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失礼にならない表現は?「お手すきの際に」の意味と使い方を解説【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#17】

相手に何かお願いするときに「ヒマなときにお願いします」とは言いにくいものです。でも、同じような意味でも別の伝え方があります。それが“お手すきの際に”という言い方です。今回は“お手すきの際に”の使い方やNG使用例、類似の言い換え表現についてお届けします。

解説して頂いたのは、『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「お手すきの際に」の意味とは?「暇」と「手すき」の違いは?

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“手すき”は、仕事が落ち着いていて手が空いていることを意味します。“お手すきの際に”と言ったときには、 “(相手の)手が空いたときに”という意味になります。

本来、職場では常に何かしらに励んでいるものです。“暇”という言葉は、時間が余ってぼんやりしているイメージを伴うので、相手に対して使うことは少々はばかられますよね。一方で“お手すき”という言葉なら、仕事に切れ目ができて少し余裕ができたというニュアンスなので、失礼な印象になりにくく、依頼の場面でよく使われています。

「お手すきの際に」はどんなシーンで使う?目上の相手も使える?

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ビジネスシーンにおいて、“お手すきの際に”は依頼の場面で頻繁に使われています。目上の相手に対しても使うことができる表現です。

以下のような場面で使われています。

【想定される場面】

・それほど急ぎではない仕事を依頼するとき

・相手が仕掛中の仕事がひと段落したら手伝って欲しいとき

・メールや電話の返信を依頼するとき

・書類に目を通して欲しいとき

・顧客に書類の記入・返信をお願いするとき…etc.

いずれも急ぎではないものの、手が空いたときに着手してほしいという依頼のときに使います。「仕事の優先度としてはあまり高くないもの」と考えておいたほうがいいでしょう。

私生活のシーンにおいては、地域組織の役員活動などで、何か頼みごとをするときに使うことができます。

「お手すきの際に」の例文は?

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それでは、“お手すきの際に”の例文を通じて、使い方をイメージしてみましょう。

お手すきの際に書類のご確認をお願いします。

お手すきの際で結構ですので、ご連絡ください。

お手すきの際にでも、ご返信を頂けたら幸いです。

お手すきの際に来週の会議資料に御目通しのほどお願い申し上げます。

「お手すきの際に」の使い方の注意点やNG例は?

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“お手すきの際に”の使い方の注意点は2点あります。

(1) 自分を主語にして使わない

“お手すき”には、相手を敬う接頭語がついています。自分が主語の文章の中では使うことはありませんのでご注意ください。

【NG例文】

・お手すきの際に確認いたしますので、もう少々お待ちください。

(2)急ぎの依頼には使わない

“お手すきの際に”は、なるべく急いで着手して欲しい案件を依頼するときには適していません。

【NG例文】

・お手すきの際でけっこうですので、なるべく早く返信を頂きますようお願します。

→急ぎの際には“お手すきの際に”は使わない

「お手すきの際にお願いします」とメールがきたらなんと返信する?

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もし「お手すきの際にお願いします」と相手からメールがきたら、「後ほど返信(確認)いたします」といった文言とともに返信します。「来週前半に郵送いたします」などと、着手時期を明記するのもいいでしょう。

注意したいのが、「手が空いたらやりますね」と返信してしまうケースです。とらえ方によっては相手の依頼を後回しにしているように聞こえるかもしれません。

「お手すきの際に」を言い換えると?

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続いて“お手すきの際に”の言い換え表現をご紹介します。

(1)「お時間のあるときに」

“お時間のあるときに”は、“お手すきの際に”よりも平易な表現なので、話し言葉でもよく使われています。

【例文】

お時間のあるときに確認して頂けると幸いです。

(2)「ご都合のよいときに」

相手のスケジュールに配慮しながら依頼をするとき、日程調整をするときに用います。

【例文】

・来週、〇〇様のご都合のよいときにお伺いしたいと思っております。

(3)「もし余裕がありましたら」

相手に強制はしないものの、できればお願いしたいという優先度の依頼をするときに使う表現です。

【例文】

もし余裕がありましたら、事前に資料に目を通して頂けますと、当日のお話がスムーズに進むかと思います。

 

今回は、国語講師の吉田裕子さんに“お手すきの際に”の使い方について解説して頂きました。

依頼をするときに頻出する言葉なので、使い方を覚えておくと役立つのではないでしょうか。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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