子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

読み方は同じだけど…「懐石料理」と「会席料理」の違いを調査【食べ物の違い豆知識】

知らなくても困らない……でも、知ってると誰かに話したくなるような【食べ物の違い豆知識】を紹介するこのシリーズ。25回目は、日本人にとって馴染み深い料理スタイル。料理研究家・時吉真由美さんからのプチ知識も合わせて読めば、さらに詳しく!

「懐石料理」と「会席料理」の違いって…

null

旅館に泊まった時など、手の込んだ料理がコース仕立てで出てくる“かいせき料理”。読みは一緒でも、懐石と会席とある違いがさっぱりわからない……。ということで、調べてみました!

「懐石料理」は、茶の湯でお茶の前にすすめられる軽めの食事のこと

茶の湯の席で、お茶の前に出されるちょっとした食事のこと

禅僧が空腹を紛らわすため懐に温かい石を入れたというのが「懐石」の語源で、一時的な空腹がしのげる程度の少量なことが多く、一汁三菜が基本スタイルです。

《温石(おんじゃく)を懐(ふところ)に抱いて腹を温めるのと同じ程度に、腹中を温め一時の空腹をしのぐものの意》茶の湯の席で、茶をすすめる前に出す簡単な手料理。一汁三菜が一般的。茶懐石。懐石料理。

【出典】デジタル大辞泉 小学館

酒宴向けの料理が「会席料理」

お酒を愉しむための料理のこと。室町時代に確立された冠婚葬祭で用いる儀式的な「本膳料理」と「懐石」が独自に発展してできた日本料理のスタイルです。

江戸時代以降に発達した酒宴向きの料理。本膳料理と懐石が変化・発達したもので、現在では日本料理の主流となっている。

【出典】デジタル大辞泉 小学館

で、つまり「懐石料理」と「会席料理」の違いは…

お料理をいただくシーンに大きな違いが。

「懐石料理」とは、茶の湯の席でお茶の前にいただく料理のこと。一時の空腹が満たせる程度の軽めの食事が基本です。

一方の「会席料理」は、宴席などで出されるお酒を愉しむための料理のこと。コース仕立ての料理は品数も多く、とても豪華です。

現在、“かいせき料理”として多くの人が思い浮かべるのは、会席料理の方だったんですね。

スタイルは違えど、共通するのは“おもてなしの心”

null

「懐石料理」と「会席料理」とでは、お料理をいただく目的がまったく異なっていたんですね。

料理研究家・時吉さんによると、
『懐石料理』とは、点てたお濃茶をおいしくいただくためのお料理のこと。空腹がしのげる程度の軽い食事とされています。お料理は一汁三菜が基本で、旬の食材のみを使います

また、流派によって違いはあるかもしれませんが、

  • 四つ足のお肉や香辛料など、味がしっかりしている食材を避ける
  • 刺身や焼き魚には、より淡白な味わいの白身を使う
  • 煮物も塩であっさりした味付けに調える

など、この後いただくお茶の味わいを損ねないよう、食材から味付けまでとことん心配りされているんですよ」(以下「」内、時吉さん)

本来は、料理の後に茶事がなければ懐石料理とは言えないんですね。
懐石料理=豪華な料理というイメージでしたが、おしのぎ程度のボリュームということにも驚きました!

「お料理は二口ほどのご飯と薄味の汁物からスタートし、『湯桶(ゆとう)』と香の物で締めくくられます。湯桶とは、焦がしたお米にお湯を注いだもの。残ったご飯にかけてお茶漬けスタイルでいただく場合もあるようです。客は、器に食べ残しや汚れを残さないよういただくのが作法とされています」

きれいに食べ残さないことでおもてなしに応える……。どの食事シーンにも通ずる精神ですね。

「一方の『会席料理』は、酒宴向きのお料理のことで、季節感出会いものを大切にして献立が組まれます

“出会いものとは、例えば今の時季でいうと筍×ワカメのように、同じ時季に出回る食材を相性よく組み合わせることです。その時に、次の3つも意識されるんですよ。

  • 走り・・・初物など、季節を先取った食材
  • ・・・その時期に食べ頃を迎え、市場に出回っていて安く手に入るもの
  • 名残り・・・旬が過ぎ、終わりを感じさせる食材

海山里の幸を取り入れつつも、一つの献立の中で同じ食材を使わないということにも気が配られます。よく、『○○尽くし会席』と銘打っているものを見かけますが、厳密にいうとこれは『会席料理』とは言えないんですよ」

ええっ! 知りませんでした……
さまざまなことに気を配り作られる会席料理は、どこまでも贅沢なお料理ですね。

「さらに、メニュー数や盛り付ける品数は陽数(奇数)、というのも決め事です(ただし、3切れは“身を切る”としてよくないという考えもあるよう)。

食材の重複を避けたり、陽数で献立を組み立てる点は懐石料理も同様ですが、ご飯が出てくる順番に大きな違いがあります

懐石料理では最初に出されますが、これは、まずはご飯で空腹をしのいでくださいという思いから。お酒を愉しむための会席料理では、最初にご飯で満腹になるとお酒やご馳走が楽しめなくなるからと、最後に出されるのだそうです」

献立の順番にも、お料理をいただく目的が表れていたんだ……。

どちらにも食事をする人へのおもてなしの心は共通していますが、この違い、しっかり覚えておきたいですね。


【取材協力】

料理研究家 時吉真由美

(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表
土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIPMOCO’Sキッチン」(放送終了)「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍中。
楽天レシピに多数のレシピを掲載する他、YouTubeチャンネルClocca Cooking Channelにて、語り継ぎたい伝統的な行事食を中心に、作り方やプチ知識を公開中!

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載