「他山の石」の意味とは?
「他山の石」の意味とは?“他山の石”(読み方:たざんのいし)とは、他人のよくない言動や、つまらない出来事でも、自分の品性や知性を磨くために役立つ、という意味。
他人の誤った言行や失敗に言及し、自らの反省や修養に役立てる際に使われることが多い言葉です。
“他山の石”は、中国の詩集『詩経』の中の故事「他山の石以て玉を攻むべし」を由来としています。「他の山のつまらない石ころでも、宝石を磨く程度には役立つ」という意味から転じて、「人のつまらない言行でも、自分の人格を育てる助けとなる」という意味で使われるようになりました。
「他山の石」の使い方の注意点は?よくある間違った使い方は?
「他山の石」の使い方の注意点は?よくある間違った使い方は?“他山の石”の使い方の注意点は3つ。
(1)「お手本にする」の意味ではない
他山の石は、「他人の誤った言行も自分の行いの参考となる」の意。
過去に行われた文化庁の「国語にまつわる世論調査」では、22.6%が「他人の良い言行は自分の行いの手本となる」と回答していますが、“他山の石”は手本になるような優れた行いを指して使うことはありません。
以下のような使い方は間違いなので、注意しましょう。
【NG例文】
・彼の素晴らしい成功例を他山の石としたいですね。
→“他山の石”は、人のよくない言行から学ぶことなので、例文は間違い。
(2)目上の相手の言行に対しては使わない
“他山の石”は、よその山の石ころを他人のつまらない行いに例える慣用句。目上の相手の言行に対しては使いません。
【NG例文】
・課長の失敗談を他山の石とさせていただきます。
→目上の相手の言行に対しては使わない。
(3)「他山の石とせず」とは言わない
他者の失敗からも学ぶために「他山の石とする」という言い方が一般的です。「他山の石とせず」という使い方をすることはほとんどありません。
しばしば“他山の石”と“対岸の火事”を混同しているケースが見受けられます。“対岸の火事”は、他人にとっては大きなできごとでも、自分には関係のないできごと。「対岸の火事とせず」という言い方をするので、混同しないように注意しましょう。
【NG例文】
・他社の失敗を他山の石とせず、自分ごととして取り組んでください。
→「他社の失敗を他山の石として」が正解。他社の失敗を通じて自社を省みるため。「他社の失敗を対岸の火事とせず……」ならOK。
「他山の石」の例文は?
「他山の石」の例文は?“他山の石”を使った例文をご紹介します。
・他社の失敗事例は他山の石として教訓にしましょう。
・他山の石に学ぶ姿勢は、社会人として大切なことです。
・私の失敗がメンバーにとって他山の石となるように次に生かしてほしい。
「他山の石」を言い換えると?類語は?
null“他山の石”と類似の表現をご紹介します。
(1)「反面教師」
反省のきっかけとなるような、悪いお手本となる物事や人のこと。
【例文】
・威圧的な態度で後輩を委縮させるA先輩は、私にとって反面教師のような存在だ。
(2)「人のふり見て我がふり直せ」
他人の善い行い・悪い行いを見て、自分の行いを反省して欠点をあらためること。
【例文】
・人のふり見て我がふり直せというから、彼の失敗を笑ってはいけない。
「他山の石」の対義語は?
「他山の石」の対義語は?続いて“他山の石”と対の意味を含む言葉をご紹介します。
(1)「模範」
“模範”(読み方:もはん)は、見習うべきもの。手本のこと。
【例文】
・彼女は、後輩の模範となっている。
(2)「手本」
“手本”は、見習うべき人や物事のこと。
【例文】
・先輩をお手本にして、私もチャレンジしてみます。
(3)「鑑」
“鑑”(読み方:かがみ)は、規範とするもの。
【例文】
・彼の丁寧な仕事ぶりは、職人の鑑だ。
以上、国語講師の吉田裕子さんに“他山の石”の意味や注意点について解説していただきました。
“石”という言葉はいくつかのイメージを含んでいますが、“他山の石”は“つまらないもの”のこと。言葉の由来とともに正しい意味を覚えておきましょう。
取材・文/北川和子
【参考】
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。