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正解率は26%!「うがった見方」の本当の意味を解説【間違いやすい日本語#8】

“うがった見方”とは、どんな見方を表すのでしょうか。“うがつ”という言葉を調べると、そのヒントが見えてきます。今回は、“うがった見方”の意味や使い方の注意点をお届けします。

解説していただいたのは、『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「うがった見方」の意味とは?

「うがった見方」の意味とは?

“うがった見方”の意味はどちらが正しいと思いますか?

  1. 物事の本質を捉えた見方をする
  2. 疑って掛かるような見方をする

正解は「1」。物事の本質を捉えた見方を表す表現です。

しかし、平成23年度「国語に関する世論調査」では、正解の「1」と回答した人は26.4%であったのに対し、「2」と回答したのは48.2%と倍近い割合でした。

実際、現代日本語においては「2」の“疑って掛かる見方”“ひねくれた見方”のような意味で使う人が増加し、すでに定着しつつある現状にあります。

言葉の意味は、時代とともに変化していますが、変化の最中にある言葉の1つと言えるかもしれません。

◇そもそも「うがった見方」の「うがった」ってどういう意味?

“うがった”の活用前の“うがつ(穿つ)”には、以下のような意味があります。

【「うがつ」の意味】

・穴を開ける
・物事の深層を巧みにとらえる
・凝ったことをする

“うがつ”の語源は“穴を開ける”の意。

そこから転じて、物事の裏面や隠れた事実を掘り下げて指摘することを“うがつ”という言葉で表すようになっていきます。

◇現在の「うがった見方」は江戸時代の「うがちすぎ」と似ている?

江戸時代後期には“うがち”という表現技巧が流行し、おもしろさの中に鋭い観察眼を感じさせる文章が人気を博しました。

こうした表現が人気を博すとともに、人と違った視点で本質を突いたことを言おうとするあまり、事実から外れてしまう“うがちすぎ”という言葉が使われるように。現代なら「人と違ったことを言おう」と意気込んで滑ってしまう……という感じでしょうか。

先ほど述べた“うがった見方”の「疑って掛かるような見方をする」という意味は、一般的な見方ではなく人と違う見方をする“うがちすぎ”に似たニュアンスを含んでいるように思います

「うがった見方」の使い方の注意点は?自分に使うのはあり?

「うがった見方」の使い方の注意点は?自分に使うのはあり?

“うがった見方”の使い方の注意点は、以下の2点です。

(1)自分の意見を言うときに使うのはあり?

先述したように“うがった見方”は本来「本質を突いた見方」という意味がありますが、実際には、「疑ってかかるような見方をする」「斜に構えた見方」のような文脈で使われています。

【要注意例文】

うがった見方かもしれませんが、今後A社の動向には注意したほうがよいと思います。

→本来の意味とは異なる意味で使われていますが、多くの場合、真意は伝わると思われます。ただし、言葉遣いに厳しい相手に対しては「ひねくれた見解かもしれませんが」「斜に構えた意見ですが」などの表現を用いたほうがよいかもしれません。

(2)自己アピールには使わないほうがよい

本来の意味と、広く解釈されている意味が異なりますので、以下のような使い方には注意しましょう。

【要注意例文】

・私は、真実をうがった見方を心がけています。

自己アピールなどで“本質を突いた見方”という意味で使ったとしても、真意が伝わりにくいため、避けたほうがよいでしょう。“本質を洞察することを心がけています”などと言った方が誤解されません。また、今日一般的な意味で使いたい場合も、「普通とは違う角度で物事を見るように心がけています」などと言い換えた方が伝わりやすいはずです。

「うがった見方」の例文は?

「うがった見方」の例文は?

“うがった見方”の例文をご紹介します。

・世の中の動きをうがった物の見方は、同世代の評論家の中でも傑出している。

うがった見方ができるように努力が必要だ。

・江戸時代の後期には、世相をうがった見方をする作家が人気を集めていた。

「うがった見方」を言い換えると?類語は?

「うがった見方」を言い換えると?類語は?

“うがった見方”と類似した表現をご紹介します。

(1)「核心を突く」

「核心を突く」は、物事の本質的な部分を鋭く指摘すること。

【例文】

・彼女の指摘は、組織が抱える問題の核心を突いていた。

(2)「本質をついた見方」

物事を構成する根本的な要素を見抜くことを表す際に“本質をついた見方”という言葉を用います。

【例文】

・部長はいつも本質をついた見方をする。

(3)「的を射る」

「的を射る」(読み方:まとをいる)は、物事の肝心な点を的確にとらえること。

【例文】

・彼の質問は、的を射ている。

(4)「端的」

“端的”(読み方:たんてき)は、要点だけをすばやくとらえる様子。

【例文】
・現在の社会情勢を端的に表現した作品ですね。

 

今回は、国語講師の吉田裕子さんに“うがった見方”という表現について解説していただきました。

“うがった見方”という表現については、相手がどのような意味で使っているのか文脈から判断をする必要があります。本来の意味もあわせて覚えておくと、コミュニケーションの齟齬を防ぐことができるのではないでしょうか。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)。東京大学卒業。

【参考】

平成23年度「国語に関する世論調査」

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