「青田買い」の意味とは?どんなときに使う?
「青田買い」の意味とは?どんなときに使う?“青田買い”(読み方:あおたがい)は、稲が熟していないうちに田の収穫量をあらかじめ見越して買い取ることを表す言葉です。“青田”は、青々とした成熟前の稲が茂った田のこと。
そこから転じて、企業側が一般的な就職活動のスタート時期よりも早いうちから優秀な人材を確保するために動くことを “青田買い”という言葉で表すようになっています。
おもに人材採用の場面で使われていますが、しばしば教育機関が優秀な学生を募るための早期の取り組みについても“青田買い”という言葉で評するケースが見受けられます。
「青田買い」の使い方の注意点は?「青田刈り」との違いは?
「青田買い」の使い方の注意点は?「青田刈り」との違いは?“青田買い”という言葉を“青田刈り”と間違って使っているケースが見受けられます。
平成26年度に文化庁が行った「国語に関する世論調査」では「企業が学生を早い時期に採用すること」を意味する言葉として31.9%の回答者は、“青田刈り”を選択していました。
成熟前の青々と茂った稲を“刈って”しまっては、稲穂を収穫できなくなってしまいますから、“青田刈り”は、採用の現場で使うのに適した言葉ではありません。
一説では戦国時代に敵の食糧源を断つ“兵糧攻め”の方法として、敵地で収穫前の稲を“刈る”という行為が行われていたと言われており、“青田刈り”には物騒なイメージも伴います。
とはいえ、近年、新卒採用の市場においては、
いずれにせよ、正しくは“青田買い”ですのでご注意を。
「青田買い」の例文は?
「青田買い」の例文は?“青田買い”の例文をご紹介します。
・優秀な人材を早期に確保するためにいわゆる「青田買い」が行われている。
・思い切って青田買いをしたが、思惑通りにはいかなかった。
・「露骨な青田買いをしない」という企業間の紳士協定は、形骸化しつつある。
・近年では、インターンシップが青田買いにつながっているという指摘がある。
「青田買い」を言い換えると?類語は?
「青田買い」を言い換えると?類語は?続いて“青田買い”と類似した文脈で使われる言葉をご紹介します。
(1)「唾をつける」
“唾をつける”(読み方:つばをつける)は、他人に取られないように前もって手を打つこと。少々ネガティブな文脈で使われることの多い慣用句です。
【例文】
・他社に先駆けて唾をつけておこうという思惑が見え隠れするやり方だ。
(2)「先行投資」
“先行投資”(読み方:せんこうとうし)は、将来を見込んで資金・時間・労力を投入すること。採用や人材戦略の現場においても、将来のために行う活動を“先行投資”と呼ぶことがあります。
【例文】
・組織の多様性を実現するためには、先行投資が必要だ。
(3)「将来性を買う」
採用の現場では、将来の可能性や成長に期待できる人材に対して使われることがある表現です。
【例文】
・社長は、ユニークな経歴を持つ彼の将来性を買って採用を決めたようだ。
(4)「逆求人」
新卒の就職活動は学生が企業にアプローチをするのが一般的ですが
【例文】
・「逆求人」は、ダイレクトリクルーティングの一種だと言われている。
以上、今回は“青田買い”という言葉をご紹介しました。
これから豊かな稲穂が実る“青田”を刈り取ってしまう“青田刈り”という言葉を間違って使うことのないよう、気をつけましょう。
取材・文/北川和子
【参考】
国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。