「人形のお焚き上げ」を行っている祐徳稲荷神社
null全国には人形供養を受け付けている神社やお寺があり、郵送での供養を受け付けているところもあるのだとか。
そんな人形供養を受け付けている神社のひとつである「祐徳(ゆうとく)稲荷神社」。佐賀県鹿島市にある祐徳稲荷神社は、伏見稲荷大社、笠間稲荷神社とともに日本三大稲荷の一つに数えられ、参拝者は年間300万人に達しているとのこと。
今回は宮司である鍋島朝寿さんに、人形供養についてお話をうかがいました。
人形供養の「お焚き上げ」って実際何をするの?
null人形供養として祐徳稲荷神社に届けられた人形たちは、神社で供養・お焚き上げをされます。実際にはどのようなことをするのでしょうか?
「お焚き上げとは、もともとは神社のお守りや、お札などを対象に行っていたものです。以前は人形などはお断りしていました。
ですが、人形などに“思い入れがあって捨てられなくて困っている”という声をいただき、現代のニーズに合わせて『人形への報恩感謝』という形で受け入れることにしたのです。
ぬいぐるみや、五月人形や雛人形というのは、すごく思い入れがある代物です。その人を楽しませてくれたものですからね。一生懸命人形職人が作ったものであり、それで子どもの成長を祝う。捨てて燃やすのには憚られるものです。
ですから、これに感謝をするという意味で、神前に祀って、感謝の祈願祭というような意味合いでお祓いをします。その後に、お焚き上げをします」(以下「」内、鍋島さん)
「ゴミに出す」と「人形供養に出す」、いちばんの違いは…
null普通のゴミとして出すことと、人形供養に出すことの最大の違いは何でしょうか?
「やっぱり、本人の気持ちや思い出だと思います。例えば、捨てるべき1枚の紙があったとしましょう。ただの紙ならポイっと捨てられると思うのですが、それに好きな人の顔が描いてあったらどうでしょう?
端的に言うと、ものに目と鼻と口と入った瞬間に、ちょっと捨てるのが憚られるような気持ちになったりしますよね。
それと一緒で、どれだけの思いが募っているか、なのです。ご本人の気持ちが、いちばん違うところでしょう」
人形供養はいつすればいい?タイミングは?
null人形をお焚き上げに出すベストなタイミングはありますか? きっかけがなくて処分できず、押し入れにたくさんぬいぐるみが眠っているというケースも多いかと思うのですが……。
「特に決まりはないんです。決まりはないけれども“なんだかこの日にしたいなあ”というような、人それぞれの大安吉日というのがあると思います。
人それぞれの大安吉日は何かと考えると、やっぱりご本人のインスピレーションですね。それを大事にして、その人なりに“この日にしよう”と思った日に出されたらいいんじゃないかと思います。
ゴミの日は水曜日とか決まりがありますけども、こういったものは自分の思いに合わせて、やってもらったらいいと思いますね」
ちなみに、1年で一番人形が届くのはいつでしょうか?
「年末や年度末ですね。年末は大掃除などがありますし、年度末は引越や異動などがあります。
そういうのをキッカケに出される方が多いようです」
お焚き上げされた後はどうなる?
nullお焚き上げされたあとの人形たちは、どうなるのでしょうか? お墓のようなところがあるのでしょうか?
「やっぱり形があるから、良くも悪くも思いが残ります。お焚き上げは、その思いを綺麗な形で送り出してあげる、自分から卒業させてあげるそういったイメージです。
お墓があると、またその他の問題が出てくるのです。人間でもそうですね。誰もお参りする人がいなくなって、お墓だけ取り残されたり。形があると恋しくなってしまったり、人々を不安にさせてしまったりすることがあります。
お焚き上げした後は、然るべき処理の仕方をいたします。ご祈願さえした時点で、今度は皆さんの心の中に納めていただければいいのです。形あるものから、形のないものに変わって、お墓ではなく、皆さんのいい思い出として心の中に納めていただきます」
供養すべき人形は存在する?
nullこういう人形やぬいぐるみは供養すべき!というのはありますか?
「やっぱり、それをご覧になられてどう思うか、というところでしょう。ご本人の気持ち次第ですよね。
Aさんにとっては何でもないものでも、Bさんにとっては違うことがあります。人間にあてはめて考えたらいいです。人それぞれ怒りのツボも違いますしね。感情のツボも違うし、思い入れのツボも違います」
人形のたたりとか、そういうものは実在するのでしょうか?
「そのように言う方もたくさんいらっしゃいます。ですが、人形のせいではないと思います。例えば悪いことが起きて、本当は自分に原因があるんだけれども、その人形のせいにして“この人形があるから”って言う人は結構いらっしゃいますよ。
病気になったり、人間関係の問題があったり、それはもう誰にでもあることですけどね。その人の受け取り方次第です。
ただ、“この人形は……”と思われた場合、その方と波動があっていなかったり、ご自身が生理的に受け入れなかったり……そういったことはあると思います。
そういう時は、躊躇なくご相談していただきたいと思います。また、その機会を通して自分に向き合ったらいいですね」
送られて困るものは?
null送られて困る物はありますか?
「やっぱり、指定しているもの以外ですね。例えば、人形供養はあくまでも人間を対象としたものです。ですから、ペットなどはお断りしております。
もちろん、“ペットも家族じゃないか”と言う方も多いんですけれど、ペットと人間は供養の方法が違ったりするのです。
ですから、ペットにはペット供養というのがありますからね。そちらで受け取って頂けるし、可愛かったワンちゃんネコちゃんも、そちらの方が幸せだと思います。
人形供養に出されたら、それきりにせず、いつか神社にお参りに足を運んでもらえるといいですね」
年末の大掃除で手放したいけど手放せなかった、ぬいぐるみや人形が押し入れから出てくる方も多いと思います。「人形供養」という選択肢もあることを、視野に入れておくとよいかもしれませんね。
【取材協力】
佐賀県鹿島市にあり、日本三大稲荷の一つに数えられる。
貞享4年(1687年)肥前鹿島藩主鍋島直朝公の夫人花山院萬子媛が、朝廷の勅願所であった稲荷大神の御分霊を勧請された稲荷神社。
参拝者は年間約300万人に達する。
人形供養に関しては、ホームページで送り方、金額などをご確認ください。
秋田生まれ。高校卒業後ドイツの大学の舞踊科へ。以後、海外を10年以上放浪し、現在は東京在住。ライターの他、ヨガインストラクターや振付家などもしている。