまざまな職種のスタッフが「新郎新婦が望む結婚式を実現する」という目標に向けて力を合わせる職場です。
転職先を選ぶ際には、企業の安定性や待遇などに目を奪われがちです。しかし、「WILL」を軸にすれば、ワクワクできる仕事に出合えますし、「やりたい」という意欲が伝わることで採用に至る確率も高まります。
求人を探し始める前に、ぜひ自分の「WILL」を認識してみてください。
構成/青木典子