まずは「筋子」と「イクラ」について調べてみると…
null筋子
鮭の腹から取り出した卵を、卵巣膜に包まれた状態で塩づけにしたもの。
【出典】精選版日本国語大辞典 小学館
イクラ
《魚の卵の意》サケ・マスの卵を塩漬けにした食品。日本では、筋子に対し、成熟した卵を一粒ずつ離したものをいう。
【出典】デジタル大辞泉 小学館
つまり「筋子」と「イクラ」の違いって?
「筋子」は薄皮(卵巣膜)に包まれた状態のもの。「イクラ」は一粒ずつバラバラにした状態のものでした。
もともとは、同じ鮭の卵なんですね!(マスの場合もあります)
また、どちらも塩漬けにされたものを指すようです。ちなみに、イクラは「魚の卵」を意味するロシア語なんだそう。
旬の時期に出回る「生筋子」なら割安で「自家製イクラ」が作れる!
null料理研究家の時吉さんは、鮭が旬の季節に「自家製イクラ漬け」を作ることも。長年作っている方法を教えてくれました。
「筋子とイクラは形状が異なるだけで、基本は同じもの。
筋子は保存に便利な塩漬けにしてある塩蔵品が主流ですが、年に一度、生鮭の旬の時期である9月末〜12月上旬になると、塩蔵されていない生の筋子が出回ります。スーパーの店頭にも並ぶので、この時期に自家製イクラを楽しむ人も多いのではないでしょうか。自分で漬けたイクラの美味しさはひとしおですよ」(以下「」内、時吉さん)。
わ……わかります! 筆者も年に一度だけ、生の筋子からイクラを漬けるのを楽しみにしている派です。割安で大量にイクラを作ることができるので、この季節を心待ちにしています。
「筋子は旬の出始めの方が、弾力があってプリプリしていて、ほぐしやすいと言われています。選ぶ時のポイントは以下を参考にしてくださいね」
【新鮮な筋子の見分け方】
- 皮にハリがあってツヤがある
- 粒が破れたり、潰れたりしていない
- あまり血が出ておらず、色が鮮やか
- 粒や形が均一に揃っている
ちなみに、マスの卵も「イクラ」とのこと。見分け方としては一般的には、鮭の方が粒が大きく、食感も良いそう。最近は油などを利用した「人工イクラ」も出回っているので、気になる人は表示をしっかりチェックしてください。
時吉さん直伝【自家製イクラのしょうゆ漬けの作り方】
(1)筋子をほぐす
60℃の塩水(濃度3%)を作り、筋子を入れて菜箸でぐるぐるかき混ぜる。薄皮が菜箸にまとわりついたら取り除く。
(2)水がきれいになるまで洗う
ザルにあげて湯を捨て、粒がほぐれるまで3〜4回水で洗う。残った薄皮を手で優しく取り除きながら、水がきれいになるまで続ける。粒が全部ほぐれたら、最後に塩水にくぐらせる(または、後述するしょうゆ洗いをする)。
(3)調味液に漬ける
しょうゆ、みりん、酒を1:1:1で混ぜ合わせ、煮切ってアルコールを飛ばし冷ました調味液に、ほぐした粒を漬け込む。好みでだしを加えてもOK。味付けは好みで調整を。
(4)冷蔵庫で漬け込む
冷蔵庫で2〜3時間ほど置いたら完成!
「以前は40℃のぬるま湯でほぐすのが一般的でしたが、最近はアニサキスへの対処から60℃が推奨されています(アニサキスは60℃で1分加熱すると死滅するといわれています。※厚生労働省のHPより)。
湯に入れるとイクラは白く変色しますが、また調味液に漬けると色は戻るので、安心して進めてください。また、漬け込む前にしょうゆで洗うと、水っぽくならず、より味がなじみやすくなります。これは“しょうゆ洗い”や“むらさき洗い”と呼ばれる方法です」
私も初めて作った時はイクラが白くなるので、「え? 大丈夫かな?」と不安になりましたが、驚くほどきれいな色に戻ります。来年は時吉さんおすすめの“しょうゆ洗い”をぜひ試してみようと思います!
おすすめの食べ方は?
「イクラはまさに赤い宝石。少量のせるだけでグッと華やかになるので、お祝いごとの料理には欠かせない存在です。
松前漬けにのせたり、なますを入れた柚子釜に飾ったり。余ったら、大根おろしやきゅうりのすりおろしや、短冊切りにした長芋にのせたりしても、粋な箸休めになりますよ。私は旬の時期に自家製イクラを作ったら冷凍しておき、おせち料理にも使っています」
もし、イクラを漬け過ぎて味が濃くなってしまった場合は、200mlにみりん小さじ1、ひとつまみの塩を入れて混ぜ、そこに漬けたいくらを入れると、塩抜きできるそう。
「料理ではよく“呼び塩”などと言いますが、これは浸透圧を利用して、塩分が濃い食材から薄い塩水へと塩分を移動させ、塩を抜く方法です。お正月の料理では、数の子の塩抜きでも使いますね」
一方、「筋子の塩漬けもねっとりして美味」と時吉さん。
「筋子の塩漬けは、おにぎりの具にしたり、お茶漬けにしたり、ごはんとの相性抜群です。
もともと鮭の産地である北海道や東北で、長持ちさせる保存法として筋子の塩漬けは活用されてきました。昔の人の知恵ですね」
お正月の料理を華やかに彩ってくれるイクラは、もとを正せば筋子でした。今年は赤い宝石をぜひお正月に味わってみてはいかがでしょうか。
取材・文/岸綾香
料理研究家。(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表
土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIP!MOCO’Sキッチン」(放送終了)「有吉ゼミ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍。
Instagram(@cooking_clocca)では、日々のお料理や季節の和菓子といったレシピを中心に、オススメの調理器具やロケ先で出合った食材などを発信中。