「ダウン」と「中わた」は何が違う?
nullどちらも軽量で動きやすく、温かい。アウトドアを楽しむ人たちはもちろん、お子さんや子育て世代にも欠かせないアイテムですよね。
「ダウン」と「中わた」。見た目は似ていますが、素材そのものが違います。
天然素材の温かさとムレにくさを生かした「ダウン」
ダウンは、水鳥の羽根と羽根の間に生えている綿毛(ダウンボール)を使用しています。つまり天然素材で、1羽から得られる量が限られるため、貴重な素材です。
温かさの理由は、ふわふわの羽毛にたっぷり空気を含むことで、ふんわりとかさ高くなり、含んだ空気が断熱保温材になるから。また、吸放湿性にもすぐれ、汗などによる衣類内のムレを呼吸するように外側へ放出。ウェアが湿気たり汗冷えしたりするのを防いでくれます。
中わたと比べると軽量な一方、濡れには弱いので、雨天やたくさん汗をかくシーンでは着るのを避けたほうが安心です。
化学繊維だから濡れても乾きやすい「中わた」
中わたに使われているのは、ポリエステルなどの化学繊維でつくった“わた”です。だから濡れても乾きやすく、天気が悪い日やスポーツなど汗をかいたりするシーンでも安心というメリットがあります。
一方、保温性を高めようとすると、中わたをたくさん入れてウェアをかさ高くする必要があり、どうしても重くなります。なるべく軽量で温かいアウターを探している場合は、ダウン素材を選ぶほうがいいかもしれません。
3つのセルフケア
null1:シーズン中も定期的に洗濯する
シーズン終わりにクリーニングへ出す方は多いでしょう。でも角南さんによると、シーズン中も定期的に洗濯したほうがよいそうです。
「最近では、インナーダウンなど薄手のアウターを、秋から春先まで着る方も増えています。自宅で洗濯可能なものは、着用頻度に合わせて手洗いしましょう。
なぜならダウンは、外気や汗などによる湿気や汚れが蓄積すると、かさ高性が損なわれます。そうすると空気を含みにくくなり、保温性も落ちてしまう。とくに首周りや袖口は皮脂汚れがつきやすく、放っておくと汚れが内側の羽毛にまで浸透してしまいます。中わたも、湿気や汚れがにおいやムレの原因になりますよ。
また、汗や皮脂汚れは時間がたつと酸化して生地の黄変を招くので、淡い色のアウターは変色する場合も。長く愛用するためにも、きれいな状態を保つことが大事です」(以下「」内、角南昌輝さん)
2:着用時は重ね着で汚れにくい工夫を
自宅で手洗いできますが、ちゃんと乾くまでには数日間干します。シーズン中、汚れたら洗うのが理想ですが、毎日のように洗うのは現実的ではありません。
「とくに首回りは汚れやすいので、ストールやネックゲイターなどをして、顔まわりがアウターに直接触れにくいようにするのもおすすめです。皮脂やファンデーションなどがつきにくくなります」
きれいな状態が保ちやすくなるのはもちろん、保温性もアップする、理にかなったセルフケアです。
3:長期保管はふっくらとたたみ、袋に収納
コンパクトになるため、つい付属の収納袋にしまいたくなりますが……?
「収納袋は、あくまでも携帯する時のためのもの。長期間着用しない場合は、ふっくらとした状態を保っておける袋に収納するのがベストです」
また、クローゼットでハンガーに吊るしておくのも、場合によっては避けたほうが安心とのこと。
「冬場に石油ストーブをお使いの場合、クローゼットなど空気がこもりがちな場所に燃焼ガスがたまり、それが生地の変色を招く場合もあります。私も、淡い色のアウターが黄変したことがありました」
自宅で手洗いする方法
null【用意するもの】
おしゃれ着用洗剤
「汚れと同じく洗剤の成分や香りも残っていると、ダウンや中わたの保温性が落ちる原因になります。また、ダウンは天然素材なので、ウールなども洗えるおしゃれ着用洗剤を、少なめに使ってください。漂白剤、柔軟剤、しみ抜き剤の使用は避けましょう」
【洗い方】
(1)洗濯できるアイテムかを確認する
「ダウンや中わたを使用したアウターにも、薄手のものから厚手のもの、様々な素材を組み合わせたものなどいろいろあります。自宅で洗濯できるかを、まず確認しましょう。
一つが、ダウンや中わたを区切る隔壁(かくへき)がステッチで止められているか。これがない、表面がフラットなものは隔壁が接着や溶着で固定されていて、セルフケアは難しいので、クリーニングなど専門店に相談してください」
「洗濯表示も確認して、洗い方をチェックします。洗濯表示は7つあり、最初の5つは家庭で洗う指標です」
(2)部分洗いをする
「生地表面のちょっとした汚れなら、部分洗いで十分です。また、汚れのひどい部分や汗をかきやすい部分は、洗濯の前に部分洗いをしましょう。洗剤を水に溶かし、スポンジやタオルに含ませて、汚れを擦り落とすように拭き取ります」
(3)押し洗いをする
「洗いおけや浴槽にぬるま湯を入れて、洗剤を入れ、ジッパーやホックをとじたウェアを軽くたたみ、空気を押し出してから浸します。ウェア全体を浸したら、押し洗いしましょう。この際、水分を含んだウェアが持ち上がらないよう注意。水の重みで生地や縫い糸の破損につながる場合があります」
(4)すすぐ
「洗いおけをゆっくり傾けるか、浴槽の栓を抜いて、ウェア内の水分が自然に抜けるのを待ちます」
「おおよそ水分が抜けたら、ウェアを軽く巻き上げ、残りの水分を押し出します」
「もう一度きれいな水にウェアを浸し、同じ要領で、水が濁らなくなるまですすぎを繰り返します。すすぎが不十分だと、ダウンはダマができやすいので、しっかりと行いましょう」
(5)脱水する
「洗濯機のドラムに沿わすように置き、ウェア内のダウンが偏らないよう短時間で行います。2層式の場合は1分以内でよいです」
(6)乾燥させる
方法1・乾燥機にかける
「低温に設定した乾燥機で乾かします。内側の首周りなどダウンが乾きにくい場合は、途中で何度か取り出して乾き具合を確かめ、表裏をひっくり返しながら乾燥させます。また、両手で軽くたたくと内部のダウンがほぐれ、片寄りを防ぐことができますよ」
方法2・日陰でつり干しする
「乾燥機を使わず、風通しのよい日陰でつり干しする方法もあります。時々、ダウンをやさしくつまみ上げ、ふっくら乾かしてゆきましょう。
この際、外側は乾いているように見えても内側は湿っている場合があるので、1週間ほどかけて干してください。
冬場や梅雨時など、晴天が続かない場合や時間がない時は、ほとんど乾いた状態で仕上げにコインランドリーの乾燥機を利用するのもおすすめです。10分、20分かければよいでしょう」
「完全に乾燥したら、全体を優しくたたくようにしてダウンの片寄りをほぐします」
【中わたを洗う場合に注意すること】
化繊からつくられている“中わた”は、熱をかけると影響を受ける場合もあるそうです。
「ポリエステルなので、温度にはシビアですが、乾きやすいという特徴もあります。乾燥機にかける場合はごく低い温度で。もしくは、風通しのよい場所でつり干ししましょう。様子を見ていただきながら、2〜3日もあれば乾くと思います」
より長く付き合っていくために
null教えていただたセルフケアで、ダウンと中わたはきれいを取り戻しました。
「シーズン中はもちろん、衣替えのタイミングで手洗いする方もいらっしゃると思います。とくに夏場は、晴天も続いて、短時間でからっと乾かすにはいい季節ですよね。
ただ、ダウンも中わたも、紫外線の影響で生地が傷む可能性もあるので、直射日光は避けて干したり保管したりしてください」
「私たち『モンベル』では、素材から選び、着用テストを繰り返して製品化していますから、手入れしながら着用していただければ10年は愛用いただけますよ。
また、修理も対応していますし、セルフケアでも困ったことがあればご相談ください」
大切にしてゆく中で、買い替えを考えるタイミングは、生地の擦り切れや毛羽立ちなど、生地そのものが劣化したとき。修理で穴を塞ぐなどしても、生地が弱くなってしまってやぶれたりするそうです。でも、そこまで長く着られたら十分ですよね。
これから衣替えする。もしくは、クリーニングにまだ出してないダウンや中わたがあるという皆さ〜ん! 今から自宅でセルフケアしてみませんか?
【取材協力】
モンベル
朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote