家族みんなが片付けられる「収納の仕組み」を考えよう
null水谷さんは、7才(長女)、5才(長男)、3才(次男)の3人の子どもたちと夫の5人暮らし。3人の子育てをしながらも、スッキリと整った暮らしをしている水谷さん。キッチン収納術を紹介した第1回(『元・無印良品の整理収納アドバイザー発「使う回数で1軍と2軍に分ける」収納のルール』)も大好評でした。
そんな水谷さんですが、第1子出産後は慣れない育児に追われ、家事をひとりで抱え込みすぎて、うまく片付けられないストレスはピークに達していたと話してくれました。
「当時は、“母親なのに片付けられない……”と、自己嫌悪でいっぱいでした。その時に、無理して自分ひとりで抱え込まず、家族みんなが片付けられる収納について考えることを始めました。そこでたどり着いたのが、“誰でもどんな時でも、間違えようのない、収納の仕組み”を作ること。今では家族みんなが片付けられるようになったので、家事がラクになり、私の負担もグンと減りました」(以下「」内、水谷さん)
そんな水谷さんの収納ルール、ぜひ知りたいですね! 早速、チェックしてみましょう。
1:子どもが片付けやすいルールを考える
nullおもちゃを出しっ放しにする子どもたちに「片付けなさいー!!」と怒ってしまうママたちも多いと思いますが、水谷家の子どもたちはお片付けが大得意。「もうごはんだから、みんなで片付けてねー」という掛け声がかかると、さっきまで床一面に転がっていたおもちゃが見る見るうちに収納され、あっという間に片付け完了! それは驚くほどのスピードでした。
「子どもたちにとって片付けをするということは、楽しい遊びの時間が終わること。そもそも子どもたちにとって、片付けって進んでやりたいものではないんですよね。だから、少しでもストレスなく片付けてもらうにはどうしたらいいか? まずは子どもたちの動きをよく観察して、どうしたら片付けやすいのかを考えることから始めました」
そうして水谷さんが考えた収納の仕組みは、子どもたちがストレスなく片付けられる秘密がいっぱいです。
◆ぴったりよりも「すき間」がある方が片付けやすい
水谷家では、子どものおもちゃは棚とボックスを組み合わせた収納に。その際に、ぴったりサイズのものは選ばず、あえてすき間ができるようにしています。
「上部にすき間があると、子どもたちがおもちゃを上から投げ入れられます。さらにボックスを棚に戻す時に、上下の幅に余裕があるので適当にポンと戻すことができます。些細なことではありますが、こういった少しの工夫で、子どもたちがラクにお片付けできるようになるんです」
◆分類しにくいおもちゃは「いろいろボックス」へ
子どものおもちゃはいろいろな種類があるので、分類しにくいですよね。さらに、成長に合わせて、好みのおもちゃも変わっていきます。
「パッと分類できないものは、“いろいろ”と書いてあるボックスの中に入れています。お片付け中に迷ったら、とりあえず何でもこのボックスに入れればOK。これで子どもたちが迷わず片付けられるようになりました」
◆ラベリングは「誰でも読める」ことが大事!
子どものおもちゃは、成長に応じて変わりやすいので、「ラベリングは手軽にいつでも張り替えられることが大切!」と水谷さん。
「ラベルライターなどを使ってラベリングするのも素敵なのですが、ラベルを作ることのハードルが上がってしまって、いざという時に作り替えるのが面倒に……。私はそれよりも、中身が変わったらいつでも気軽に書き替えて、貼り替えられる方を優先しています」
さらにこの時に大事なのが、「みんなが読めること」。まだ文字が読めない3才の次男も読めるように、水谷さんはイラストも必ず描くそう。ラベリングは誰でも分かることが何より大事なんですね。
2:子どもの「使いやすい」を観察する
null水谷さんは「何でできないの!」とガミガミ怒る前に、まずは子どもの動きを観察して、できない理由を探ります。実はこの行為がとっても大事。
「子どもの動きを観察していると、大人の目線では決して分からない、彼らならではの使いやすさに気付くはずです。少しのすき間や見え方など、ちょっとした工夫をするだけで、グンと快適に片付けられるようになったりするんです」
ラクに片付けられるようになれば、子どもたちも片付けが嫌いじゃなくなるはず。ぜひ、子どもの動きを観察してみましょう。
◆「順手」で引き出せると、子どもでも使いやすい
水谷さんは、子どもたちの衣類はイケアの『トロファスト』に収納。3人の子どもたちに合わせて、それぞれ1棚ずつ用意しています。
これは順手で引き出せるので子どもでも使いやすく、上部にすき間があるので、上から覗くだけで何が入っているのか確認できて、子どもたちも気に入っているそう。
◆子どもの下着はあえて畳まない方が着やすい
「観察をしているうえで、子どもの下着はあえてきっちりと畳まない方が、子どもたちははきやすいことにも気付きました。畳まない方がお風呂上がりに自分で下着を出して、ササッとはけるんですね。ケースを入れてざっくり分けておけば、きれいに畳んでしまわなくても、引き出しの中でゴチャゴチャ混ざりません」
さらに、3つある棚の横の段は同じアイテムで統一すると、洗濯した衣類をスムーズに戻せるそうです。
◆ランドセルは「掛けるだけ」のラクラク収納に
水谷家では、ランドセルは棚の下にあるフックに掛けるだけ。掛けるだけだから、7才の娘さんもラクに快適に収納できています。
「ランドセルは大人が思っている以上に重たいので、帰ってきたらすぐに肩から下ろして、できるだけ負担がかからない収納にしてあげたかったんです。どうしたら負担がないか彼女の動きを観察して、低い位置のフックに掛けるだけで収納できるこのスタイルになりました」
3:「絶対」と一緒にして、忘れ物を防止!
nullなかなか直らない子どもの忘れ物。水谷さんも「長女が必ずしてしまう忘れ物があった」と話してくれました。
「娘はハンカチとティッシュをどうしても忘れやすく、私も困っていました。だからといって毎日注意をするよりも、一度彼女の行動を観察してみようと思ったんです。そして気付いたのは、忘れやすいハンカチとティッシュは見逃しやすい棚の上の方に入れていることに気付きました。
そこで、出かける前に絶対に毎日履いていく靴下と一緒に、ハンカチとティッシュを収納してみたところ、靴下を履く時に必ずティッシュとハンカチも用意して持って出かける習慣が自然と身に付いたんです。我が家ではたまたま靴下でしたが、それは何でもいいんです。忘れやすい物は、絶対に使う物と一緒に収納してみてください」
なるほど、これで自然と忘れ物を防止する習慣が身に付くんですね!
◆忘れやすい物は「ランドセル」の側に置いておく
他にもおすすめなのが、ランドセルの側に置いておくこと。
「上履きや体操着は、時々持っていくので忘れやすい。そういった物は、毎日必ず背負っていくランドセルの側に置いておくだけで、忘れることを防止できます」
4:「埋めない」から片付けやすい
null水谷家では、大人も子どももダイニングテーブルで作業をすることが多いそう。そこで、文房具や書類は「戻しやすさ」を第一に、シンプルで分かりやすい収納を心掛けていました。
なかでも編集部が注目したアイディアは、引き出しを全部「埋めないこと」。文房具を収納している棚は、通常はすべて引き出しで埋まっているのですが、水谷さんはあえて一段飛ばしで引き出しを抜いてカスタマイズしていました。
「こうすると上部にすき間ができるので、引き出しをわざわざ引き出さなくても、上から覗けば何が入っているのか一目瞭然。さらに、そのすき間から文房具をポンと投げ入れることができます。
中身が分かるので、夫から“あれどこ?”と聞かれることがなくなりました。今では夫専用の収納スペースも作り、分類は夫に任せています」
「引き出しを抜く」というワザは、無印良品のものづくりで「使いやすさ」にとことん向き合ってきた水谷さんならでは。これだけでグンと文房具の収納がラクになりそうですね。
◆子どもの文房具はざっくり分けると片付けやすい
宿題をしたり、お絵描きや工作をしたりする時は、子どもたちもダイニングテーブルに集まってきます。そこで食事の時にすぐに片付けられるよう、子ども用の文房具の収納もダイニングテーブルのすぐ近くに。
「子どもの文房具は事務用のレタートレーに入れて、放り込むだけでワンアクションで簡単に戻せるようにしています。これもぴったりした収納ではなく、空間に余裕を持つことで、ざっくり置けるから片付けやすい。これも上部にすき間があるので、引き出さなくても上から文房具を投げ入れられます。意外とこういったすき間が大事で、ちょっとしたことでグンと使いやすくなるんですよ」
以上、水谷さんの家族が片付けられる収納ルールでした。自分ひとりが片付けることを毎日繰り返していくよりも、家族みんなが片付けられる仕組みを作った方が、スッキリ片付く近道なのかもしれません。
「その時に、自分ひとりで考えるのではなく、子どもや夫にも“どう思う?”と聞くことが大切です。そうすることで、自分ひとりでは思いつかなかった意外なアイディアが生まれて、なるほどなって思うことがよくあります。
さらに、相談して決めることで、自分でこの方法に決めたのだからちゃんと片付けよう!という責任感も芽生えます。結果として、家族みんなが自分の意思で気持ちよく片付けられるようになるんです。こうすることで、お母さんたちの負担は随分ラクになるはずですよ!」
ひとりで抱え込む前に、ぜひ家族みんなで収納について考えてみてください。きっと今よりも快適に、心地よく、笑顔で過ごせるはずです。
【取材協力】
水谷妙子
整理収納アドバイザー。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業後、株式会社良品計画で『無印良品』の生活雑貨の商品企画・デザインを13年間務め、手掛けた商品は500点を超える。2018年に「家が整うと、家族も整う」というコンセプトのもと、『ものとかぞく』を起業し、雑誌やWeb、テレビなどで活躍。著書に『水谷妙子の片づく家 余計なことは何ひとつしていません。』(主婦と生活社)など。新刊『水谷妙子の取捨選択 できれば家事をしたくない私のモノ選び』(主婦の友社)を2020年11月26日に出版予定。Instagram @monotokazoku
取材・文/岸綾香