「潮時」の意味とは?
「潮時」の意味とは?“潮時”(読み方:しおどき)は、物事をするためにちょうどよい時機のこと。
潮が満ちたり引いたりするときのことを指す言葉で、漁師が漁に出るのに最適な時間を判断していたことが語源だと言われています。
例えば、日本最古の和歌集である万葉集には以下のような和歌があります。
「熟田津に 船乗りせむと 月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな」
(熟田津で船に乗ろうと月を待っていると、
“潮時”は、
「潮時」の使い方の注意点は?
「潮時」の使い方の注意点は?“潮時”は、
文化庁が行った『国語に関する世論調査』で“潮時”の意味を問われた回答者の36.1%が「ものごとの終わり」と回答しています。
実際に、最新ニュースの中から”潮時”が使われた見出しをチェックしてみると、“以下のような場面で使われていました。
・スポーツ選手が引退を決意したとき
・企業が廃業に追い込まれたとき
・ビジネスパーソンが退職を選択したとき
本来は“好機”という意味でも使うことのできる言葉ですが、言葉の使い方に変化が生じ、多くの場合“やめどき”という意味で使われています。
そのため、いい方の意味で“潮時”を用いた場合、
【要注意例文】
・今の状況を踏まえると、投資の潮時だと思いますよ。
→仮に“好機”という意味で使っていても、“やめどき”の意味で解釈される可能性が高い。
「潮時」の例文は?
「潮時」の例文は?“潮時”を用いた例文をご紹介します。
・潮時を待って海釣りを始める予定だ。
・あの球団は、売却の潮時を探っているとささやかれています。
・潮時の見極めも大切な仕事のひとつだ。
・この市場を攻め続けることは無謀すぎます。そろそろ潮時です。
・そろそろ身を引く潮時が来たようだ。
“チャンス”なのか“やめどき”なのか、どちらの意味で使われているのか文脈から判断しましょう。
「潮時」を言い換えると?類語は?
「潮時」を言い換えると?類語は?続いて“潮時”と類似した意味を持つ言葉や言い換え表現をご紹介します。
(1)「好機」
ある物事をするのにちょうどよい機会のこと。本来の“潮時”の意味と類似した意味を含んでいます。
【例文】
・海外向けの商品が多い当社にとっては、円安が好機となるかもしれない。
(2)「チャンス」
よい機会のこと。期待を込めて使われることの多い言葉です。
【例文】
・彼にもようやくチャンスが巡ってきた。
(3)「あつらえ向き」
“あつらえ向き”は、希望にぴったりと合っていること。
【例文】
・今日は、ハイキングにおあつらえ向きの気候ですね。
(4)「引き際」
近年の“潮時”は、“引き際”と類似の場面で使われることが多くなっています。“引き際”は、現在の立場、地位、仕事から身を引くタイミングや態度のことを表す言葉です。
【例文】
・A社の会長は引き際を見誤り、次期候補が不在の状態が長く続いている。
以上、今回は“潮時”の意味や使い方についての解説をお届けしました。
“やめる”“退く”の意味合いで使われることが多くなっていますが、“ちょうどよい時機”という意味も含む言葉です。読解時には注意しましょう。
取材・文/北川和子
【参考】
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。