お話をうかがったのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。
“手前味噌”の意味や使い方について解説して頂きました。
「手前味噌」の意味とは?
null“手前味噌”は、自分で作った味噌のこと。
自家製の味噌の味を自慢するという意味から生じ、現在は“自分のことを誇ること”“自慢すること”という意味で使われています。
「手前味噌」はどんなシーンで使う?目上の相手に使っても大丈夫?
nullビジネスシーンにおいて、“手前味噌”は取引先の相手に対して自社の商品やサービス、社員をほめるときなどに使われています。
謙虚さが好まれる日本では、自社の商品やサービスを手放しにほめることに対して、決まりの悪さを感じるときもあるのではないでしょうか。
そんなとき、“手前味噌ですが”“手前味噌ではございますが”というふうに前置きとして使うことで、自慢になってしまっていると自覚している点も含めて伝えることが
また、相手から自分の会社の商品をほめられたときの返答の中で「手前味噌ですが、これは本当におすすめですよ」と答えることで、謙遜し過ぎず、かといって自慢になり過ぎず、
プライベートにおいては、自分の子どもや家族など、
「手前味噌」の例文は?
nullそれでは、例文を通じて“手前味噌”の使い方をチェックしていきましょう。
・手前味噌ながら、新商品には自信があります。
・手前味噌ではありますが、弊社のスタッフの働きぶりには目を見張るものがあります。
・手前味噌で恐縮ですが、後任は経験豊富な人材ですのでご安心ください。
・(身内がほめられたとき)手前味噌ですが、家でもピアノの練習に打ち込んでいます。
「手前味噌」の使い方の注意点は?
null“手前味噌”という言葉をつければ、どんな自慢をしていいわけではありません。
内心自信満々なのがにじみ出てしまうと、“手前味噌”
【NG使用例】
・手前味噌ですが、私は長年研究畑を歩んできたので、商品のことは彼よりも心得ているつもりです。
→謙虚さを示すはずの“手前味噌”ですが、
「手前味噌」を言い換えると?
null続いて、“手前味噌”の言い換え表現をご紹介します。
(1)「自画自賛」
“手前味噌”と同様に、自分や、自分に関係の深いものをほめるときに使います。ただし、“手前味噌”とは異なり、自分と同じ組織に属する人を指して「自画自賛ですが、彼は優秀です」とは言いませんのでご注意を。
【例文】
・自画自賛になりますが、この新商品は逸品です。
(2)「自慢」
“手前味噌”と同様の意味を持ちますが、より平易な表現なので、幅広い場面で使われています。
【例文】
・自慢のように聞こえてしまうかもしれませんが、本件は弊社が手がけた企画です。
(3)「うぬぼれ」
“うぬぼれ”は、自分で自分をすぐれていると思うこと。ビジネスシーンでは、自社の商品などをほめるときの前置きの中で使うことがあります。
【例文】
・うぬぼれかもしれませんが、かつてない自信作です。
今回は、国語講師の吉田裕子さんに“手前味噌”の使い方を解説して頂きました。
謙遜すべき場面であることを心得ながらも、自分に関係の深いものをほめたり立てたりするときに使う“
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。