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亡くなった親に「生前にやっておいて欲しかった」と感じること4つ。相続、家の整理…何が特に大変だった?

「いつまでもあると思うな親と金」という言葉があります。しかしお金がなくならないように心がけることはできても、親の死とはいつか必ず向き合う日が来るもの。葬儀の準備や相続などでは「親本人の意向をもう聞けない」からこその悩みも発生しがちです。

「終活」という言葉があるように、親の側も「できるだけ負担をかけないように」とさまざまな準備をしている場合も多いでしょう。遺された家族が困らないようにするため、特に注意しておきたいのはどんなことでしょうか?

そこで今回『kufura』では、親を亡くした経験がある20~60代の男女269人にアンケート調査を実施。「生前にやっておいて欲しかった」「聞いておけばよかった」と感じたことを教えていただきました。

【1:銀行口座や保険などの情報共有】把握するだけでも大変!

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どこの銀行にどのくらい貯金をしており、どんな保険に加入していたか? 携帯やサブスクリプションサービスなど、どんなものを契約していたか?

いくら親といえども、生前そういったことを根掘り葉掘り聞くのは気が引けるものです。しかしいざ亡くなると、さまざまな解約手続きをするのは遺された家族。それぞれの状況を把握できないと、かなりの手間がかかるようです。

「父は国債を買ったり、保険に加入したりしていたようなのですが、母や私たちはすべてを把握していませんでした。生前に資産の状況を一覧にまとめて教えておいて欲しかった」54歳男性/研究・開発)

「銀行の口座番号や届出印が不明で、何度も銀行の担当者とやり取りした」64歳男性/会社経営・役員)

「保険や銀行などが全く分からず、手続きが大変になった。親が加入しているものを把握できていなかったので、親が元気な時に知っておいて、本人がどうしたいのか聞いておくのも必要だと感じました」47歳女性/主婦)

「銀行口座やクレジットカードなど取引関係の一覧表を作って欲しかった」58歳男性/その他)

銀行口座の名義人が亡くなったことを銀行側が把握すると、故人の銀行口座は凍結されます。凍結を解除するためには相続手続きが必要になるなど、状況が複雑化するため、遺族はかなり大変だといいます。せめてどこにまとまっているのかなど、できるだけ親が元気なうちに情報共有しておけるのが理想的ですね。

【2:お葬式に関する意向を聞きたかった】誰を呼ぶ?どんな葬儀にする?

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親が亡くなるとまずやらなくてはいけないのは、葬儀の手配。コロナ禍をきっかけに葬儀の簡略化や小規模化が進んでいるようですが、それでも会場の手配や親戚等へのお知らせなど、やらなくてはいけないことはたくさんあります。亡くなってから葬儀まではそれほど日数がないため、あとになって「あれをやっておけばよかった」と後悔するケースも少なくないようです。

「お葬式に呼ぶ人のリストを作っておいてほしかった。小学校から仲が良かった友人を呼び忘れてしまったから」41歳女性/学生・フリーター)

「お葬式の時に、普段から親交のある人とない人を分けたリストを残しておいてほしかった。誰から先に連絡していいか分からず困った」41歳男性/その他)

「父親が自分の兄弟たちとうまくいっていなかったため、葬儀の際になかなか意思疎通ができなかったし、私自身も遠慮してしまって物事を頼むことができなかった。生きてるうちに兄弟たちともっと話をして、わだかまりを解いておいて欲しかったと思いました」64歳女性/その他)

「どんなお葬式をしてほしかったのかを伝えておいてほしかった。人生最後の時なので、本当に自分が望んでいるお別れの仕方で送ってあげたかったから」54歳女性/主婦)

とはいえ、たとえ余命宣告があったとしても、子どもは親に「どんな葬式がしたい?」とはなかなか切り出せないものです。逆に、親のほうから話題を振られても、「縁起でもないこと言わないで」と遮ってしまうこともありそう。故人の意思を尊重したお葬式をするためには、そんなハードルを乗り越えて、生前から話をしておく必要があるといえそうです。

【3:相続財産の整理】少ない遺産でも争いは起こる!?

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親が亡くなると兄弟や親戚間での遺産相続などが発生します。しかし生前に相続についての取り決めや遺言などがないと、親族間での食い違いが発生することも珍しくなく、きれいごとでは済まないことも。センシティブな問題ですが、何かしらの対策は必要です。

「父が亡くなった際、相続は全て母にと言われていたので、楽と言えば楽だったが、相続後、今度は母が母自身の死後に財産をどうしていくかで悩んでいる。それならばもっと前から、生前の父に意思を聞いておいても良かったと思う」(58歳男性/金融関係)

「相続税対策をもっと具体的にしておいてほしかったです」64歳女性/主婦)

「遺産をどうするのか、決めておいてほしかった。兄弟でとてももめてしまった」61歳女性/デザイン関係)

「遺産相続についてもっとちゃんとしていて欲しかった。母親はよく分かっていないし、兄に好きなようにされてしまった」54歳女性/主婦)

巷でよく耳にする「遺産相続に関するトラブル」について「うちは争うほどの遺産はないから関係ない」と考えている人は多いと思います。しかし家庭裁判所で取り扱われた遺産分割のうち、遺産総額が1,000万円以下のケースが約35%、5,000万円以下のケースを含めると80%近くを占めるそう(「司法統計年報」令和5年度版より)。遺産が多くないからといって、決して他人事ではないのです。

【4:不用品の処分】捨てられない気持ちは分かるけど…

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同じ家に何十年も住み続けると、家の中にあらゆる“モノ”が溜まっていきます。断捨離が流行り、ミニマリストを目指す人も増えてきた昨今ですが、年齢を重ねて体力が衰えてくると、モノを捨てることが段々と億劫になるもの。しかしいざ家族が他界してしまうと、遺族は大量の遺品の処分に途方に暮れる……そんな話は珍しくありません。

「家屋内が全然整理されておらず、その量に圧倒された。離れた実家の整理に時間がかかった」64歳男性/営業・販売)

「整理整頓しておいて欲しかった。何がどこにあるのかわからず一つ一つ確認して廃棄しなければいけないのが大変だった」(49歳女性/主婦)

「できれば生前に家具類を少し処分しておいてもらいたかったです。実家住まいであるため、残されたタンスなどの使わない家具がたくさん残っていて困っていますが、時間をかけて少しずつ処分しています」51歳男性/その他)

「空き家のままにせず、生きているうちに更地にしておいてほしかった。かなりの金額がかかったうえ、服から本から、私物に至るまでゴミに出すのも大変だった」45歳男性/その他)

途方もない大量の遺品を目の前にすると「誰かまとめて片づけて!」と思う人も多いと思います。そういった遺品整理を請け負う業者もたくさんありますが、部屋の広さによって10万円~20万円、あるいはもっと高額の請求になる場合もあるそう。

負担を抑えられるように、遺品の買い取りで遺品整理の費用を相殺していくタイプのサービスもあるようですが、一切費用をかけたくない場合は家族で整理するしかありません。

【その他】こんな回答もありました

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親が遺してくれたエンディングノートが役立った、という回答もありました。

●特に困ったことはなかった

一方で、それほど困ったことがなかった、という回答もちらほらありました。

「何もない。すべてがパーフェクトな父」52歳男性/技術職)

「美術品などがたくさんあったが、父に生前“これはどういうものなの?”とそれぞれ確認していたので、二束三文で処分していいものとそうでないものがハッキリわかっていて、あまり悩まずに済みました」(58歳女性/その他)

「父親が十分に準備していたので特になかった」64歳男性/その他)

「兄達が色々してくれたのでほとんど困りませんでした」64歳女性/総務・人事・事務)

親が生前にきちんと整理してくれていたケースの他、自分や兄弟があれこれ動いていたおかげで困らずに済んだという声も。

近年は、遺された家族に負担をかけないための「終活」や「エンディングノート」をつくろうという動きもありますが、自分が死ぬ立場だったら果たして的確に対応できるのだろうか? そう自問自答すると、とても自信がありません……。

そしてそれを子どもの立場で自分の親にお願いするのは、なんとなく気が引けるもの。なかなか一筋縄ではいかないのも、無理はないように思います。

●もっと親孝行しておけばよかった

今回のアンケートで聞いたのは、あくまで「親にやっておいて欲しかった」ことや「聞いておけばよかった」ことでしたが、回答のなかには親との関わり方に関する後悔も多数ありました。

「孝行のしたい時分に親はなし」という言葉通り、死んでしまったら親孝行はできません。それをよく分かっていても、日々の忙しさに追われてなかなか思い通りにいかなかったり、できるかぎりのことはしたつもりでも何かしらの後悔が残ったりするケースは多いようです。

「もう少し会う機会を増やしておけば良かった」44歳女性/その他)

「完璧な父で頼りっぱなしだった。もっと親孝行をして旅行に連れて行ってやればよかったと思います。お金も出してくれたし大学にも入れてくれた。同じことを自分の子どもにしてやろうとするのが大変です」46歳女性/コンピュータ関連)

「海外旅行に連れて行きたかった」67歳男性/研究・開発)

もっと一緒にいる時間を増やすべきだった」(58歳男性/学生・フリーター)

理想の死に方として、「ピンピンコロリ」という言葉がありますが、昨日まで元気だった親が突然亡くなると、子どもは親の死を受け入れる心の準備ができていないもの。そうするとまさに「孝行のしたい時分に親はなし」の状態になりやすいともいえそうです。

なんの後悔も残さない……というのは難しいにしても、まずは普段からなるべく頻繁に会ったり話したりするなど、小さなことから始めてみるのが大切なのかもしれません。

 

いつ何があるかわからないのが人生。これを機会に、「親」「子」それぞれの立場で、今やっておくべきことを見つめ直してみるのはいかがですか?

 

【参考】
最高裁判所「司法統計年報(令和5年度版)」家事編 52表 2024/8/26参照

高山恵
高山恵

東京都出身、千葉県在住。短大の春休みより某編集部のライター見習いになり、気が付いたら2022年にフリーライター歴25年を迎えていた。現在は雑誌『DIME』(小学館)、『LDK』(晋遊舎)などで取材・執筆を行うほか、『kufura』などWEB媒体にも携わる。

執筆ジャンルは、アウトドアや子育てなどさまざま。フードコーディネーターの資格も持つ。

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