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人形供養ってどんなことをするの?した方がいい?「祐徳稲荷神社」の宮司さんに聞きました

年末年始や3月の移動シーズンには、不用品がたくさん出てきます。

大体のものは可燃、不燃、資源ゴミ、粗大ゴミ……と、お住まいの自治体の分別法をチェックしながら捨てることができますが、悩ましいのが思い入れがある代物たち。

人形やぬいぐるみなど、物を減らすために「捨てるべき」という場合でも、思い出や思い入れがあると、ゴミとしてゴミの日に出すのは憚られることも……。

そのような場合に、思い入れのある人形やぬいぐるみを手放す方法として「人形供養」を考えてみてはいかがでしょうか?

「人形のお焚き上げ」を行っている祐徳稲荷神社

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祐徳稲荷神社

全国には人形供養を受け付けている神社やお寺があり、郵送での供養を受け付けているところもあるのだとか。

そんな人形供養を受け付けている神社のひとつである「祐徳(ゆうとく)稲荷神社」。佐賀県鹿島市にある祐徳稲荷神社は、伏見稲荷大社、笠間稲荷神社とともに日本三大稲荷の一つに数えられ、参拝者は年間300万人に達しているとのこと。

今回は宮司である鍋島朝寿さんに、人形供養についてお話をうかがいました。

祐徳稲荷神社の宮司、鍋島朝寿さん。

人形供養の「お焚き上げ」って実際何をするの?

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祐徳稲荷神社のお焚き上げの様子。

人形供養として祐徳稲荷神社に届けられた人形たちは、神社で供養・お焚き上げをされます。実際にはどのようなことをするのでしょうか?

「お焚き上げとは、もともとは神社のお守りや、お札などを対象に行っていたものです。以前は人形などはお断りしていました。

ですが、人形などに“思い入れがあって捨てられなくて困っている”という声をいただき、現代のニーズに合わせて『人形への報恩感謝』という形で受け入れることにしたのです。

ぬいぐるみや、五月人形や雛人形というのは、すごく思い入れがある代物です。その人を楽しませてくれたものですからね。一生懸命人形職人が作ったものであり、それで子どもの成長を祝う。捨てて燃やすのには憚られるものです。

ですから、これに感謝をするという意味で、神前に祀って、感謝の祈願祭というような意味合いでお祓いをします。その後に、お焚き上げをします」(以下「」内、鍋島さん)

祐徳稲荷神社の神前に祀られる人形たち。

「ゴミに出す」と「人形供養に出す」、いちばんの違いは…

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普通のゴミとして出すことと、人形供養に出すことの最大の違いは何でしょうか?

「やっぱり、本人の気持ちや思い出だと思います。例えば、捨てるべき1枚の紙があったとしましょう。ただの紙ならポイっと捨てられると思うのですが、それに好きな人の顔が描いてあったらどうでしょう?

端的に言うと、ものに目と鼻と口と入った瞬間に、ちょっと捨てるのが憚られるような気持ちになったりしますよね。

それと一緒で、どれだけの思いが募っているか、なのです。ご本人の気持ちが、いちばん違うところでしょう」

人形供養はいつすればいい?タイミングは?

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お焚き上げの前のご祈祷。

人形をお焚き上げに出すベストなタイミングはありますか? きっかけがなくて処分できず、押し入れにたくさんぬいぐるみが眠っているというケースも多いかと思うのですが……。

「特に決まりはないんです。決まりはないけれども“なんだかこの日にしたいなあ”というような、人それぞれの大安吉日というのがあると思います。

人それぞれの大安吉日は何かと考えると、やっぱりご本人のインスピレーションですね。それを大事にして、その人なりに“この日にしよう”と思った日に出されたらいいんじゃないかと思います。

ゴミの日は水曜日とか決まりがありますけども、こういったものは自分の思いに合わせて、やってもらったらいいと思いますね」

ちなみに、1年で一番人形が届くのはいつでしょうか?

「年末や年度末ですね。年末は大掃除などがありますし、年度末は引越や異動などがあります。

そういうのをキッカケに出される方が多いようです」

お焚き上げされた後はどうなる?

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お焚き上げされたあとの人形たちは、どうなるのでしょうか? お墓のようなところがあるのでしょうか?

「やっぱり形があるから、良くも悪くも思いが残ります。お焚き上げは、その思いを綺麗な形で送り出してあげる、自分から卒業させてあげるそういったイメージです。

お墓があると、またその他の問題が出てくるのです。人間でもそうですね。誰もお参りする人がいなくなって、お墓だけ取り残されたり。形があると恋しくなってしまったり、人々を不安にさせてしまったりすることがあります。

お焚き上げした後は、然るべき処理の仕方をいたします。ご祈願さえした時点で、今度は皆さんの心の中に納めていただければいいのです。形あるものから、形のないものに変わって、お墓ではなく、皆さんのいい思い出として心の中に納めていただきます」

供養すべき人形は存在する?

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こういう人形やぬいぐるみは供養すべき!というのはありますか?

「やっぱり、それをご覧になられてどう思うか、というところでしょう。ご本人の気持ち次第ですよね。

Aさんにとっては何でもないものでも、Bさんにとっては違うことがあります。人間にあてはめて考えたらいいです。人それぞれ怒りのツボも違いますしね。感情のツボも違うし、思い入れのツボも違います」

人形のたたりとか、そういうものは実在するのでしょうか?

「そのように言う方もたくさんいらっしゃいます。ですが、人形のせいではないと思います。例えば悪いことが起きて、本当は自分に原因があるんだけれども、その人形のせいにして“この人形があるから”って言う人は結構いらっしゃいますよ。

病気になったり、人間関係の問題があったり、それはもう誰にでもあることですけどね。その人の受け取り方次第です。

ただ、“この人形は……”と思われた場合、その方と波動があっていなかったり、ご自身が生理的に受け入れなかったり……そういったことはあると思います。

そういう時は、躊躇なくご相談していただきたいと思います。また、その機会を通して自分に向き合ったらいいですね」

送られて困るものは?

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送られて困る物はありますか?

「やっぱり、指定しているもの以外ですね。例えば、人形供養はあくまでも人間を対象としたものです。ですから、ペットなどはお断りしております。

もちろん、“ペットも家族じゃないか”と言う方も多いんですけれど、ペットと人間は供養の方法が違ったりするのです。

ですから、ペットにはペット供養というのがありますからね。そちらで受け取って頂けるし、可愛かったワンちゃんネコちゃんも、そちらの方が幸せだと思います。

人形供養に出されたら、それきりにせず、いつか神社にお参りに足を運んでもらえるといいですね」

年末の大掃除で手放したいけど手放せなかった、ぬいぐるみや人形が押し入れから出てくる方も多いと思います。「人形供養」という選択肢もあることを、視野に入れておくとよいかもしれませんね。

【取材協力】

祐徳稲荷神社

佐賀県鹿島市にあり、日本三大稲荷の一つに数えられる。
貞享4年(1687年)肥前鹿島藩主鍋島直朝公の夫人花山院萬子媛が、朝廷の勅願所であった稲荷大神の御分霊を勧請された稲荷神社。
参拝者は年間約300万人に達する。

人形供養に関しては、ホームページで送り方、金額などをご確認ください。

まなたろう
まなたろう

秋田生まれ。高校卒業後ドイツの大学の舞踊科へ。以後、海外を10年以上放浪し、現在は東京在住。ライターの他、ヨガインストラクターや振付家などもしている。

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