まずは「マドレーヌ」と「フィナンシェ」について調べてみると…
null【マドレーヌ】
小麦粉・砂糖・バター・卵を混ぜて、型に流し入れて焼いた洋菓子。
【出典】デジタル大辞泉 小学館
【フィナンシェ】
アーモンド粉に卵白・砂糖・バターなどを混ぜて焼いた菓子。
【出典】デジタル大辞泉 小学館
つまり「マドレーヌ」と「フィナンシェ」の違いって?
一部、使われる材料に違いがありました。
どちらも砂糖やバターは共通していますが、「フィナンシェ」にはアーモンドパウダーが使われるのが特徴のよう。また、「マドレーヌ」は全卵を使うのに対し、「フィナンシェ」は卵白のみということも分かりました。
たしかに、「フィナンシェ」って「マドレーヌ」よりも香ばしくて、食感もサクッとしているような……。
形を見てみても、「マドレーヌ」は貝殻型、「フィナンシェ」は長方形が主流ですよね。形状も見分けるポイントの一つと言えるかもしれません。
食感も風味も…似て非なるもの!
nullフィナンシェはお金持ちの食べ物!? 名前の由来
「どちらもフランス発祥の焼き菓子ですが、名前の由来がユニークなんですよ」と料理研究家の時吉さん(以下「」内、時吉さん)。
「“マドレーヌ”は女性の名前が由来と言われています。諸説ありますが、18世紀にロレーヌ公のメイドであるマドレーヌが作ったのがはじまり……という説がメジャーではないでしょうか。
生地の型にホタテ貝を使ったことから、ホタテ貝をイメージした貝殻型が定着した……と言われています。
“フィナンシェ”という言葉は、フランス語でお金持ちや金融家を意味します。一説には、金融家たちが背広を汚さずに食べられるものとして作られたお菓子で、あの四角い形は金塊をイメージしている……なんて言われているんですよ」
マドレーヌは女性の名前だったんですね! フィナンシェは、たしかに焼き色の美しさも相まって、積み重ねると金の延べ棒のようにみえなくもないかも(笑)。
焦がす・焦がさないで大違い!バターに注目
「ふたつとも原材料は似通っていますが、配合・分量・作り方による違いで異なる食感を生み出します。
マドレーヌは全体がふんわりしっとりしていて、フィナンシェの方は表面がサクッと、中がふんわりしていますよね。どちらもバターの風味が豊かですが、とくに、フィナンシェはバターがジュワッと滲み出るような感じがしませんか?
その秘訣は、バターを溶かして褐色状態まで加熱させた焦がしバターを使っているから。
練りバターや溶かしバターは、小麦粉などの粉がバターを吸ってしっとりとした仕上がりになります。しかし、焦がしバターを使うと、香ばしさが加わるだけでなく、あのジュワッと滲み出るような食感になるんです。バターが粉に吸われずに残る、とでもいいましょうか……。個人的にあの食感がとても好きです」
フィナンシェのあの満足感があるリッチな感じは、単にバターをたくさん使っているからではなく、焦がしバターにするというひと手間によるものだったんですね。
「焦がしバターさえ作ってしまえばあとは材料を混ぜていくだけなので、フィナンシェの作り方は意外と簡単なんですよ。けれど、この焦がしバター、作るのはとても難易度が高いんです。ちょっと気を許すと焦げ過ぎてしまうし、加熱があまいとただの溶かしバターにしかならない……」
“いい塩梅”というのがパティシエの腕の見せ所なんですね。フィナンシェは卵の黄身が使われないので、よりバターの風味が強調されそうです。
「焼き菓子って、食べた瞬間は小麦粉の粉気や風味を感じるものが多いですよね。けれど、フィナンシェは口に入れた瞬間、なによりもバターの存在感が強いお菓子。
ジュワッと染み出すバターのおかげで口の中の水分ももっていかれにくいから、それこそ忙しい金融家たちにとって、コーヒーや紅茶がなくてもつまみやすいフィナンシェは歓迎されたんじゃないかな、なんて思います。バターの風味が強くてリッチなのも、金融家というイメージにぴったり(笑)。
ふんわり柔らかなマドレーヌは、飲み物と一緒にゆったりと味わいたいですね」
似て非なるものだったマドレーヌとフィナンシェ。バターの風味に注目しながら食べ比べ……なんてティータイムを楽しんでみるのもいいかもしれません。
構成/kufura編集部
料理研究家。(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表
土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIP!MOCO’Sキッチン」(放送終了)「有吉ゼミ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍。
Instagram(@cooking_clocca)では、日々のお料理や季節の和菓子といったレシピを中心に、オススメの調理器具やロケ先で出合った食材などを発信中。