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「料理酒」は飲めない?「日本酒」や「みりん」との違いも【食べ物の違い豆知識】

【食べ物の違い豆知識】を紹介するこのシリーズ。34回目は、ともに「酒」の字がついたこの2つ。料理研究家・時吉真由美さんにうかがいました。

まずは「料理酒」と「日本酒」について調べてみると…

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料理酒

調味料として用いる日本酒。糖類や食塩などが添加してあり、飲用にはならない料理専用の日本酒。

【出典】飲み物がわかる辞典 講談社

日本酒

日本伝来の醸造法による、米と米麹とを主原料としたアルコール含有飲料である清酒の別称。

【出典】日本大百科全書(ニッポニカ) 小学館

つまり「料理酒」と「清酒」の違いって?

どちらも米と米麹を主原料とした日本酒です。大きな違いは食塩の有無

一般的に、日本酒に塩分は含まれませんが、料理酒には糖類や食塩が加えられます。

「酒」の字があるので飲み物だと思いがちですが、料理酒には塩分が入っているため、基本飲用はできないんですね。

料理酒・日本酒・みりんの使い分けをマスターしよう!

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「料理酒」の働きや使うメリットって?

料理研究家・時吉さんによると……

「料理酒には食塩が3%ほど入っていて、飲用ではない料理専用のお酒です。料理酒には次のような働きがあります。

  • 味を調える
  • 素材を柔らかくする
  • 臭みを消す
  • 味の含みをよくする
  • 煮崩れをふせぐ
  • 味にコクを出す
  • 照りが出る

働き者ですね(笑)。お肉の下味などに重宝すると思います。日本酒もほぼ同じ働きをしてくれますが、料理酒は塩分が入っていることで味が調えやすいというのが特徴です。

なにより、アルコールが含まれているとはいえ、あくまでも調味料扱いなので酒税がかからず日本酒よりも安いこと。そして、酒類の販売免許がない店でも買える手軽さがメリットと言えるのではないでしょうか」(以下「」内、時吉さん)

調べてみると、塩分3%というのは海水と同程度……たしかにこれは飲めない! けれど、お料理にはうれしい効果がたくさんあって、さらに日本酒よりも安く買えるのですから、ありがたい存在ですよね。

「日本酒」とどう使い分けたらいいの?

「ただし、料理酒の塩分には注意しなければいけません」と時吉さん。

「大さじ1、2杯くらいなら問題ありませんが、例えば角煮のようにある程度の量のお酒が必要な時に料理酒を使うと、塩分でお肉が若干固くしまったり、風味が変わったりするおそれがあります。

料理によっては塩を控えるといいでしょうし、塩分が入っていない日本酒で代用するなど、料理酒と日本酒を上手に使い分けてもいいかもしれませんね

日本酒にも純米酒や吟醸酒など種類がありますが、どれがいい、というのはあるのでしょうか?

「たしかに、日本酒って種類豊富ですよね。しいて言うなら、甘口か辛口かくらいでしょうか。甘めに煮たいお料理の場合は甘口で……といった感じで使われるといいかもしれません。でもお好みで大丈夫ですよ」

日本酒で代用する場合は、そこまでシビアに考えなくていいんですね。

「みりん」との違いは?

「同じく和食に欠かせない調味料と言えば、みりんです。みりんは、焼酎に米麹と蒸したもち米を加え、ゆっくり糖化して作られた甘いお酒です

  • 本みりん:アルコール分14%ほど
  • 発酵調味料(みりんタイプ):アルコール分14%ほど
  • みりん風調味料:アルコール分1%未満

3タイプあり、アルコールの分量や添加物に違いがあります。

本みりんには料理酒と同程度のアルコールが含まれていて、3タイプの中で唯一酒税がかかります

みりんタイプもアルコール分は14%ほどですが、食塩などを加えてお酒として飲めないようしているため、酒税法が適用されないんです。アルコール分を1%未満におさえたみりん風調味料は、ノンアルコールなので言わずもがなですね」

あ、だから本みりんってちょっとお高いんですね! それにしても、ひと言でみりんと言っても種類があったとは……。

「みりんタイプは、塩分が入っているので、料理酒同様にお料理の際は塩分調整してあげるといいですね。みりん風調味料はアルコール分が低いだけでなく、水あめや酸味料などが添加されていて、甘みが強いのが特徴なんですよ」

あれ? みりんタイプと料理酒ってアルコールの分量も塩分が入っている点も同じですよね……。どう使い分けたらいいんでしょうか?

「ポイントは、みりんの方が料理酒よりも甘みが強いということ。甘味の強めたいお料理にはみりんが、塩味をつけたいなら料理酒が向いています。みりんは寝かせている間にもち米に含まれているたんぱく質などが分解されてアミノ酸が作られることで、独特の甘みが生まれるそうですよ」

なるほど! これで使い分けもバッチリですね。

「料理酒やみりんは煮切ってから使う場合もあります。煮切るとアルコール臭がなくなるので、より食材本来の味や風味が味わえるようになりますよ」

料理酒・日本酒・みりん……それぞれ似たところはありますが、やっぱり味わいは異なるよう。上手に使い分けられるといいですね。

 

構成/kufura編集部

 

【参考】

・「くらべてわかる食品図鑑6 調味料と調理」家庭科教育研究者連盟 大月書店
・「料理図鑑 ―『生きる底力』をつけよう」おち とよこ 福音館書店

時吉真由美
時吉真由美

料理研究家。(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表

土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIP!MOCO’Sキッチン」(放送終了)「有吉ゼミ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍。

Instagram(@cooking_clocca)では、日々のお料理や季節の和菓子といったレシピを中心に、オススメの調理器具やロケ先で出合った食材などを発信中。

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