「薄焼き卵で銀杏を、にんじんで紅葉を。そんな手間ひまをかけている時間はないとおっしゃるかしら。でもね、時間は作るものなのよ」
null今から約50年前、ばぁばはサラリーマンの夫と3人の子どもを育てる専業主婦でした。その当時、ご近所の奥様たちに請われて自宅で主宰していた料理教室の評判を聞きつけた『きょうの料理』(NHK Eテレ)のプロデューサーからの依頼で、番組に出演することになったのが“料理研究家・鈴木登紀子”のはじまりです。
デビュー作は炊き込みご飯やまぜご飯などの“ご飯もの”。以来、ばぁばは季節ごとにさまざまなご飯の献立を作ってきました。お料理教室でも、献立の最後に汁椀とともに供されるご飯は、必ず彩りのあるものとなっています。
「“吹き寄せ”とは、秋の紅葉が風で吹き寄せられた様子を表した料理のこと。ですから、“吹きよせご飯”卵の黄色、にんじんの紅、そしてごぼうの枯れ色を秋の紅葉に見立てて、ご飯の上で吹き寄せるのです。
もちろん、ご飯だけでもおいしいのよ。でも、日本料理の醍醐味は目に麗しきその美しい盛り付けにあるの。よい機会ですから、型抜きや飾り付けをはお子さんに手伝わせてもいいわね。深秋のごちそうをご家族でお楽しみください」(ばぁば)
吹き寄せご飯の作り方
null材料(4人分)
米 3カップ
水 3カップ
にんじん 50g
ごぼう 50g
里いも 3個(約200g)
こんにゃく 1/3枚
油揚げ 1枚
だし 3カップ
酒 大さじ3
しょうゆ 大さじ3弱
塩 小さじ2/3
砂糖 小さじ1
(銀杏卵)
卵 1個
砂糖 小さじ2
塩 少量
(紅葉にんじん)
にんじん (もみじ型で型抜きしたもの)12枚
だし 鍋に入れたにんじんがひたひたで隠れる量
砂糖 小さじ2
塩 少量
(松葉ごぼう)
ごぼう 50g
だし 鍋にいれたごぼうがひたひたで隠れる量
しょうゆ 小さじ2
作り方
(1)米は炊く1時間以上前に手早く研いで水加減をしておく。
(2)にんじんは3cm長さの拍子木切りにする。ごぼうは皮をたわしでこすり洗いをし、包丁で縦に短めの切り目を入れてささがきにする。酢(分量外)をごく少量落とした水に放し、ささがきが終わったらざるに上げて水洗いをして、水気をよく切っておく。
(3)里いもはたわしでこすり洗いしてから天地を落とし、お尻から亀甲になるように上にむき上げる。5mm幅に切って流水の下でよく洗ってぬめりを除く。
(4)こんにゃくは水からゆで始め、煮立ってから3分ほどゆでて冷水に放す。冷めたら1cm幅で2〜3㎜厚さの短冊切りにする。
(5)油揚げは熱湯をかけて油抜きをし、縦半分に切って5〜6mm幅の短冊切りにする。
(6)吹き寄せの飾りを作る。
【銀杏卵】ボウルに卵を割り入れ、菜箸で白身をつまんでよく切り、泡立てないように溶きほぐして、漉し器などで漉す。フライパンを熱してサラダ油に浸したキッチンペーパーなどでフライパン薄く油を引き、卵を流し入れて薄焼き卵を作る。型抜きを使って銀杏の形に抜く。
【紅葉にんじん】小鍋にだし、砂糖、塩を加えて弱火にかけ、紅葉型に抜いたにんじんを加える。煮汁がなくなるまで煮てバットに空ける。
【松葉ごぼう】ごぼうは3cm長さの短冊切りにし、縦に包丁を入れて酢水に放してアク止めをする。サッと水洗いをして小鍋に移し、ひたひたのだし、しょうゆを入れて弱火にかける。汁気がなくなるまで煮てバットに空けておく。
(7)米の水をお玉ですくい出す。この時、すくい出した回数を数えておくこと。全部すくい出したら、ふたたびお玉で、すくい出した水と同じ回数分のだしを加える。酒、しょうゆ、塩、砂糖を入れ、(2)(3)(4)(5)も加えてひと混ぜしてから強火にかける。
(8)蓋がカタカタと鳴ったら30秒ほど待ってからごく弱火にし、約13分炊いて火を止め、10分蒸らす。盤台にあけ、しゃもじで大きく返しながら具材とご飯をよく合わせる。この時、ご飯を練らないように要注意。(6)の飾りを彩りよく散らしてできあがり。
PROFILE
鈴木登紀子(すずきときこ)
日本料理研究家。1923年11月に青森県八戸市に生まれる。46才で料理研究家としてデビュー。東京・武蔵野市の自宅で料理教室を主宰するかたわら、テレビ、雑誌等で広く活躍。『きょうの料理』(NHK・Eテレ)への出演は、50年近くになる。『ばぁば92年目の隠し味』(小学館)はじめ著書多数。