子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

【災害時に困らないトイレの備え】「簡易トイレ」は1人100個を備蓄する時代です

2025年1月、令和6年能登半島地震から1年。そして、平成7年阪神・淡路大震災から30年を迎えます。改めて「もしもの備え」を見直す方もいるかもしれません。

ところが今、日本国内では「簡易トイレ不足」が起こっているのだとか。それに対抗すべく立ち上がったのが、手に取りやすい価格の防災リュックでも知られる専門商社『山善』です。

困った! 簡易トイレが足りない……

null

『山善』の小浜成章さん。

今回、お話を伺ったのは『山善』の防災用品を企画開発する小浜成章さんです。小浜さんは、2016年から防災リュックの開発に着手。以来、防災用品一筋。防災士の資格ももつ、いわば防災のプロフェッショナルです。

2024年1月に発生した能登半島での地震や、8月に発表された南海トラフ地震の臨時情報をきっかけに、簡易トイレの需要は一気に高まった(画像提供:山善)

「災害が起こると、困ることの一つがトイレです。基本的には水が流せませんし、避難所に仮設トイレが設置されるまで最低3日はかかります。また、大きな災害の場合、長引けば在宅避難が23カ月に及ぶこともあり、その間、トイレが満足に使えない可能性もあります。

日ごろ、健康な人でも避難生活は疲弊します。排泄を我慢することは健康被害にもつながるので、トイレの備えは必須です。こうした意識の高まりから、20248月には前月の数倍近く、簡易トイレの需要が高まりました」(以下「」全て、小浜さん)

簡易トイレ不足は高齢化社会の影響!?

需要が拡大したことで深刻化したのが、国産吸水ポリマーの不足です。

「日本は高齢化社会で、介護が必要な方が増えています。そうすると必要になるのが、介護用おむつに使う吸水ポリマーです。これは吸水力の高さから、簡易トイレの凝固剤にも使用されています」

青い水を吸った吸水ポリマー。凝固剤に欠かせない

「ただ現在、国産の吸水ポリマーは生産量が追いつかず、簡易トイレが足りないという問題も起こっています。そこで弊社はお客様の声に安定して応えることができるよう、中国産吸水ポリマーを使うことにしました。

もちろん中国でも介護用おむつの需要は高いですが、まだ日本ほどではありません。また、質も国産とほとんど変わらないのに、中国産ということで価格を抑えることができています。

日本で防災用品に対するハードルを下げたいと、2016年から防災リュックの開発・販売を始めた弊社としては、簡易トイレも同じように、どなたにも気軽に備蓄していただけることを目指したいんです」

「山善」のトイレ防災【注目商品】

null

熱い想いで開発されている『山善』の防災用品。中でも、トイレ防災に関わるラインナップは、使い勝手のよさと手に取りやすい価格に抑えられたものがそろいます。その中から、とくに注目した優れものを3点ご紹介します。

吸水ポリマーの量を増やした「もしもの時に備える!緊急簡易トイレ」

「もしもの時に備える!緊急簡易トイレ」100回分4,980円、50回分2,980円(ともに税込・実勢価格)

2024年12月下旬に新発売の「もしもの時に備える!緊急簡易トイレ」は、長期の断水に備えやすい大容量タイプです。1個あたり約50円と、一般的なものよりリーズナブルなところにも注目!

「能登半島の地震で断水が長期化したことで、『簡易トイレをたくさん備える必要がある』という意識が広まりました。そこで50回分、100回分の大容量タイプを開発したのが、この新商品です。

1人が1日に5回トイレに行くとして、50回分なら10日、100回分なら20日ほど使っていただけます。もしご家族がいる場合は、人数分必要なわけで……。こう考えると、長期間の備えにかなりの簡易トイレが必要なことがわかりますよね。それなら価格も手に取りやすいほうがいいに決まっています」

500mlの青い水に「もしもの時に備える!緊急簡易トイレ」の凝固剤を入れると……
1分もしないうちにプルプルの状態に! 黒いつぶつぶは竹炭の粉で、防臭効果がある

「また、凝固剤の量も、通常の簡易トイレに多い約7gから約10gに増やすことで、一度に約500ml分吸水できるようにしています。これは、お年寄りなど介護を必要とされる方の排泄を鑑みて。こうした方々はトイレに行く回数がどうしても少なくなるため、一度の排泄量が多くなるんです。すると、約7gで吸水できる400mlでは足りないんですよね。

このほかにも、長期保存が可能なアルミパック包装にしたり、水洗トイレに設置できる便座カバーやまとめて処理できる袋を付属するなどしました」

頑丈な樹脂製「防災士監修! サッと簡単トイレ」

「防災士監修! サッと簡易トイレ」3,980円(税込)。収納バッグ、汚物袋12枚、凝固剤12個、処理袋2枚付き

場合によっては、トイレそのものが使えない可能性もあります。そうしたときに、組み立て式の簡易トイレが備蓄してあれば安心です。

こちらの組み立てにかかる時間は、およそ1分。しかも繰り返し使える、頑丈な樹脂製です。

一般的にダンボール製のものもあるが、組み立てがやや大変で、湿気や水濡れに弱いというデメリットも

「近年、ひどい水害も増えています。そんなときにも安心して使っていただける、頑丈かつ組み立てが簡単な簡易トイレもそろえています。

折りたためるので持ち運びする場合にも便利で、使わないときはコンパクトに収納していただけますよ」

組み立てたときの本体サイズは幅33.5×奥行27.5×高さ30cm(画像提供:山善)
折りたたむとA4サイズくらい
収納バッグ付き(画像提供:山善)

樹脂製なので、汚れやにおいが気になったら洗うことができるのもメリット。重さは約1.4kg。収納袋に入れれば、車中泊やキャンプなどに持って行くのにもよさそうです。

「よく耐荷重を聞かれるのですが、一般的な男性にお使いいただけるとお考えいただければと思います。組み立て式なので、腰掛けるときはなるべく優しくが、長くお使いいただけるポイントです」

湿気に強く、コンパクト「長期保存用トイレットペーパー」

「長期保存用トイレットペーパー」70m 327円、200m 658円(ともに税込)

防災リュックの中にトイレットペーパーを入れている方も多いのでは? しかし長期保存するうちに、カビていた!ということも少なくない、と小浜さん。

「阪神・淡路大震災のとき、被災者がもっとも困ったことにトイレットペーパー不足がありました。そこで開発したのが、この商品です。

トイレットペーパーは水に溶けるため、湿気の多い場所での保管や水害時の使用が難しく、いざというときに使用できないケースがあります。また、保管スペースが確保できないとか、長期で衛生的な管理ができない場所も多い。そこで、真空包装で、長期保存が可能な備蓄用トイレットペーパーにしました」

アルミの真空包装が施されている

包装されているから、万が一、水没しても使用可能。真空包装なので、省スペースで保管できます。

70mタイプは1人で使用した場合、約1週間相当で、防災リュックなどに入れていただきやすい手のひらサイズです。200mタイプなら、家族34人で約1週間お使いいただけますよ」

東日本大震災では、被災地のみならず、全国的にトイレットペーパーの不足が発生しました。また、経済産業省はトイレットペーパーの1カ月備蓄を推奨しています。このトイレットペーパーなら、1人あたりの必要数も把握しやすく、備蓄しやすそうですね。

備えあれば憂いなし!

null

お恥ずかしながら、筆者はトイレの備えに一切着手できていませんでした。でも今回、小浜さんのお話を伺い、具体的に必要な簡易トイレやトイレットペーパーの量を把握。それにより、わが家に必要な備蓄が見えたことで、ようやく重い腰が上がりました。

“もしも”はないに越したことはありませんし、備蓄品は使わないほうがハッピーです。でも、備えていないことで困るのはいちばん避けたい未来でもあります。

みなさんもどうぞこの機会に、トイレの備えをしませんか?

【取材協力】
山善

ニイミユカ
ニイミユカ

朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載