「小春日和」の意味とは?
null皆さんは“小春日和”(読み方:こはるびより)は、どちらの時期を表す言葉だと思いますか?
- 初冬の頃の、穏やかで暖かな天気
- 春先の頃の、穏やかで暖かな天気
正解は1。初冬の頃の、春のように穏やかで温かい気候の日を表す言葉ですが、文化庁が過去に行った「国語に関する世論調査」では、約4割が“小春日和”を春先の気候と回答していました。
“小春”という言葉から春先をイメージする人が多いようですが、“小春”とは旧暦の10月の呼び名。現在の暦では10月下旬~12月上旬頃を指します。“日和”は、空模様や天候のことです。晴れて良い天気という意味もあります。
正確には、立冬(11月7日~8日)を過ぎてからの気候となりますが、日常会話の中では、そこまで厳密には捉えず、11月頃のうららかな日を表す際に使われています。
「小春日和」の例文は?
「小春日和」の例文は?“小春日和”を使った例文をご紹介します。
・小春日和が続いていたかと思っていたら急に寒くなりました。
・勤労感謝の日は、穏やかな小春日和でしたね。
・小春日和の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
・今日は小春日和だったので、並木通りのイチョウを観賞してきました。
「小春日和」を使うときの注意点は?
null”小春日和”には“春”という言葉が含まれているのですが、初冬の季語です。以下のような使い方には注意しましょう。
【NG例文】
・今日は、満開の桜が美しい小春日和ですね。
→“小春日和”は、春の気候を表す言葉ではない。例文では“お花見日和”“行楽日和”などの表現であれば可。
「小春日和」を英語で言うと「Indian summer」?
皆さんのお手元の和英辞典で”小春日和”を調べると“Indian summer(インディアンサマー)”という言葉が表記されていると思います。
一説ではヨーロッパの入植者が北米の気候を表す際に使い始めたと言われており、“小春日和”と同様に初冬の穏やかな1日を指す言葉です。
しかし、近年はアメリカの先住民の呼称は“Indian”ではなく “Native American(ネイティブアメリカン)”“American Indian(アメリカンインディアン)”などの言葉が使われるようになっており、“Indian summer”という表現は不適切だという声もあります。
「小春日和」と関連した言葉は?
null先述したように、“小春”は旧暦の10月(現在の11月頃)の言葉です。この時期の気候を表す言葉としては、以下の表現もあります。
(1)「小春日」
“小春日”(読み方:こはるび)は、“小春日和”と同様に、初冬の暖かい日のことを指す言葉です。冬の季語として俳句の中でも使われています。
【例文】
・11月の小春日に、娘の七五三のお参りをしましたので、写真を送付します。
(2)「小春空」
“小春空”(読み方:こはるぞら)は、初冬の頃のうららかな空のこと。他にも初冬の穏やかな海を表す“小春凪”(読み方:こはるなぎ)などの言葉もあります。
【例文】
・今日は小春空の穏やかな日ですが、明日は雨が降るそうですよ。
(3)「小六月」
“小六月”(読み方:ころくがつ)は、“小春”と同様に陰暦の10月(現在の11月頃)の呼び名です。晩秋の時期を表す言葉として、俳句や手紙の中で使われています。
【例文】
・もう11月なのに汗ばむほどの天気で、小六月という言葉がしっくりきますね。
今回は、“小春日和”という言葉について解説していただきました。
地球規模の気候変動により、日本でも秋の穏やかな1日は貴重になっています。11月頃のうららかな日に“小春日和”という表現を使ってみてはいかがでしょうか。
取材・文/北川和子
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。