子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

「すだち」と「かぼす」の見分け方は?味の違いや使い分け方、「のど飴」が話題の幻の果実も!

【食べ物の違い豆知識】を紹介するこちらのシリーズ。41回目は、よく似ている2種類の柑橘について。料理研究家・時吉真由美さんに聞きました。

まずは「すだち」と「かぼす」について調べてみると…

null

すだち

ミカン科の常緑低木。徳島県に江戸時代から栽培される。果実は扁球形で、頂端は浅くへこむ。果皮は橙色。果肉は九~一〇室に分かれ、淡黄色で酸味が強い。多汁で、香気があり、調味用として珍重される。

【出典】精選版日本国語大辞典 小学館

かぼす

ユズの近縁種。果実は球形で、果肉の酸味が強く、食酢用とする。大分県の特産。

【出典】デジタル大辞泉 小学館

つまり「すだち」と「かぼす」の違いって?

共に柑橘類ですが、どうやら産地がすだちは徳島県、かぼすは大分県と異なるよう。とはいえ、辞書内容ではイマイチ違いが分からず……。そこで、パッと分かる見分け方を時吉さんに聞いたところ、「ズバリ大きさ!」とのこと。

「すだち」はピンポン玉からゴルフボールくらい、「かぼす」はテニスボールくらいなのだそう。こう覚えておけば、見た目でパッと判断できますね。

さらに調べてみたところ、「すだち」は徳島県が全国生産量98%「かぼす」は大分県が全国生産量99%と、それぞれ徳島県と大分県でほぼ生産されているので、産地で見分けても間違いなさそうです。

すだちやかぼすなどの「香酸柑橘類」は料理の名脇役!

null

また、時吉さんは、すだちやかぼすは「香酸柑橘類」と呼ばれる果実だと教えてくれました。

「みかんやオレンジのように皮をむいて果実を食べるのではなく、主に果汁や果皮を使用するものを“香酸柑橘類”と呼びます。すだちやかぼす以外にも、ゆず、だいだい、レモン、ライム、シークワーサーなども同じ香酸柑橘類の仲間です。

これらは果実を食べるというよりも、果汁や果皮を料理の添え物にしたり、果汁をポン酢やジュースに使ったり、ジャムに加工したりすることが多いですね」(以下「」内、時吉さん)

確かに、すだちは大きさ的にシークワーサーと似ていますね。かぼすは皮が厚く、種が多いところは、ゆずにそっくり。どれもみんな香酸柑橘類(まさに香りと酸味!)だったのですね。

「香りのすだち、酸味のかぼす」と覚えよう!

null

また、時吉さんいわく、料理の世界では、「香りのすだち、酸味のかぼす」と例えられるそう。

「すだちはさっぱりとしたさわやかな香りが、かぼすは甘味とのバランスがとれたまろやかな酸味が特長です。そう覚えておくと、料理をする際に上手に使い分けることができますよ」

「すだち」が合う料理

  • 秋刀魚の塩焼き
  • 松茸の土瓶蒸し
  • 鶏の唐揚げ
  • ふぐ刺し
  • そうめん

まさに松茸の土瓶蒸しは、松茸の風味を壊さないよう、酸味よりも香りが欲しい一品。秋刀魚などの焼き魚も魚特有の臭みをさっぱりさせるのに最適です。

「すだちの生産地は徳島県。徳島名産のそうめんとも相性抜群で、すだちが添えてありますよね。近隣の下関のふぐにも欠かせません。そういった産地との密接な関係もあるようです」

「かぼす」が合う料理

  • ポン酢
  • ドレッシング
  • お酒(かぼすサワーなど)
  • ジュース(はちみつと炭酸水で割る)

一方、かぼすは甘味があり、まろやかな酸味が魅力。果実が大きいことから、すだちよりも採れる果汁の量が多いので、液体と配合するのにぴったり。酸っぱすぎないので、お酒やジュースに加えると美味しくいただけます。

「私はポン酢を手作りするのですが、いただいたかぼすを使うことも。余談ですが、先日、宮崎産のグレープフルーツをいただいたのでポン酢を作ってみたら、サラダのドレッシングに最適でした。フレッシュな柑橘をポン酢に使うと本当に美味しいです」

ちなみに、すだちの旬は8〜9月、かぼすの旬は8〜11月といわれていますが、共に日本一の産地なのでハウス栽培や冷蔵貯蔵で、通年出回るようになっています。

幻の果実「じゃばら(邪祓)」とは?

null

さらに、時吉さんが香酸柑橘類を知るうえで、とても興味深い話をしてくれました。

「あるテレビ番組のロケで、幻の果実と呼ばれる“じゃばら(邪祓)”という柑橘を取材したことがあります。この柑橘が育つのは、日本でも、世界でも、唯一、和歌山県の北山村だけ。さらにこの北山村は、和歌山県でありながら、村全域が奈良県と三重県に隣接しているという日本で唯一の飛び地の村。延々とバスに揺られて辿り着きました」

調べてみたところ、じゃばらはもともと自然交配で誕生した謎の木で、“変なみかんが育つ。でもそれが独特の味で美味しい”と、地元の人たちが大切に育てたところ、世界に類のない新しい品種として注目を集めました。今や村の特産物となり、村の雇用を作る一大産業となったそうです。

「北山村は”神が宿る村”ともいわれ、地元の方々は神様からの贈り物として大切に育てていました。なので、“邪気を祓う”と書いて“じゃばら”。とても縁起のよい柑橘です」

和歌山県北山村産じゃばら果汁を使用した「邪払のど飴」。270円(税込)/UHA味覚糖
じゃばらの皮までまるごと使った「じゃばらぽん酢 じゃぽん」 360ml 626円(税込)/じゃばらいず北山

なるほど……香酸柑橘類は、すだちは徳島、かぼすは大分、レモンは広島、青レモンは小笠原諸島、シークワーサーは沖縄など、どこも産地が限られているのが不思議でしたが、時吉さんの話を聞いて納得! その土地で自生していることが多いのですね。

調べてみると、徳島県には樹齢200年のすだちの古木が今も健在でたくさんの実をつけているそう。大分県にも現在は枯死していましたが、樹齢300年は下るまいといわれたかぼすの原木があったそうです。じゃばらのように、地元の人たちが古来より大切にしてきたこの土地ならではの宝なのだと感じました。

「メキシコ料理ではサルサやタコスにギュッとライムを搾る。これもメキシカンライムの産地だからですよね。その土地の料理と融合して、さらに美味しさを引き立ててくれる。香酸柑橘類は、その土地の料理に欠かせない存在ですね」

確かにメキシコのコロナビールにも、ライムをギュッと搾りますね! 香酸柑橘類の産地も知っておくと、料理の知識がグッと広がる気がしました。

さらに、香酸柑橘類はクエン酸やビタミンCが豊富で、疲労回復や殺菌作用などの効果もあるそう。寒い季節は風邪対策にも役立ちそうです。ぜひ、産地で愛されて育ったすだちやかぼすを味わってみてください。

取材・文/岸綾香

時吉真由美
時吉真由美

料理研究家。(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表

土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIP!MOCO’Sキッチン」(放送終了)「有吉ゼミ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍。

Instagram(@cooking_clocca)では、日々のお料理や季節の和菓子といったレシピを中心に、オススメの調理器具やロケ先で出合った食材などを発信中。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載