「ピッタリ」な自転車の選び方
nullまず、自転車は何を基準に選べばよいのでしょうか。サイズ? 用途? それともデザイン性? 『ヨツバサイクル』の秋田拓司さんが答えてくれました。
「基本的には大人も子どもも同じ。自転車のサイズが体に合っていることが、いちばん大切です。
自転車のサイズには、車輪の大きさ(インチ数)と本体(ホイール)の大きさがあり、自分の手足の長さに合ったものが乗りやすいです。ただ大人の場合、子どもと比べて筋力があるので、大きすぎたり小さすぎたりしても乗れちゃう場合が多いですね」(秋田拓司さん)
大人の場合は「日々の足」か「スポーツ用」か
自転車と一口にいっても、一般用自転車(ママチャリ)、ロードレーサー、マウンテンバイク、クロスバイク、BMXなど、さまざまなタイプがあります。また、同じ車輪サイズ(インチ数)でも、メーカーごとに微妙に大きさが異なります。だから「人によりピッタリはちがう」というのが基本的な考え。
そのうえで、子どもも大人も当てはまる目安としては、「ハンドルを持った時に腕が少し曲がり、肘に余裕がある状態」が、“体にピッタリ”といえます。肘がピンと伸びた状態だと、とっさの時にハンドル操作がしにくいそうです。
「大人の場合は、“体にピッタリ”であることと、“用途”で選ぶとよいでしょう。
日々の通勤や通学、買い物などに使うならママチャリがおすすめ。ママチャリは、体型や体力のあるなしをあまり選ばない優秀な自転車です。運動のためやスポーツ用なら、ロードレーサーやマウンテンバイクがいいですね。快適にスピードを出せますよ」(秋田拓司さん)
ちなみに、自転車のタイヤが細い=スピードが出せるというイメージもありますが、これは物理的にタイヤの重量が軽くなるからなのだとか。また、タイヤの太さにはそれぞれ特徴があるので、用途や好みに合わせたものを選びます。
「たとえば太いタイヤは、“クッション性が高く安定して走れる”、“パンクしづらい”などのメリットがある一方で、“スピードが出ない”という面もあります。細いタイヤの場合は、“スピードが出やすく軽い”一方で、“乗り心地があまりよくない”“パンクしやすい”といった面も。
ただ、太いタイヤの“スピードが出ない”ということが、実は子ども用自転車にとっては重要だと『ヨツバサイクル』では考えています。自転車に乗りはじめの子どもたちはブレーキ操作も難しく、ペダルを一度こぐと足を止める意識もあまりなくこぎ続けるので、放っておくとスピードを出し過ぎてしまう場合があるんです。
スピードが出過ぎるとケガのリスクも大きくなるので、“スピードが出ない”に越したことはありません。スピードが遅いほうが、伴走するお父さん、お母さんの体力的にも優しいですよね」(秋田拓司さん)
子どもの場合は「体」と「レベル」に合わせる
では、子どもの場合はどうなのでしょうか?
「よく聞くのが、“すぐに成長してしまうから”“できるだけ長く乗ってほしい”という理由で、大きめを選ぶパターンです。安くはない買い物ですのでお気持ちはわかりますが、これはおすすめしません。
なぜなら大人と比べてお子さんは筋力が弱く、ごまかしがきかないからです。大きすぎる自転車は乗りづらく、地面に足がつかないことで、バランス感覚が発達途中のお子さんの恐怖心を助長してしまう可能性もあります。上達の遅れや自転車嫌いにならないためにも、子ども用自転車、なかでも最初の1台を購入するときは、サドルを一番低くしたときに両足を伸ばした状態で足の裏が地面につく、お子さんの体にピッタリな一台を選びましょう。
いちばんよい方法は、自転車屋さんに行き、お子さんといっしょに選ぶことです」(秋田拓司さん)
【レポート】子どもにピッタリの自転車を選ぼう
nullここからは、キッズバイクを中心に魅力的な自転車やアクセサリーを取り揃える『じてんしゃ屋JUNE』へ。店主の鈴木淳さんに、アドバイスとともに、ピッタリの子ども用自転車を選んでいただきました。
鈴木さんによると、自転車に乗り始める子どもの年齢は年々早くなっているのだとか。
「早いと、1歳半〜2歳で乗り始めるお子さんもいますよ。体が大きなお子さんが増えているからかもしれませんね。ストライダーなどキックバイクに乗り慣れて体幹がしっかりしているお子さんは、自転車の上達もスムーズです」(鈴木淳さん)
今回は、筆者の娘(2024年9月現在、6歳・身長117cm)が、『ヨツバサイクル』の14インチから大きなサイズに買い替えます。娘には、3歳半のとき、2021年のクリスマスプレゼントで購入。およそ2年半でサイズアウトしました。
鈴木さんによると「買い替える場合も初めて買う場合も、子どもにピッタリの自転車を選ぶ方法は同じ」とのこと。実体験をレポートするので、どうぞ自転車選びの参考にしてみてください!
Step.1 気になる自転車にまたがってみる
お店に行く前に『ヨツバサイクル』のウェブサイトにある「サイズの測り方」を参考に、股下の長さを測りました。
すると、娘の股下はおよそ50cm。これによるとメーカー推奨サイズは16インチですが、実際に店頭で見ると小さいような……? そこで、より大きな18インチと20インチを中心に見てみることに。
いろいろなメーカーのものを比較できる場合は、同じ車輪サイズ(インチ数)でも微妙にサイズ感が異なるため、気になったものにまたがってみます。
このとき、必ずお店のスタッフといっしょに試すこと。なぜなら自転車屋さんの店頭にあるものは、売り物の場合がほとんどだからです。勝手に乗ったり、ぶつけたりしないよう、親御さんもそばにいて注意しましょう。
またがってみると、車体が自力で支えられるかどうかもわかります。グラついてしまうのは、お子さんにとって重かったり大きかったりするのかもしれません。
また、最初のうちは、またぐという行為自体が上手にできない場合もあるそうです。
「自転車をまたぐ練習は、意外としていないご家庭が多いです。でも、自転車に乗るにはまたげる必要がありますよね。基本的なまたぎ方は、ハンドルを両手で持って、指でブレーキをかけて、またぐ足を高く上げます。少し大きめの自転車に乗る場合は、車体をすこし傾けるとラクにまたげますよ」(鈴木淳さん)
さらに鈴木さんから、スタンドを立てるコツも教えてもらいました。
「左手はハンドル、右手はサドルを持って、右足でスタンドを蹴ります。お子さんが自分で自転車に乗り降りしたり停めたりできるように、スタンドをつける場合はこぐ練習といっしょに扱い方を練習してみてください」(鈴木淳さん)
Step.2 サドルをいちばん下げた状態で足(ひざ)の位置を見る
いろいろ乗る中で、ピッタリのサイズに絞り込んでいきます。このときにチェックするのがひざの位置。地面に足がつかないほど大きなものは不安定ですが、低すぎても膝が曲がりすぎてこぎ出しにくいのだとか。
「お子さんにとって、自転車をこぐという動作は大人が想像する以上に難しい。こぎやすいピッタリのサイズに乗っただけで、それまで乗れなかった子がスイスイ乗れるようになることもあるぐらいです」(鈴木淳さん)
Step.3 用途に合わせてサイズを決める
Step.1、Step.2で、メーカー推奨サイズの16インチは、身長117cmの娘には小さいことがわかりました。そこで、18インチと20インチを乗り比べます。
「初めて買う場合や乗り慣れていないお子さん、地面が凸凹した自然の中で乗る場合は、とりまわしやすいピッタリなものがおすすめ。道がフラットな街中で乗る場合や乗り慣れているお子さんは、やや大きめでも大丈夫なことが多いです。でも、最終的にはお子さんが気に入ることを大事にしてあげてください」(鈴木淳さん)
18インチと20インチを何度か乗り比べる中で、娘が決めたのは20インチ。無事に“ピッタリ”の自転車が決まりました!
「防犯登録」はするべき?
nullピッタリの一台を購入したら、大人用はもちろん、子ども用自転車も防犯登録はするべき? 『じてんしゃ屋JUNE』の鈴木さんの考えを聞くと……。
「防犯登録はかならずしましょう。自転車屋さんによっては18インチから登録するケースもありますが、ぼくのお店ではどのサイズも行っています。
お子さんの自転車も防犯登録をすることで、大人と同じく、万が一の盗難や紛失に備えられます。また、街中で自転車移動中に親御さんとはぐれてしまったお子さんが、防犯登録のおかげでお父さんの連絡先がわかって迷子が解決したケースもあるんですよ」(鈴木淳さん)
近ごろでは、インターネットやネットオークションで自転車を手にいれる方法もありますが、その際も防犯登録をお忘れなく。近隣の登録を行なっているお店にたずねるか、最寄りの警察署で登録できるパターンもあるので、確認してみてください。
努力義務の「ヘルメット」は?
null2023年4月1日から「努力義務」となった自転車のヘルメット着用。一方で「まだまだ浸透していない」とは、『ヨツバサイクル』の秋田さん。
「夏場は暑く、髪型が崩れるなどの理由もあり、ヘルメットをかぶっていない大人はまだまだ多いです。お子さんの場合も、かぶるのを嫌がる子もいるかもしれませんね。
でも、車に乗るときにシートベルトをしめるように、ヘルメットはご自身やお子さんを守る大切なもの。お子さんが嫌がったとしても説得して、小さなうちからかぶることを習慣づければ、大人になってもそれが当たり前になるはずです」(秋田拓司さん)
そんな秋田さんがおすすめするヘルメットは「日本のメーカーのもの」。
「やはり日本のメーカーのものは、日本人の頭に合っているのでかぶりやすいと思います。ただ、自転車と同じく、同じようなサイズでも微妙にかたちが違うので、できればお店で試着してフィットするものを選んでくださいね」(秋田拓司さん)
身近な移動手段だからこそ、安全・安心に乗ろう
nullピッタリの自転車と出合うコツ、防犯登録、そしてヘルメットの着用と、自転車に安心・安全に乗るために大切なことを教えていただきました。
多くの人にとって身近な乗り物だからこそ、ポイントをちゃんと押さえて、のびのびたのしみましょう!
【取材協力】ヨツバサイクル
【お邪魔したお店】
じてんしゃ屋JUNE
所在地:東京都大田区大森北6-24-10
営業時間:10:00〜18:00(昼休み 13:00〜14:00)・月火&祝休み
TEL:03-6423-1550
インスタグラム :@bicycle_shop_june
朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote