ごみ屋敷の清掃はどのように依頼すればいい?
nullごみ屋敷の清掃は依頼主からの要請があって初めて成立します。ごみがこれ以上増えるのは無理だと自身で判断して依頼する人もいますが、一番多いのは引っ越し、建替えなどにより片づけを余儀なくされるケースとのこと。
「きっかけとしては契約更新、引っ越し、建替えなどがとても多いですね。不動産業者からの依頼も多くあります。
ごみ屋敷に限らず、生前整理、遺品整理で業者選びをする際には、複数の会社にあいみつ(相見積もり)を取ってください。あいみつを取った上で、ごみ屋敷の場合は必ず現地に下見に来てくれる業者を選ぶようにしましょう。
ワンルームでこれぐらいゴミが溜まっていると伝えて、口頭ですぐに“〇万円ですね”と言ってしまう業者は、後からその値段にプラスαが出てくることが多いです。見積もりしてから金額を出す業者を選んだ方がいいでしょう。
何社か見積もりを取って値段が変わらないようなら、業者の人間性を見てください。見積もりに来てくれた人が、どれぐらい親身になって考えてくれているのかを見るということです。今後再びごみ屋敷にならないようにするにはどうしたらいいか相談にのってくれる、きちんと考えてくれていると思う人を選ぶのが大事かなと思います」(以下「」内、柴田さん)
気になる価格ですが、ごみの量、内容物によってケースバイケース。基本はトラックに積める容量(立方メートル)で決まることが多いそうです。また、柴田さんの勤務する会社のように、リユースできるものは売却して依頼者に還元する業者もあります。
家の片づけで出てきた「お宝」はどうすればいい?
null家にある物を丸ごと片づけるのならば、業者に依頼した方が早くできますが、中には価値のある物が出てくることもあります。特に、物であふれている「物屋敷」では、未使用の贈答品や骨とう品、高価なオーディオ機器など、リユースできるものが“発掘”されることも。
こうしたお宝的な物が出てきた場合、業者に買取ってもらうのか、手元に残して自分たちで売却した方がいいのか迷うところです。
「片づけ業者を選ぶときに、買取りをしてもらえるのかきちんと確認しましょう。価値が判断できるものなら自身で売った方がいいかもしれませんが、片づけの業者に段ボール1箱ごと頼んだ方が、売れたときに梱包・発送まで行うので安心ですし、本(『ごみ屋敷ワンダーランド』白夜書房)にも書きましたが、目利きの社員もいて、オークションに出品して驚くべき金額で売れることもあります。
僕らが買取るときは、古物商に売ったり、フリマアプリを使ったり、オークションにかけたりと使い分けをしていますが、もし自身で売るのなら、自分で値段を決めなくてはいけないフリマアプリや、適正な買取り価格なのかわからない買取り業者に持ち込むより、オークションサイトへの出品をおすすめします。特に自分では価値があるのかどうかわからない物こそ、オークションに出すべきです。
オークションなら、本当に欲しい人、価値がわかる人や業者が入札して、競りで価格が上がっていくので、価値ある物は価値に見合った金額になります。
また、“要らない貴金属や着物があれば買取ります”と自宅に訪問してくる業者がいますが、それは避けた方がいいかもしれません。きちんとした買取り業者は基本、営業をしていないので、訪問してくる業者には、安く買取られる可能性もあります。
ごみだと思っていたような鍋だって片づけ業者に任せてもらえればリユースが可能な場合もあります。処分する作業と買取りが同時にできるのは、僕のバイト先会社の強みですが、そうした業者を見つけることができたなら、買取りも併せてお願いするのがいいかもしれません」
お笑い芸人が「お片づけのプロ」として活動する理由
nullkufuraの連載でもおなじみの、様々なゴミの問題に取り組むマシンガンズ滝沢秀一さんが進める「ごみプロジェクト」の一環として、柴田さんは今年、同じく現役芸人のぐりんぴーす落合隆治さんと共同で「お片付けブラザーズ」という団体を立ち上げました。メンバーとして同じく芸人の手塚ジャスティスさんも参加しています。
「ごみ屋敷の清掃を数々経験してきて、気づきや発見が多くありました。今回お話ししたように、片づけをする中でごみ屋敷化を防ぐヒントも見えてきました。こうした経験の蓄積から情報発信をもっとしていきたいと思っていますが、バイト先は企業ですから、依頼主のプライバシーに関わるような情報発信は難しく、写真や動画も一切残すことができません。
だったら自分たちでやるしかないということで、お片づけの団体を立ち上げました。お片づけからごみ屋敷の清掃、生前・遺品整理まで幅広く対応します。お笑いもお片づけもコミュニケーションが大切。依頼主の話をじっくり聞いて、寄り添いながら仕事を進めていきます。芸人で顔も割れているので、悪いこともできないですし(笑)。
ごみ屋敷経験者の体験談としてインタビューや、写真、動画の撮影もOKという依頼主には、割引サービスもさせていただきます。片づけの規模の大小は問いませんし、リユースも徹底して行い、買取りは依頼主に還元します。
ごみ屋敷は恥ずかしい、頼むのに気が引けるという方でも、ぜひお問い合わせください。我々芸人と一緒に楽しく片づけをしましょう!」
気になるのですが、柴田さんの本業は……芸人ですか?お片づけ業ですか?
「芸能活動ですか?もちろん続けますよ! 二足のわらじでマシンガンズ滝沢さんの後ろをひたすらついていくつもりです! 近々の目標としてはやっぱり『踊る!さんま御殿!!』出演ですね。そして『THE SECOND~漫才トーナメント~』と、滝沢さんが行った道を全部行くことを目指しています。気づいたら滝沢さんに肩を並べているというところまで行けたらいいですね」
ごみ屋敷というとネガティブなイメージしかありませんが、柴田さんのお話を伺っていると、壮絶なごみの山と戦いながらも、前向きにユーモアの心を忘れない仕事ぶりが想像できました。お片づけのプロとして(芸人としても)、今後の活躍を期待したいですね。
取材・文/阿部純子
撮影/横田紋子(小学館)
【取材協力】
柴田賢佑(しばた・けんすけ)
1985年北海道生まれ。7歳からアイスホッケーを始め大学時代まで選手として活躍。20歳で芸人を目指し上京し、2007年に柳沢太郎とお笑いコンビ「六六三六(ろくろくさんじゅうろく)」を結成。2016年より、芸人活動のかたわら、生前整理、遺品整理、ごみ屋敷の片づけなどを行う会社に勤務。2024年に新会社「お片付けブラザーズ」https://okatazukebros.wixsite.com/my-site を設立し、関東を中心に、片づけの手伝いやリユースサポート、発信などを行っている。
『ごみ屋敷ワンダーランド ~清掃員が出会ったワケあり住人たち~』(柴田賢佑・著/白夜書房刊/1,540円・税込)
ごみ屋敷清掃員としても働くお笑い芸人柴田賢佑が語る、ごみ屋敷の内部とは……? 生ごみがもはや土に還るキッチン、おしっこが入れられたペットボトル、猫への飼育放棄で崩壊した糞まみれの部屋など、あり得ない光景の数々に清掃員が格闘します。また、それぞれに事情を抱えて暮らす住人たちとの交流も。ごみ屋敷のリアルをお伝えします。