年に2回の大祓(おおはらい)、「年越の大祓」と「夏越の大祓」
null神社では年間に様々な神事や行事が行われています。大きな神事の中に「大祓(おおはらい)」というものがあります。ひとつは12月31日に行われる「年越の大祓(おおはらい)」といって、新年を迎えるにあたり罪や穢れを祓う神事、もうひとつは1年の半分を過ぎたタイミングの6月30日に行われる「夏越の大祓(なごしのおおはらい)」。
いま注目されているのが「夏越の大祓」。神社によって「夏越の祓(なごしのはらい)」「水無月の祓(みなづきのはらい)」など微妙に名称は異なっていますが、総じて1年の後半のスタート日である7月1日を前に、6月30日に行われる神事のことを指しています。
「夏越の大祓」というのは心身の罪・穢れを神の御力によって祓い清め、暑さで体調を崩しやすい夏の時期を元気に過ごせるようにと祈る神事です。
しかし、実際に祓いを受けるにはどのようにすればいいのか、ご存じですか? kufuraで20代から50代の男女500名にアンケートを実施したところ、「あなたは“夏越の祓”を知っていますか?」という設問に対して85.4%の人が「知らない」と回答しました。
もうすぐ訪れる「夏越の祓」のタイミング、正しく参拝するにはどうすればいいのか、東京大神宮の禰宜、唐松義行さんに教えていただきました。
そもそも「茅の輪」はどこから?
null「夏越の祓」では、神社の境内に茅(ちがや)というイネ科の植物で作った大きな輪を設置し、参拝者はその輪を左→右→左と八の字にくぐって参拝します。
この茅は、蘇民将来の伝説からくるもので、昔スサノオノミコトが蘇民将来という人物のもとに宿泊した際、茅を渡して腰につけるように伝えたところ蘇民将来一家は村を襲った疫病から免れて無事だったという故事から、厄災よけとして使われるようになったようです。
神事は6月30日のみ!茅の輪は6月25日から設置
神事は6月30日のみ 茅の輪は6月25日から設置「東京のお伊勢さま」という名称でも知られている東京大神宮は、伊勢神宮の内宮の御祭神「天照皇大神」と外宮の御祭神「豊受大神」を奉斎(ほうさい)。ほかに「結び」の働きを司る造化の三神があわせ祀られ、また神前結婚式を創始した神社であることから、縁結びの御利益で知られています。こちらでは「夏越の大祓」として6月30日に神事を執り行います。
「『夏越の祓』は昔はそんなに大々的に行う行事ではありませんでした。茅の輪を境内に設置するところが増えたのも、ここ10年、20年の話ですね」(以下「」内、唐松さん)
「茅の輪は30年ぐらい前までは神職による手作りでした。江戸川の土手に行き、茅を刈り集めて編んで作っていましたが、最近は茅を納入する業者さんにお願いできるので、茅の輪を設置する神社が増えたように感じます。そのため、『夏越の祓』や茅の輪くぐりなどの風習が広まったのではないか」といいます。
ちなみに茅の輪の大きさは直径約2m。6月30日の神事よりも前から設置されることが多く、東京大神宮では6月25日に設置されます。神社によってはさらに早い15日頃から設置する場合もあるようです。東京大神宮では7月7日の七夕の準備があるため、6月30日の閉門後には取り外されます。
「夏越の祓」の神事に参列するためには事前の日程確認を
夏越の祓の神事に参列するためには事前の日程確認を東京大神宮の場合、6月30日の「夏越の大祓」は14時と16時の2度行われます。本来は1度だったのですが、あまりに希望者が増えたため現在は2度に分けているそうです。正午より受付し、14時の回は定員300名、16時の回は定員を設けていません。参列券は受付時に1人1枚ずつ渡され、自分の身代わりに罪や穢れを移した「形代(かたしろ)」と初穂料1人1,000円を納めます。
当日の参加が難しい場合は、境内にて配布している形代を同封の返信用封筒で6月24日までに返送するか、6月30日までに境内に持参すれば受付をしていただけます。
東京大神宮の形代は5枚セットになっていて、形代1枚につき1人の氏名・年齢を書きます。その形代でその名前の人の身体をなでてから、形代に息を3度吹きかけます。形代を袋に戻したら、袋の表面に姓・初穂料・人数を記入します。
「夏本番を迎える前に、形代に今までの罪や穢れを祓ってもらって、体調を整え、暑い夏を乗り切りましょうという考え方ですね」(唐松さん)
集められた形代は自分の身代わりとなって大祓の神事を受け、その後故事にのっとって海や川に流されます。昨今では海洋の環境保護の観点から、お焚き上げするところもあるそうです。
「茅の輪くぐり」ルール、歌を唱えるとは!?
「茅の輪くぐり」ルール、歌を唱えるとは!?神聖な境内に突如現れる茅の輪は、普段とは異なる趣を神社の境内にもたらしています。茅の輪を通り抜ける「茅の輪くぐり」も、罪や穢れや厄災を祓い、心身の清浄を祈る神事。「夏越の祓」の時期に設置されますが、6月30日の神事に参列する場合と異なり参拝時に自分のタイミングで茅の輪くぐりができるので、せっかくならばこの機会に参拝し、ぜひ行いたいもの。
普通に茅の輪をくぐって参拝するのもいいですが、この時に唱える和歌があるのでご紹介しましょう。
“水無月の夏越(なごし)の祓(はらい)する人は 千年(ちとせ)の命 延(の)ぶというなり”という和歌を唱え言葉として口にしながら、3度茅の輪をくぐります。そのくぐり方は神前に向かって1回目はくぐったあとは左回り、次は右回り、最後に左回りをしてから正面に抜けて終了です。
「時間帯としては本来は夏の暑さを避け、日が落ちてきた夕刻に行うものなので、その頃をお勧めします。昼の時間帯でも差し支えありません」
ただし、東京大神宮では6月30日当日は午後1時頃から午後5時頃までは神事が行われるため茅の輪をくぐれないのでご注意を。
「夏越の祓」は全国各地の神社で行われていて、詳しい日程や茅の輪の設置などをホームページで公開しているところも多いです。
「夏越の祓」御朱印、御守りはあるの?
「夏越の祓」御朱印、御守りはあるの?最近は神事や季節によって特別な御朱印が頒布される例が増えていますが、東京大神宮では「夏越の祓」での御朱印は出していません。ただ、7月の七夕の御朱印は頒布されることが発表されています。
また、持ち歩ける厄除けアイテムとしてこの時期限定の茅の輪をモチーフにした御守りを頒布している神社もあります。一部神社では、用意している限定御朱印や御守りがなくなると頒布終了となるので気になる方はお早めに。
「夏越の祓」で食べるお菓子とは?
null関西方面では「水無月」という、三角形の白いういろうの上に小豆を乗せたお菓子があります。このお菓子は名前の通り6月に、宮中で行われていた「氷の節句」で食べられていたそうです。
農林水産省のサイトには……
「京都では6月30日になると、1月から6月までの半年間の“罪穢れ(つみけがれ)”を祓い清める神事“夏越しの祓(なごしのはらえ)”が各地の神社で催される。
この神事の際に罪を払い無病息災を願って食べられるのが『水無月』である。三角のかたちは暑気を払う氷を模しており、小豆の赤色は邪気払いの意味がこめられている」
とあります。
暑くなる前に、氷をイメージした三角形のういろうに、邪気を寄せつけないと言われる小豆をのせ、夏を乗り切ることができるよう願っていたのでしょう。
東京大神宮ではお菓子に関わることは何もしていないそう。この風習は、おもに京都に見られるようです。
大阪生まれ。IT系出版社に勤務後、「女性にもITをもっと分かりやすく伝えたい!」とIT系編集・ライターとして独立したはずが、生来の好奇心の強さとフットワークの軽さから、気が付けばトレンドライターとして幅広いジャンルを取材・執筆するように。商業施設や店舗の出店や話題の新商品など、時流にまつわるできごとをさまざまな切り口で伝えています。