クロード・モネってどんな人?
nullパリに生まれ、セーヌ川流域の村・ジヴェルニーを終焉の地とするまで、さまざまな場所へ移り住み、旅をしたモネ。それぞれの土地の風景や、人々との出会いと別れが、その画業に大きな影響を与えています。
展覧会を楽しむために、モネの生涯を簡単に知っておくのがおすすめです。86年の人生をたどりながら、注目の作品をクローズアップしてみましょう。
風景画の楽しさに目覚めた少年時代
クロード・モネは、1840年にパリで生まれ、5歳からノルマンディー地方の海辺の町、ル・アーヴルで暮らしました。
子どもの頃から絵を描くことが得意で、18歳のときに画家のウジェーヌ・ブーダンから戸外での制作をすすめられます。
輝く太陽の光や、時間によって移ろいゆく風景を描くことの楽しさに目覚めたのは、この頃だったようです。
19歳からパリへ、20代で画家の登竜門「サロン」に挑戦!
本格的な絵の勉強をするため、19歳からパリで暮らし、多くの芸術家たちと出会います。兵役を経て体調を崩したモネは、ル・アーヴルに戻った後、22歳で再びパリへ。
この当時、画家が世間の評価を得るために、大きな力をもっていたのが公募展「サロン」でした。25歳を迎える1865年、サロンに初出品した2作品が入選し、華やかにデビュー。その翌年も2作品が入選します。
しかし、1867年からは相次いで落選……。
落胆するモネですが、このサロン落選が、「印象派」の画家としてスタートするきっかけとなったのです。
注目の作品:『昼食』(1868-69年)
nullそれでは「モネ 連作の情景」の見どころを紹介していきます。最初の展示室で、ひときわ目を引く作品が『昼食』(1868-69年、写真左)。
縦長の大きな画面に描かれているモチーフやタッチに、「モネって、こんな作品も描いていたんだ」と思わず立ち止まってしまいました。
後に結婚するカミーユと息子のジャンが室内で昼食をとる様子が描かれ、使われている絵の具のトーンは暗め。
自然の風景を明るくやわらかな色彩で描いた、モネ作品のイメージとはかなり異なっています。
サロン落選が続くなか、モネが「過去の芸術と訣別し、本格的に印象主義へ向かう」ターニングポイントになったのが、この『昼食』の落選だったそうです。日本初公開の作品なので、ぜひ注目してみてください。
30代半ば、「第1回印象派展」を開催!
『昼食』がサロンに落選した1870年、30歳になったモネは、正式にカミーユと結婚。暮らしは貧しく、友人にお金を無心することもあったそうです。
同年に普仏戦争がはじまると、兵役を逃れるために家族でロンドンへ。この地で出会った画商のポール・デュラン=リュエルが、後年までモネを支えてくれる存在となりました。
そして1874年、ともにサロン落選を経験した画家仲間のカミーユ・ピサロ、ピエール=オーギュスト・ルノワールらとともに、「第1回印象派展」をパリで開催します。
じつは、この展覧会の評判はひどいものでした。なかでも、モネが出品した作品『印象、日の出』に対して、批評家は「描きかけの壁紙のほうがましだ」と新聞で酷評。
「印象派」というグループ名は、そんな皮肉から誕生したのです。
注目の作品:『モネのアトリエ舟』(1874年)
null今回の展覧会は、1874年の「第1回印象派展」から、150年を迎えることを記念して開催されるもの。
「印象派」という新たな扉を開いたモネは、どんな絵を描こうとしていたのでしょうか。
この頃、セーヌ川に浮かべた小舟をアトリエにして、水辺の風景を描いた作品も多く残しています。会場には、その舟を捉えた『モネのアトリエ舟』(1874年、写真左)も。
四季の移り変わりや太陽の傾きを感じながら、舟に乗って「描きたい風景」を自由に追い求める、モネのあくなき探求心を見て取ることができます。
40代、ジヴェルニーの家と風景に一目ぼれ
30代では、ロンドン、パリ近郊のアルジャントゥイユ、パリ、ヴェトゥイユなど各地を転々としたモネ。その間、妻カミーユが次男ミシェルを産んだ後に体調を崩し、32歳の若さで亡くなりました。
悲しみの中でも絵筆を握り続け、定期的に購入してくれる画商や、作品を評価してくれる人たちが少しずつ増えていきました。
やがて定住してじっくりと絵を描きたいと思うようになったモネが、セーヌ川沿いを汽車で走っていたとき、ピンク色の可愛らしい家を車窓に見つけます。
そのジヴェルニーの家をやがて終の棲家とし、古い家と庭を手入れし、戸外に出かけて絵を描く生活の拠点としました。
注目の作品:「積みわら」連作
nullジヴェルニーの自宅付近でモネの目を捉えたのが、秋の風物詩「積みわら」でした。
朝、昼、夕方と太陽の光が変わると、その姿が違って見えます。そのことに惹かれて積みわらを描き続け、これがモネの代名詞である「連作」の始まりとなったのです。
明るい日差しの下で描かれた『ジヴェルニーの積みわら』(写真右)は、緑の部分が入り混じり、ふさふさと豊かな質感まで感じ取れる一枚です。
いっぽう、『積みわら、雪の効果』では、積みわらがうっすらと雪をまとい、長い影を連れ、静けさに包まれた空気感をたたえています。
注目の作品:「ウォータールー橋」連作
nullモネが好んだ連作モチーフのひとつに「ウォータールー橋」があり、繰り返しロンドンを訪れて描きました。
曇りの日や、晴れた日の日没など、橋の風景をほぼ同じ構図で描いた作品が並んでいます。絵の前に立っていると、まるで自分がロンドンにいてテムズ川を望み、時間の経過を体験しているかのような面白さがあります。
ぜひ作品を近くで観て、同じモチーフの時間帯、季節による表情の違いを、絵の具のタッチと色使いで巧みに表現したモネの「連作」の手法を感じてみてください。
50代から晩年まで、「睡蓮」を描き続ける
モネといえば「睡蓮」。ジヴェルニーの庭を愛したモネは、さらに庭を広げ、池を造って睡蓮を育て、日本の浮世絵に影響を受けた太鼓橋を架け、周囲にたくさんの植物を植えました。
「睡蓮」は、50代から約30年続くテーマとなり、白内障を患いながらも86歳で亡くなるまで、自宅の庭とアトリエで睡蓮を描き続けることに専念したのです。
注目の作品:「睡蓮」
null『睡蓮の池』(写真左)は131×197cmの大作で、緑、紫、青、白、茶などが入り混じった色彩から、光を受けて輝き、ゆらめく水面の様子が伝わってきます。
そのほか、柳の映り込んだ池、緑に囲まれた池の隅っこなど、池をさまざまな視点で捉えた作品も。
自らの美意識で造り上げた庭と池を眺め、太陽の光と追いかけっこを楽しむ生活は、遠くへ出かけなくても日々さまざまな発見があったのでしょう。そんなモネの生き方を垣間見ることができます。
可愛いオリジナルグッズ、コラボグッズも要チェック
null展覧会を記念したオリジナルグッズのほか、各ブランドとのコラボグッズも多彩にそろい、目が離せません。
コミック『PEANUTS』でモネについて描かれたエピソードが登場するという縁から、「PEANUTS meets MONET」が誕生。
頭の上に睡蓮とウッドストックをのせたスヌーピーのぬいぐるみ(大4,180円、マスコット1,980円)や「コスメキッチン ハンドクリーム&リップクリームセット(全2種)」(各3,300円)など、とってもキュートです。
ユナイテッドアローズとコラボした、Tシャツ、エコバッグ(写真左、3,960円)など、デイリーユースしたいおしゃれなグッズも。
お気に入りをじっくり探してみてくださいね。
※価格は全て税込です
※商品の数には限りがあります
「印象派」と呼ばれる前の作品から、晩年も描き続けた「睡蓮」まで、国内外40館以上から60点を超えるクロード・モネの作品が東京・上野に集まる機会をお見逃しなく。
刻一刻と変化する風景に向き合い、独特の筆致でキャンバスに表現したモネの画業を、ぜひ実物を目にして味わってみてはいかがでしょうか。子どもにとってもモネの作品が目の前で見られるいい機会となるはず。芸術の秋に、親子で鑑賞してみてはいかがでしょうか。
【展覧会情報】
展覧会名:モネ 連作の情景
会期:開催中~2024年1月28日(日)
開館時間:午前9時〜午後5時
金・土・祝日は午後7時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:12月31日(日)、2024年1月1日(月・祝)
会場:上野の森美術館
ホームページ:www.monet2023.jp
観覧料:
平日(月〜金)一般 2,800円、大学・専門学校・高校生 1,600円、中学・小学生 1,000円
土・日・祝日 一般 3,000円、大学・専門学校・高校生 1,800円、中学・小学生 1,200円
※日時指定予約推奨。会期中は、上野の森美術館チケット窓口にて当日券を販売します。混雑時は入場をお待ちいただく場合がございます
※最新情報は公式HPでご確認ください
ライター、J.S.A.ワインエキスパート。札幌の編集プロダクションに勤務し、北海道の食・旅・人を取材。夫の転勤で上京後、フリーでライティングや書籍の編集補助に携わる。小学生のころから料理、生活、インテリアの本が好きで、少ない小遣いで「憧れに近づく」ために工夫し、大学では芸術学を専攻。等身大の衣食住をいかに美しく快適に楽しむか、ずっと大切にしてきたテーマを執筆に生かしたいです。小学生のひとり息子は鉄道と歴史の大ファン。