「供物」の読み方や贈る目的は?
null“供物”は“くもつ”と言い、神仏や故人に供える物のことです。葬儀の場合の供物は、故人や神仏への感謝の気持ちを表すことを目的としています。
葬儀時の供物は2種類に分けることができます。
(1)葬儀会場の祭壇に供える供物
(2)故人の家族に贈る供物
2つとも“供物”と呼ぶため、混同しやすいのですが、それぞれ調達方法が異なりますので注意が必要です。
それではまず、祭壇用の供物についての解説から進めていきましょう。
自分で用意するのはNG?祭壇用の「供物」の贈り方
null葬儀の式場の祭壇に、果物や缶詰などを盛り付けたかごが飾られているのを見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。あれが、祭壇用の“供物”です。
地域によっても異なりますが、葬儀の祭壇用の供物は、施行を担当する葬儀社経由で贈るのが一般的です。故人と関係のある相手であれば、誰が贈ってもいいのですが、親族や友人、同僚など故人と親しい関係にあった人が贈るケースが多く見受けられます。
供物の手配の流れ
供物を贈る場合はまず、事前に「供物を贈りたい」と遺族に伝え、指定された葬儀社に連絡をします。用意されたオプションの中から供物を選び、手配を依頼します。このとき、代金の支払い方法についても確認しておきましょう。
通夜や葬儀の会場に飾るものなので、通夜に間に合うように注文は早めに済ませておきましょう。
仏式であっても神式であっても、近年、自分で用意した供物の持ち込みは禁止されている会場が増加しています。事前に必ず葬儀社に確認をとるようにします。
キリスト教式の場合の供物は?
教会によっては柔軟なルールを設けているところもあるかもしれませんが、キリスト教式では葬儀会場用の供物を贈ることはありません。
祭壇用の「供物」の相場
地域や葬儀社によってバラつきはありますが、祭壇用の供物の相場は10,000円~15,000円程度です。
祭壇用の「供物」の選び方は?
null仏式の場合、祭壇に飾る供物は、缶詰や果物、乾物、菓子、五穀などを葬儀社が祭壇用に盛り付けて祭壇に飾ります。
供物の内容は宗教によっても異なるのですが、地域性も強く表れます。
葬儀社が供物を手配する場合、依頼主はあらかじめ用意された選択肢の中から選び、飾り付けも葬儀社が行うので、贈る側が祭壇用の供物の内容で悩むことは少ないと思われます。
「ご厚志辞退」の場合の対応法
null葬儀の中には、「ご厚志辞退」というケースもあります。
葬儀案内の内容に「ご厚志辞退」との表記があったら、香典・供花・供物を辞退するという意味になりますので、供物を贈るのは控えましょう。
さらに、「供花・供物は辞退」という場合もありますので、葬儀案内の内容を事前にきちんと確認しておきます。
自分で選んだ「供物」を贈る場合
null続いて、自分で選んだ供物を遺族や故人の自宅に贈るケースについて解説していきます。
用意した供物は、葬儀の会場で遺族に渡すだけでなく、自宅に贈ることもあります。諸事情により葬儀に参列できなかった場合は、葬儀後に供物を贈るケースもあります。
供物の「掛け紙」の書き方
供物用に購入した品物には、お店で黒基調の結び切りの水引が印刷された弔事用の“掛け紙”をかけてもらいます。
表書きには「御供物」「御供」と書いて、贈り主の名前を表記します。
供物にかけるのは「のし」or「掛け紙」?
葬儀用の供物に使用する紙は“掛け紙”と呼ばれていますが、“のし紙”と呼ぶケースもあるようです。しかし、“のし紙”は一般的に縁起の良い“熨斗”(のし)のマークが印刷された紙のことを指し、慶びごとのときにつけるものとされています。
便宜上、“弔事用のし紙”と呼ぶこともあります。
「供物」の選び方や相場は?
null自分で選んだ供物を贈る場合は、故人が好きだったお菓子や果物、飲料などを贈るケースが多く見受けられます。また、線香、ろうそくなどもよく贈られています。線香を使用している家庭は近年減少傾向にありますので、故人の家庭の中の状況をイメージして贈るといいでしょう。
仏教の場合は、肉や魚などの”生臭物”を供えることは避けると言われていますが、最近はあまり気にする人もいなくなりました。
故人への思いを込めて贈るものですので、相場は特にありません。とはいえ、高価な物を贈ると遺族にとってお返しの負担になることがありますので、ある程度の配慮が必要です。
以上、今回は吉川美津子さんに“供物”について解説をして頂きました。
地域に根づいた風習や宗教を配慮しながら、場面に応じた供物を手配するよう心がけましょう。
【取材協力・監修】
葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタント
吉川 美津子(きっかわ みつこ)
大手葬儀社、大手仏壇・墓石販売店勤務を経て、専門学校にて葬祭マネジメントコース運営に参画。現在は葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタントとしての活動に加え、医療・介護と葬送・供養の連携を視野に葬送・終活ソーシャルワーカー(社会福祉士)としても活動している。
共同監修『葬儀・相続 手続きとお金』(扶桑社)、共著『死後離婚』(洋泉社)、著書『お墓の大問題』(小学館)など。