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「筋子」と「イクラ」の違いって?プロ直伝「自家製イクラのしょうゆ漬け」の作り方も紹介

【食べ物の違い豆知識】を紹介するこちらのシリーズ。40回目は、みんな大好きなあの魚卵について。料理研究家・時吉真由美さんに聞きました。

まずは「筋子」と「イクラ」について調べてみると…

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筋子

鮭の腹から取り出した卵を、卵巣膜に包まれた状態で塩づけにしたもの。

【出典】精選版日本国語大辞典 小学館

イクラ

《魚の卵の意》サケ・マスの卵を塩漬けにした食品。日本では、筋子に対し、成熟した卵を一粒ずつ離したものをいう。

【出典】デジタル大辞泉 小学館

つまり「筋子」と「イクラ」の違いって?

「筋子」は薄皮(卵巣膜)に包まれた状態のもの「イクラ」は一粒ずつバラバラにした状態のものでした。

もともとは、同じ鮭の卵なんですね!(マスの場合もあります)

また、どちらも塩漬けにされたものを指すようです。ちなみに、イクラは「魚の卵」を意味するロシア語なんだそう。

旬の時期に出回る「生筋子」なら割安で「自家製イクラ」が作れる!

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料理研究家の時吉さんは、鮭が旬の季節に「自家製イクラ漬け」を作ることも。長年作っている方法を教えてくれました。

「筋子とイクラは形状が異なるだけで、基本は同じもの

筋子は保存に便利な塩漬けにしてある塩蔵品が主流ですが、年に一度、生鮭の旬の時期である9月末〜12月上旬になると、塩蔵されていない生の筋子が出回ります。スーパーの店頭にも並ぶので、この時期に自家製イクラを楽しむ人も多いのではないでしょうか。自分で漬けたイクラの美味しさはひとしおですよ」(以下「」内、時吉さん)。

わ……わかります! 筆者も年に一度だけ、生の筋子からイクラを漬けるのを楽しみにしている派です。割安で大量にイクラを作ることができるので、この季節を心待ちにしています。

「筋子は旬の出始めの方が、弾力があってプリプリしていて、ほぐしやすいと言われています。選ぶ時のポイントは以下を参考にしてくださいね」

【新鮮な筋子の見分け方】

  • 皮にハリがあってツヤがある
  • 粒が破れたり、潰れたりしていない
  • あまり血が出ておらず、色が鮮やか
  • 粒や形が均一に揃っている

ちなみに、マスの卵も「イクラ」とのこと。見分け方としては一般的には、鮭の方が粒が大きく、食感も良いそう。最近は油などを利用した「人工イクラ」も出回っているので、気になる人は表示をしっかりチェックしてください。

時吉さん直伝【自家製イクラのしょうゆ漬けの作り方】

(1)筋子をほぐす

60℃の塩水(濃度3%)を作り、筋子を入れて菜箸でぐるぐるかき混ぜる。薄皮が菜箸にまとわりついたら取り除く。

(2)水がきれいになるまで洗う

ザルにあげて湯を捨て、粒がほぐれるまで3〜4回水で洗う。残った薄皮を手で優しく取り除きながら、水がきれいになるまで続ける。粒が全部ほぐれたら、最後に塩水にくぐらせる(または、後述するしょうゆ洗いをする)。

(3)調味液に漬ける

しょうゆ、みりん、酒を1:1:1で混ぜ合わせ、煮切ってアルコールを飛ばし冷ました調味液に、ほぐした粒を漬け込む。好みでだしを加えてもOK。味付けは好みで調整を。

(4)冷蔵庫で漬け込む

冷蔵庫で2〜3時間ほど置いたら完成!

「以前は40℃のぬるま湯でほぐすのが一般的でしたが、最近はアニサキスへの対処から60℃が推奨されています(アニサキスは60℃で1分加熱すると死滅するといわれています。※厚生労働省のHPより)。

湯に入れるとイクラは白く変色しますが、また調味液に漬けると色は戻るので、安心して進めてください。また、漬け込む前にしょうゆで洗うと、水っぽくならず、より味がなじみやすくなります。これは“しょうゆ洗い”“むらさき洗い”と呼ばれる方法です」

私も初めて作った時はイクラが白くなるので、「え? 大丈夫かな?」と不安になりましたが、驚くほどきれいな色に戻ります。来年は時吉さんおすすめの“しょうゆ洗い”をぜひ試してみようと思います!

おすすめの食べ方は?

「イクラはまさに赤い宝石。少量のせるだけでグッと華やかになるので、お祝いごとの料理には欠かせない存在です。

松前漬けにのせたり、なますを入れた柚子釜に飾ったり。余ったら、大根おろしやきゅうりのすりおろしや、短冊切りにした長芋にのせたりしても、粋な箸休めになりますよ。私は旬の時期に自家製イクラを作ったら冷凍しておき、おせち料理にも使っています」

もし、イクラを漬け過ぎて味が濃くなってしまった場合は、200mlにみりん小さじ1、ひとつまみの塩を入れて混ぜ、そこに漬けたいくらを入れると、塩抜きできるそう。

「料理ではよく“呼び塩”などと言いますが、これは浸透圧を利用して、塩分が濃い食材から薄い塩水へと塩分を移動させ、塩を抜く方法です。お正月の料理では、数の子の塩抜きでも使いますね」

一方、「筋子の塩漬けもねっとりして美味」と時吉さん。

「筋子の塩漬けは、おにぎりの具にしたり、お茶漬けにしたり、ごはんとの相性抜群です。

もともと鮭の産地である北海道や東北で、長持ちさせる保存法として筋子の塩漬けは活用されてきました。昔の人の知恵ですね」

お正月の料理を華やかに彩ってくれるイクラは、もとを正せば筋子でした。今年は赤い宝石をぜひお正月に味わってみてはいかがでしょうか。

 

取材・文/岸綾香

時吉真由美
時吉真由美

料理研究家。(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表

土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIP!MOCO’Sキッチン」(放送終了)「有吉ゼミ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍。

Instagram(@cooking_clocca)では、日々のお料理や季節の和菓子といったレシピを中心に、オススメの調理器具やロケ先で出合った食材などを発信中。

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