「国産の松茸はもう、とても庶民には手が出ません! ばぁばはカナダ産の松茸が気に入っているの」
null「鈴木登紀子料理教室」を主宰してかれこれ半世紀以上になるばぁばですが、毎年10月の献立には必ず登場してきたのが「松茸の土瓶蒸し」です。
“香りを楽しむ”という日本料理ならではの酒肴。近年は国産の松茸に代わり、中国や韓国をはじめ欧米や南米からの輸入ものが、手頃な価格でスーパーに並ぶようになりました。一方、欧米では松茸特有のあの芳香はあまり好まれないのだそうです。
「でもそのおかげで、カナダの立派な松茸を遠慮なく楽しめるのですから、ありがたいお話よね、ふふふ。
本来、松茸に限らずきのこ類はすべからく、水洗いは御法度なのですが、長旅で汚れもこびりついています。流水の下でお布巾を使い、やさしくペタペタ押さえながらきれいにしてあげてください。
小ぶりな土鍋を使って、しいたけやえのきたけ、エリンギなど旬のきのこを加えた鍋仕立てにしてもいいのよ。ケンカになりますから、松茸の配分はくれぐれも平等にね(笑い)」
松茸の土瓶蒸しの作り方
null材料(4人分)
松茸 (笠がキュッとつぼんでいて、軸に弾力があるもの)1本
紅白かまぼこ (薄切りにし縦半分に切る)8枚
鶏ささ身肉 2本
ぎんなん 12〜16個
酒 酒小さじ4
(だし汁)
かつおだし 3カップ
塩 小さじ2/3
薄口しょうゆ 少量
三つ葉 (ざく切りにして)適量
すだち (横半分に切り、絞りやすいように切り目を入れておく)2個
作り方
(1)松茸は流水の下で柔らかい布を使い、汚れを丁寧に落とす。石突きの固いところを包丁で削ぎ落として薄切りにし、酒大さじ1〜2(分量外)をふる。
(2)鶏ささ身肉は筋をとって薄いそぎ切りにし、酒少量(分量外)をふる。
(3)ぎんなんは、1個ずつかまぼこの板などにのせ、筋のところに包丁の背をポンとあてて割って殻を除く。小鍋に水少量と塩少量(分量外)を入れ、薄皮がついたままのぎんなんを加える。中火にかけ、穴あきお玉の底でぎんなんを転がし、薄皮をきれいにはがす。
(4)4つの土瓶蒸しの器に、それぞれかまぼこ2枚を敷き、松茸、鶏ささ身肉、ぎんなん、三つ葉を均等に入れてだし汁を張る。
(5)土瓶蒸しの容器を焼き網の上にのせて中火にかける。煮立ちを待って酒各小さじ1を入れて蓋をし、すだちを添えてできあがり。まずはスープを、すだちを少し絞っていただく。
PROFILE
鈴木登紀子(すずきときこ)
日本料理研究家。1923年11月に青森県八戸市に生まれる。46才で料理研究家としてデビュー。東京・武蔵野市の自宅で料理教室を主宰するかたわら、テレビ、雑誌等で広く活躍。『きょうの料理』(NHK・Eテレ)への出演は、50年近くになる。『ばぁば92年目の隠し味』(小学館)はじめ著書多数。