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「敷居が高い」は「気軽に行けない格式」という意味ではなかった…本来の意味は?正答率29%【間違いやすい日本語#11】

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「敷居が高い」という慣用句をどのような場面で使っていますか? 今回は「敷居が高い」の意味や注意点について、お届けします。

解説していただいたのは『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「敷居が高い」の意味とは?

「敷居が高い」はどちらの意味だと思いますか?

  1. 相手に不義理などをしてしまい、行きにくい
  2. 高級すぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい

正解は「1」。

“敷居”とは、門の内と外を区切るために敷く横木。家に入ることを慣用句で「敷居をまたぐ」といい、相手に罪悪感があって敷居をまたぐことができない心境を「敷居が高い」という言葉で表します。

しかし、令和元年度の「国語に関する世論調査」において、上記の問題の正答率は29%と極めて低くなっています。

特に20~30代の8割超は「高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい」という意味を選択しています。

近年では罪悪感のニュアンスが薄れ、「気軽に行けない」の意味合いが強くなっています。

例えば、高級店や格式の高い家など、気軽に行けない場所を「敷居が高い」という言葉で表す場面が増えています。本来の意味とは異なっていますが「あの店は、高級すぎて敷居が高い」という表現は、すでに広く使われるようになっています。

「敷居が高い」の使い方の注意点は?

「敷居が高い」は、義理を欠いたことで相手の家に行きにくいことを表す言葉ですが、先述したように「あの店は、高級すぎて敷居が高い」という使い方が広がっています。本来は誤用ですが、すでに日常会話で広く使われているのが実情です。

そうはいっても、自分の店や家の長所を強調するために使う際には注意が必要です。

特に不特定多数の人が見ている場所で、以下のような使い方をするのは避けた方がよいでしょう。「あの店の人は言葉を知らない」と思う人もいるかもしれません。

【要注意例文】

・(自分の店を指して)決して敷居の高いお店ではありません。気軽にご来店ください。
本来の意味を踏まえると、集客用の言葉としては適切ではない。「決して格式の高い店ではありません」「緊張せずに来ていただけるお店です」などがよいでしょう。

「敷居が高い」の例文は?

「敷居が高い」の例文をご紹介します。

・長年連絡を絶っていたので、今さら訪問するのは敷居が高い

・お祝いを伝えたいところだが、彼の家は敷居が高くなっている。

本来の意味とは異なりますが、以下のように「高級・上品すぎて入りにくい」の意で広く使われています。

・あのお店は1人で行くには敷居が高いですよね。

・ずいぶん敷居が高そうな外観ですね。

「敷居が高い」を言い換えると?類語は?

「敷居が高い」の言い換え表現をご紹介します。

本来の意味が正しく伝わるのか不安がある場合には、類似の意味を持つ言い換え表現を使うことをおすすめします。

(1)「合わせる顔がない」

申し訳なくて、その人の前に出られないこと。こちら側に非があり、相手に顔向けできないときに使う表現です。

【例文】

・私のミスで先方に迷惑をかけてしまったので、今日は合わせる顔がありません

(2) 「ばつが悪い」

体裁が悪く、気まずい思いを表す言葉です。

【例文】

・クレームの電話を入れた後に、自社のミスだったことが判明したので、今日の打ち合わせはばつが悪かったです。

(3) 「面目ない」

“面目”(読み方:めんぼく)は、人に合わせる顔、世間に対する名誉や体面のこと。「面目ない」は、恥ずかしくて合わせる顔がないこと。「面目もない」「面目がない」という言い方をすることもあります。

【例文】

・いつも助けてもらうばかりで、面目ありません

(4)「門を塞ぐ」

「門を塞ぐ」(読み方:かどをふさぐ)は、不義理をして、その家を訪ねることが恥ずかしくなること。少々古風な表現ですが、書き言葉で使われることがあります。

【例文】

・すっかりご無沙汰してしまい、門を塞いだ状態になっている。

 

今回は、国語講師の吉田裕子さんに「敷居が高い」という慣用句について解説していただきました。

文脈に応じて、どのような意味で使われているのか推測すると、コミュニケーションの齟齬が生じにくいのではないでしょうか。

 

取材・文/北川和子

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【参考】

令和元年度「国語に関する世論調査」の結果の概要 – 文化庁

プロフィール

吉田裕子
吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)。東京大学卒業。

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