ごみ屋敷化してしまうのはどんな人?
nullお笑い芸人の相方とルームシェアしていた時代に、ほぼごみ屋敷化していたと話す柴田さんは、ごみ屋敷になってしまう理由も理解できると言います。
「ルームシェアをしていたとき、僕も相方も夜勤だったのでごみが出せず、芸人仲間や友人も家に出入りしていたのでごみが溜まっていく一方でした。ごみが多いので気にしないのか、来客は食べた弁当の容器や空き缶などを、そのまま部屋に捨てていくんです。
僕たちも自分が出したごみじゃないから関係ないと片づけなくなる。気がつくと膝上ぐらいまでごみが積もり、すき間に動線がかろうじてある程度。許容範囲を超えて片づけようとなりましたが、気にならなくなってしまえば、簡単にごみ屋敷になるのだとわかりました。
そうした経験から、ごみ屋敷住人を理解できる部分もあって、“大丈夫、元に戻れるよ”と応援したい気持ちでもあるんです」(以下「」内、柴田さん)
「自分は絶対に大丈夫!」と思っていても、何かをきっかけにごみ屋敷になってしまうこともあると話す柴田さん。普段のなにげない行動が、実はごみ屋敷化の予兆だったりする可能性も!?
「結婚したことで僕はごみ屋敷から抜け出せましたが、生活を見直していく中で、ごみ屋敷の人の感覚に気づいたことがありました。嫁に毎回怒られていることを思い返すと、ごみ屋敷化の前兆というか、ごみ屋敷化しやすい人の傾向が見えてきたんです。
まず、飲みかけのペットボトルを机に置いたまま、2~3日経っても平気な人。僕もそうですが、このタイプは結構ごみ屋敷になりそうな感じがします。
また、バッグの中身を整理せず、必要のないものも入れっぱなしで、いつも“重い!”と言いながら持ち歩いている人。
あとは脱いだものをその場にほったらかしにしている人も要注意です。
冷蔵庫の中にある食材を古いものから順に使わず、食材を腐らせてしまう人も危ない。腐って溶けてしまった野菜を掃除したことのある人は気をつけましょう」
近所にごみ屋敷が出現したらどうする?
null前回でも触れましたが、ごみをごみじゃないと主張する、捨てさせないごみ屋敷も存在します。家や庭にごみが山積みされ、悪臭や虫・ねずみの発生、放火の危険性などがあり、近隣住民にとって大きな悩みとなります。
もし、近隣にごみ屋敷が出現してしまったら、どう対処すればよいのでしょうか。
「こうしたケースはごみ屋敷の住人と近隣住民とのコミュニケーションが取れていないことが多く、迷惑をこうむっている近隣住民は怒りを感じているでしょうし、文句を言われるごみ屋敷住人も敵意を持っているかもしれません。直談判するのはかなり危険で、悪化する可能性もあるので避けた方がいいでしょう。
絶対ごみだと言わないタイプの人たちは、ごみを撤去しようとすると“盗まれている”と思ってしまうので、敷地の外にはみ出たごみを撤去してしまうとトラブルになりかねません。実害が出た段階で、集合住宅なら管理会社や大家さんに相談する、もしくは行政に通報するのが無難ですね」
環境省による、全国1,741市区町村を対象にした『令和4年度 「ごみ屋敷」に関する調査報告書』では、行政が認知しているごみ屋敷の件数は5,224件、うち改善されたのは2,588件にとどまっています。
「“ごみ屋敷条例”が制定されるほどですから、ごみ屋敷は様々な弊害があるということです。数は今後も増えていくと思います。室内のごみ屋敷で住民からの通報がないこともあるでしょうし、僕が勤務している会社でも多いときは月に3~4件のごみ屋敷掃除の依頼がありますから、環境省の数字よりも実態はもっと多いと感じます」
ごみ屋敷にしない・させないために心がけるべきこととは?
nullごみ屋敷にしない、ならないためにはどうしたらよいのでしょうか。人それぞれに事情があるので、すべてには当てはまらないと前置きしながら、第三者の目が入ることで変わるのではないかと柴田さんは考えています。
「多くの場合、ごみ屋敷化にはきっかけが存在します。ごみ屋敷になる前にそこに気づけるかどうかが重要になってくるんじゃないかなと思います。
例えば、離婚してしまった、伴侶と死別してしまった、リストラされたなど、気を落としたまま生活を送っているうちに、気づくとごみ屋敷になってしまっていることもあります。
もし友人が離婚したと聞いたら、連絡してあげて欲しいですね。“ちょっと家行っていい?”みたいな軽い感じで水を向けてあげる。“こんなところに呼んで大丈夫かな”と、他者の目が入ることで片づいていない今の状態を把握できるんです。訪問したときに“また来るわ”と次回の約束をしておけば、家をきれいに保っておこうと気力が生まれます。
一人暮らしの高齢者も同じです。午前中に買い物に行ったけど午後にも行っている、同じことを繰り返して話すなど、気になったらご近所さんや訪れた家族が声掛けしてあげましょう。
どうしても一人になりがちな人でも、周りの気づかいによって、早い段階で対応できる可能性もあります」
ごみ屋敷清掃の体験をつづった著書『ごみ屋敷ワンダーランド』(白夜書房)は、「最近つらいな」「ストレス溜まっているな」など、今の自分に不安を抱えている人に読んでもらいたいと柴田さんは言います。
「自分は専門家ではないので精神面の分析はできないですが、ごみが家じゅうに溜まっている状態は普通とは言えません。でもごみ屋敷化した背景には、先ほど話したように、なんらかのきっかけがあります。
メディアはごみ屋敷の住人を常識が通じないモンスターのように扱うことも多いですが、今の自分が不安定な状態のとき、普通の生活をしていても、知らないうちにごみ屋敷化してしまう可能性があると思います。
つらい状況なら、引っ越しをする、仕事を辞めるといったなにかの転機があれば、ごみ屋敷から抜け出せる可能性もあります。僕の本を読んで、そうしたきっかけを見つけてもらえればうれしいですね」
書著の中には、ごみ屋敷清掃はリピーターが多いという話と同時に、ごみ屋敷から抜け出し、その後ずっときれいな部屋を維持することができた女性のエピソードが紹介されています。彼女がごみ屋敷を克服したのは、柴田さんたちのような親身にアドバイスしてくれる清掃業者と出会えたからかもしれません。
次回は、ごみ屋敷だけでなく、生前・遺品整理で家の片づけを頼む際、失敗のない業者選びのノウハウを紹介します。
取材・文/阿部純子
撮影/横田紋子(小学館)
【取材協力】
柴田賢佑(しばた・けんすけ)
1985年北海道生まれ。7歳からアイスホッケーを始め大学時代まで選手として活躍。20歳で芸人を目指し上京し、2007年に柳沢太郎とお笑いコンビ「六六三六(ろくろくさんじゅうろく)」を結成。2016年より、芸人活動のかたわら、生前整理、遺品整理、ごみ屋敷の片づけなどを行う会社に勤務。2024年に新会社「お片付けブラザーズ」https://okatazukebros.wixsite.com/my-site を設立し、関東を中心に、片づけの手伝いやリユースサポート、発信などを行っている。
『ごみ屋敷ワンダーランド ~清掃員が出会ったワケあり住人たち~』(柴田賢佑・著/白夜書房刊/1,540円・税込)
ごみ屋敷清掃員としても働くお笑い芸人柴田賢佑が語る、ごみ屋敷の内部とは……? 生ごみがもはや土に還るキッチン、おしっこが入れられたペットボトル、猫への飼育放棄で崩壊した糞まみれの部屋など、あり得ない光景の数々に清掃員が格闘します。また、それぞれに事情を抱えて暮らす住人たちとの交流も。ごみ屋敷のリアルをお伝えします。
\ごみ屋敷芸人3人が語る本当にあった〇〇な話/
8月30日(金)18時30分から芳林堂書店 高田馬場店
『ごみ屋敷ワンダーランド』発売記念トーク&サイン本お渡し会
登壇者/柴田賢佑さん、ぐりんぴーす落合さん、手塚ジャスティスさん、
★スペシャルゲスト★ 赤プルさん、薄幸(納言)さん
お申込みはこちらから! https://www.horindo.co.jp/t20240815/