今回は、“感慨深い”の意味や使い方、言い換え表現を解説します。
お話をうかがったのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。“感慨深い”という言葉について解説して頂きました。
「感慨深い」の意味とは?
null“感慨深い”(かんがいぶかい)とは、物事に深く感じて心を動かすこと。
感情にはさまざまなものがありますが、“感慨深い”と言ったときには、喜怒哀楽の中の”喜”の感情を示すために使われる場面が多く見られます。
大きな喜び、じわじわとこみあげる喜び、泣けるような感動、しみじみとした感動など、いずれも深く感じ入ったときの心の状態を表すときに使います。
「感慨深い」はどんなときに使うといい?
nullビジネスシーンにおいては、何かを達成したとき、成功したとき、長くがんばってきたことが形になったときなどの喜びや感動を伝えるときに使われています。
単に「うれしいです」という表現では幼稚に聞こえてしまうような場面で「感慨深いものがあります」「感慨深いです」という言葉を選ぶことで、落ち着きのある表現となります。そのため、目上の相手に感動や喜びを伝えるときや、大勢の聴衆の前でスピーチをするときにも使われています。
私生活においては、子どもの成長の節目や、努力が結実したときの喜びを表すとき、深く関わってきた相手と喜びを共有するときなどに使うことがあります。
「感慨深い」の例文は?
nullそれでは“感慨深い”を用いた例文を通じて使い方をイメージしていきましょう。
・入社してから20年が経つとは、感慨深いものがあります。
・彼のプレゼンテーションは素晴らしく、指導社員を務めた自分にとって感慨深いものがありました。
・共に助け合うことで本プロジェクトを成功させることができ、感慨深いです。
・いよいよ下のお子さんが小学校卒業ということで、感慨深いのではないですか。
「感慨深い」の使い方の注意点は?目上の人にも使える?
null“感慨深い”は、他の人がうまくいったことへの喜びを表すためにも使うことができますが、目上の相手の成功や功績に対して使う場合には注意が必要です。
例えば、以下のような例文から具体的な場面を想像してみてください。
【気を付けたい表現】
・部長がご栄転とは、じつに感慨深いですね。
同期や後輩など、成長を見守ってきた相手や、苦楽を共にした相手に感情移入をしたときには“感慨深い”を使っても問題はありません。一方で、目上の相手が成功したときに“感慨深い”を使うと、相手が積み重ねてきた努力や苦労をさも自分がわかっているようなニュアンスを含んでしまうことがあります。
相手によっては違和感を覚える可能性もありますので、
「感慨深い」を言い換えると?
null続いて“感慨深い”の類語や言い換え表現をチェックしていきましょう。
(1)「感無量」
言葉で言い表すことができないくらい、深く身にしみて感ずること。“感慨無量”とも言います。“感慨深い”と同じように使うことができる言葉です。
【例文】
・ここまでやってくることができて感無量です。
(2)「感極まる」
感激が極限に達すること。強い感動を表すときに使う表現です。
【例文】
・結果が発表されたとき、感極まってうまく言葉が出てきませんでした。
(3)「心に染みわたる」
相手の言動に心を動かされたことを表す言葉です。
【例文】
・励ましのお言葉が心に染みわたります。
(4)「感激」
強い感動を表す言葉として、あらゆる場面で使うことができます。
【例文】
・先日は心のこもったお手紙を頂戴し、感激しております。
(5)「目頭が熱くなる」
胸が熱くなって涙が浮かんでくる様子。感動や共感から涙を禁じ得ないときに使うことができます。
【例文】
・お話を伺い、わたしまで目頭が熱くなる思いです。
今回は国語講師の吉田裕子さんに“感慨深い”の使い方について解説して頂きました。
深い喜びや感動を伝える場面に備えて覚えておくと役に立つのではないでしょうか。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。