「ご健勝」の意味とは?
null“ご健勝”は、健康で元気なこと。尊敬の意味を添える接頭語“ご”(御)をつけて、相手の健康を祈るために使います。
「ご健勝」はビジネスシーンでどう使う?例文は?目上の相手に使える?
null“ご健勝”は、ビジネスシーンにおいては、以下のような場面で使われています。
(1)手紙の時候の挨拶
手紙の冒頭の一文の中で使われる表現です。
【例文】
・〇〇様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
・皆さま様におかれましては、ますますご健勝のことと存じます。
(2)メールや手紙の締めの挨拶
続いていていたメールのやりとりが一旦終わる際の締めの挨拶として使うこともあります。
【例文】
・今回の件では、本当にお世話になりました。このようなご時世でお互い大変な1年となりましたが、〇〇様のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
(3)乾杯の挨拶
乾杯の直前の一言でも使われています。
【例文】
・皆さまのご多幸とご健勝を祈って、乾杯。
乾杯の挨拶を除いては、いずれも書き言葉の中で使います。目上の相手に対して使うことの多い言葉です。
私生活ではどんなシーンで使う?
私生活においては、手紙の時候の挨拶のほか、PTAなどの地域の組織から配る書類の冒頭で先にあげた例文のような“ご健勝”が使われています。
「ご健勝」と「ご多幸」の違いは?
null「『ご多幸』を使わない方がいい相手は?意味やNG例とは…」で解説しましたが、例文でもご紹介した通り、“ご多幸”と“ご健勝”はセットで使われることがあります。
2つの単語の意味は異なり、“ご多幸”はたくさんの幸せ、“ご健勝”は元気で健康であることを指します。
「ご健勝」の使い方の注意点やNG使用例は?
null先述したように“健勝”は、健康であること。人に対して使う言葉であって、組織に対しては使いません。例えば“御社のご健勝”とは言いませんのでご注意を。
【NG例】
御社のますますのご健勝をお祈り申し上げます。
→組織に対して“ご健勝”は使わない。この場合は“ご発展”など。
“ご健勝”は文語体で使われる言葉で、日常会話ではほとんど使われていません。また、会話や日常のメールにおいては、「ご健勝をお祈りします」よりも「ご自愛ください」といった表現のほうがよく使われています。
「ご健勝」を言い換えると?
null続いて“ご健勝”の言い換え表現をご紹介します。
(1)「ご清祥」
“ご清祥”は相手が元気でめでたく暮らしていることをいう言葉。個人に向けた書状の中で用いる表現です。
【例文】
・時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
(2)「ご清栄」
“ご清栄”は清らかに栄えることを指し、相手の健康と繁栄を祈って使う言葉です。組織に対しても個人に対しても使うことができます。書状の中で用いる表現です。
【例文】
・拝啓 ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
(3)「ご発展」
会社や組織に対して使う場合には“ご発展”を用います。個人に対しては使いません。
【例文】
・貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます。
・皆さまのご多幸と〇〇商事の発展を祈って。乾杯。
(4)「ご多幸」
“ご多幸”は、たくさんの幸せ。相手の幸せを祈って使います。
【例文】
・皆さまのますますのご多幸をお祈り申し上げます。
今回は“ご健勝”の意味や使い方について国語講師の吉田裕子さんに解説して頂きました。
時節柄、なかなか会うことができない相手の健康を祈る機会が増えているのはないでしょうか。ぜひ使い方を覚えておきましょう。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。