みんなが兄に遠慮した2年間
null遺品整理が進まなかった理由としては、やはり「母の家は兄の所有物である」こと。私がしゃしゃり出て作業してもよいのかと躊躇していました。私がこんなですからお義姉さんはなおさら。気づけば母が急逝して2年経過。リビングの壁に掛かっているカレンダーは母が亡くなった2021年1月のまま。書道が好きだった母の作業机には筆や硯(すずり)が並べてあり、洗面所やキッチンに置いてあるモノもあの日のまま。久しぶりに手を合わせに来てくれた母の友人は「○○(母の名前)さん、いつものあの笑顔で出迎えてくれそう」とよく言っていましたね。
兄の心のどこかには「長男としてやらなくては」という気持ちはあったと思います。過去に遺品整理について何度か相談を受けたことがあったので。
しかし 「いまを生きている」兄です。彼に会うたび声掛けしたものの、「この時期、仕事が忙しい」など、のらりくらりはぐらかされました。今夜の鮨の予約などはその場でスグやるくせに(笑)。
必ず「兄妹一緒」に遺品整理する
null母が亡くなってからですが、もとから好きだった整理収納をさらに極めたいと、「整理収納アドバイザー」の資格を取りました。きっと私ひとりでも母の遺品整理はできたでしょう。でもそれでは兄のためにならないなと。私の実家であると同時に彼の母でもあるのです。
もし私がひとりで片付けたら、「ありがとう」と軽く言われて終わるでしょうね。いやいや、誤解しないでほしいのですが、兄に悪気はまったくないのです。本当に片付けに興味がないだけ(笑)。そういうヒト、アナタの周りにいませんか?
遺品整理は「兄妹ふたりでやり遂げないと意味がない」、ということを具体的な声掛けとともに2023年始あたりからスタートしていきました。
遺品整理が進まなかった悪循環「メモ」
null両親の遺品整理が億劫になる理由を分析してみました。
・当事者以外の「所有物」であるということ
→自分のモノではないので愛着が持てない
・アルバムなどは私たち家族の「思い出」でもある
→思い出にメスを入れるのは大変面倒くさい
・量が膨大すぎてどこから手を付けていいか途方に暮れる
→臭いものには蓋をしたい、つまり放置
・この服、売れるのでは? 捨てるのはもったいないと欲が湧く
→放置
・捨てるのにお金がかかって面倒くさそう
→放置
同じように遺品整理が止まってしまった皆さんのお宅ではどうでしょうか? 当てはまる項目ありますか?
提案の「目線」を変えてみた
nullもともと片付けられない兄に「片付けよう!」とだけ言っても腰が重いまま。本、DVD、ブランド服など売れそうな物などは、「思い出をオカネに換えよう」と提案してみました。そうなんです。投資家でもある兄、オカネは大好き。スッと乗ってきてくれました。
また、私はメルカリが趣味で毎日のように出品しています。ジブンや家族の不要品ばかりですが、トータルで300万円以上売り上げています。これは売れる売れない、なんとなくわかる。その強みを活かして、遺品整理を進めていきました。
とはいえ「常に心がけていたこと」があります。それは……、
- 前もっての適切な「声掛け」
→目安は「1週間くらい前」に。 - 声掛けは抽象的ではなく「具体的」に。
- スケジュールも「見通し」を持って。
例:
×そろそろ遺品整理の準備しようか
○まずは火曜日までに大きめの段ボール箱を6つ以上集めようか
このあたりの声掛けのノウハウは、「整理収納アドバイザー」の資格取得の際に取り組んだ勉強がとても役立ちました。
2023年2月、母が亡くなって2年ちょっと。兄がやっとやる気になってくれて、遺品整理スタート! 作業日程は5日間でした。
業者へのモノの振り分け
null「フリマ代行サービス」にまかせる
null母の服があまりにたくさんあったので、「フリマ代行サービス」にお願いしました。私が興味のあるブランドはメルカリでせっせと出品していきましたが、興味のないおばさんブランド服はアピール文を書くのを放棄(笑)。手数料5割+送料が取られますが、ここで欲をかいても先に進めません。
フリマサイトに2カ月掲載して、売れなかった商品は着払いで送り返してくれます。でも、このときからすでに1年以上が経過しますが、いまだ細く長く売れ続けており、母の服は出品代行業者の手元にあります。おもしろいですね。
このとき季節は2月入ったばかりでした。代行サービスには春夏物を中心に送り、毛皮のコートとか厚手の黒っぽいニットとかは来シーズンに回すことにしました。いっぺんに処分したかった兄は「え」という顔をしていましたが(笑)、一般的に冬物は半額セールなどが始まっている時期だということを説明、「しかるべきタイミング」で手放した方が賢いことを納得してもらいました。そうそう兄は、こういう情報に疎い人なのです。グルメ情報にはめちゃくちゃ長けていますが(笑)。
本、DVD、宝石、ブランド食器など
null- 本、DVDは「BOOKOFF(ブックオフ)」へ
→WEBから申込みして箱詰め→集荷→その日のうちに査定、入金されました。 - 破損や傷はあるが売れそうな物、値段がよくわからないものは「出張買い取り」へ
→電話で申込し、予約を取ります。
マキタ掃除機、バカラのグラス、ル・クルーゼなどブランド皿(絵柄があるモノの方が値段が付きやすいようです)、ブランド花瓶類、焼き物の花器、壊れた沖縄三線、加水分解が始まっているパタゴニアのキャリーバッグ、出刃包丁、高枝切りハサミ、宝石、金縁の老眼鏡など。
アイリスオーヤマの1人用炊飯器、血圧計(最近出すヒトが多いそう)、高級仏壇、葬式業者からもらった未開封祭壇(コレ大きくて邪魔、持って行って欲しかったー!)、照明器具、ゴルフセット、梅酒、ラム酒、兄が売りたがっていたレカロのチャイルドシート、ベビーカーやベビー布団などもダメでした。
結局、ジュエリーがもっとも高く値が付きましたね。金や銀は「量り売り」ですが、このところの相場高で値段がちゃんと付きました。きっと買ったときは何十万円もしたんだろうなーという大きなパールや宝石は二束三文。私はこんなゴツいアクセサリーなど絶対に着けないし、他の業者に持って行くのも面倒くさい。母の思い出として取っておく? いえいえ、それこそ「宝の持ち腐れ」。母の思い出は、私の心に焼き付いている彼女の笑顔と、酔っぱらって2人で大笑いしている楽しい時間。それだけでじゅうぶんなんです。
今回、ハッキリ思いましたが、服とかアクセとかよほど趣味のヒトじゃない限り、服飾類にオカネをかけるのって本当に無駄だなーと。購入したときは高かったけど、タダ同然の売値になります。また時代はハッキリと変わり、以前はお金持ちはいい服、いいジュエリー、いいクルマでした。けどいまは、オカネを持っていたってプリウスが便利だし、短パンビーサン姿で出勤しているよ、なんて大金持ちもふつうにいます。毎日同じ服を着ているアップルの創始者、故スティーブ・ジョブズさんだって「ジブン」を持っていてステキでした。
「人からどう見られるか」の時代は終わり、「だってコレが好きだから」とか「快適だから」とか、自分自身を大切にしたライフスタイルを貫き通す方がかっこいいなーと、しみじみ思ったのでした。
これから実家や自宅の整理などされる方に「耳寄り情報」
null- PCやモニター→ 「ヤマダ電機パソコン無料処分サービス」
- 使っていないタオルなど→「リサイクルセンター」
- 売れそうにもない服など→「古着deワクチン」
- 古いアルバムのデータ化→「まんてん録」
→こちらは兄に提案中。場所を取ったり劣化が進むアルバム類はデータ化した方が絶対にいい。でも、兄が「食べられる物」以外にオカネを払いたがらないので(笑)、難航中。母の売上金を使って実行してもいいかもしれない。
思い出をお金に換えた結果
null- BOOKOFF(ブックオフ)→2万462円
- フリマ代行&私のメルカリ出品→18万5,023円(まだ売れ続けています)
- 出張買い取り「かいとり隊」→3万6,200円
全部で25万円近くになりました!
収益の使い道
null母の残してくれたDNA(兄、私、甥っ子、息子たち)が寄り合って、「おばあちゃんありがとう!」と言いながら、楽しいことに使いました。兄も「2年間の心のつかえがやっと取れた」と大変喜んでいます。
現在は高齢出産が珍しいことではなくなりました。わが家の場合は長男が37歳、次男は42歳のときに産んでいます。彼らもまた、親である私たちの遺品整理に直面するのでしょうか。
私の場合、もうすでにボチボチ終活を始めています。などと言うと皆さんに「早過ぎー!」と驚かれますが、私のなかではめちゃくちゃポジティブな作業なんですよ。とにかく「身軽に」。クリックひとつで資産がすべてわかるよう。家のローンなどはちょっと無理して繰り上げ返済しまくって、すべてチャンチャン。さーて、あとは子どもたちが大学卒業したら遊ぶだけ! という環境をボチボチつくり始めているよ、という終活です。遊ぶためには健康第一。ダイエットや日々のエクササイズに、楽しい老後に備えるこのごろです。
1975年東京生まれ。大学卒業後ラジオレポーターなどを経て二輪雑誌でエッセイスト・デビュー。現在は、オートバイのほか、旅、クルマ(キャンピングカー所有)、自転車、サーフィン(ショートもロングも)、スノーボード、ファミリートレッキングなど多趣味をいかしたエッセイを執筆中。旅が好きなのと同時に、おうちも大好き。家での一番の趣味は収納(整理収納アドバイザー1級資格取得)。いかにラクするか考えること、「時短」という言葉も大好き。嫌いな言葉は「二度手間」。インテリア、ネットショッピング、お取り寄せグルメ・酒、手抜きおつまみ作りに熱心。「痩せたい」というのが口癖。直近は苦手な掃除をがんばっている。飼い犬はボストンテリア。ふたりの男児の母でもある。
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