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【速水もこみちさん】最高のキャンプ飯を披露!「もう一歩先の新しい料理を見せたかった」

外で過ごすのも気持ちがいい季節。プロも認める料理の腕前で知られる速水もこみちさんが、初となるキャンプ料理の本『最高のキャンプ飯』(小学館)を発売しました。

前菜から豪快な肉料理、パスタにごはん、デザートまで。直火にこだわった46のレシピは、いわゆる“キャンプ料理”とは一味も二味もちがう! 見た目にも美しく、エンターテインメント性にあふれる内容です。そこで速水さんに、自然の中でつくる料理の魅力や楽しみ、撮影中のエピソードなどを伺いました。

自然の中、仲間とおいしい料理を囲むって最高!

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デイキャンプでは、BBQを取り仕切る“ピットマスター”として料理の中心に立つそう。ちなみに『最高のキャンプ飯』に登場するグリルも包丁もお皿も私物。ギアへの偏愛も垣間見える内容です。(写真:『最高のキャンプ飯』より)

休日は家にじっとしているよりも、出かけてリフレッシュするほうが性に合っているという速水もこみちさん。また、一人よりも心許した人たちとワイワイすることが好き。45年前からは、仕事の影響で自然の中で料理をする楽しさに目覚め、今ではおいしいものに目がない仲間や大切な人と、デイキャンプで料理をするのにハマっているそうです。

自身のYouTubeチャンネルでの料理動画をはじめ、商品開発や関西万博でのレシピ提供など、いまや活躍の場が多岐にわたる速水もこみちさん。「田舎がない都会っ子なので、薪を燃やすという経験自体がありませんでした」。

自然の中で料理することの魅力の一つは、「家のキッチンとちがって難しく、挑戦しがいがあること」。中でも火加減は、風の向きや薪の具合など、その日そのときで変わる環境の中で、臨機応変にどう炎を扱うかがおもしろいのだとか。

「僕は田舎がないので、大人になるまで焚き火をしたことがありません。ありがたいことに結婚して田舎ができて、暖炉や焚き火に薪をくべる機会が生まれ、『薪が燃えるとこんな香りがするんだ』とか『薪をくべすぎてもいけないんだ』などということを知りました。今では、余ったハーブを火にくべて香りを楽しんだりもしています」(以下「」内、すべて速水もこみちさん)

本の撮影中も、ハーブを火にくべて“お清め”していたそう。「ハーブが余ったときにおすすめです。独特のよい香りがしますよ」(写真:『最高のキャンプ飯』より)

仲間と得意なものを持ち寄り、一つになれることも楽しい、とも。

「いつものメンバーは、料理家や飲食店のオーナーなどの仲間と大切な人など、810人。その場で起こることやライブ感も楽しみたいから、食材の下準備はあまりしていきません。現地で買った食材や持っていった調味料で、今日はなに作る?と話し合って、料理が得意なメンバーと交互に作ることが多いですね。

家でギアを用意して、車に積み込み、仲間を迎えに行って、道の駅などで食材を買い、キャンプ場でセッティングして、料理して、片付けて、そしてみんなを送り届けるまでが僕の役目。ギアは重いものもあるから、家に帰ったらビールも飲めないほどクタクタです(笑)。

それでもやめられないのは、開放的で静かな自然の中、みんなできれいな空気を吸いながら料理したりおいしいものを囲んだりする時間が好きなんです。自然からエネルギーをもらって、心の健康にもつながっているような? 大変さ以上に得るものがあります」

柔らかな笑顔と穏やかな雰囲気の速水さんのおかげで、数日間におよぶ撮影中も、和気藹々とした雰囲気だったそう。

自然の中では、普段よりおおらかになれところもお気に入り。

「塊肉を34時間じっくり焼いたり、ゆで時間が長いパスタを火にかけたりするときも、自然の中では『まだかな?』なんて会話しながら、のんびり様子を見守れるんです。これが家のキッチンだと、あと何分?とかって気持ちが逸ったりするんですけど。あとは、油はねやスパイスの香りがつくことも気にせずに、豪快に料理できるところもいいですね」

記憶に残る料理をつくるコツ

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心から料理が好きで、「料理に取り憑かれているのかも」と、その愛をしみじみと語る速水さん。

「大好きな料理で、みんなに喜んでもらいたい」。そして「記憶に残る料理を作りたい」と、目を輝かせる速水さん。仲間とのデイキャンプでは、5品ほどのコースメニューを組み、振る舞うこともあるそうです。

「イタリアンやフレンチのレストランと同じようなイメージです。軽めにスタートしてメインを挟んで、デザートまでバランスよく。ただ、デイキャンプでたくさん作るのは大変なので、最近では3品でもいいかなと思っているところ(笑)。

別に、コースにこだわらなくてもいいんですよ。当日、道の駅で買った立派な食材をサプライズ的に披露したり、料理中に味見し合って相談しながらアレンジしたり。ある種、ショーのような感じで、その場、その瞬間を盛り上げて分かち合うことも、記憶に残る料理のコツだと思います」

作った料理に、言われて嬉しい言葉は?

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火が通りやすく彩りもきれいなプチトマトを使う「パスタポモドーロ」。「パスタの中でも『パスタポモドーロ』は、おうちでも作りやすいおすすめレシピの一つです」。(写真:『最高のキャンプ飯』より)

一所懸命に料理するからこそ、大切な人にどんな言葉をかけてほしいですか?という問いには……。

「やっぱり『おいしいね』が、最高の褒め言葉じゃないかな。あとは、言葉がなくとも、ソースを一滴も残さずに食べてくれたうつわを見るのも幸せ。出来立てをぺろっと平らげてくれる姿も嬉しいですね。

“男の料理”って、女性の作る“毎日食べたくなる安心できる料理”とはちょっとちがって、味が濃かったり、特別な食材を使ったり、作りすぎたりしてね(笑)。彼女や奥さんに『またそんなの作ってんの?』とか言われちゃうこともあるかもしれない。でも僕は、もしそんな言葉を掛けられたとしても、あるだけ嬉しいというか……。文句を言いつつも(笑)、リアクションしてくれるっていうことは僕の料理を認めてくれることだと思うから。きっと喜びを感じるんじゃないでしょうか」

一歩先の、新しいキャンプ飯レシピを目指した

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『最高のキャンプ飯』には、肉料理一つとってもこれまでのキャンプ料理にはなかった発想が詰め込まれています。

今回、自身初のキャンプ料理の本ということもあり、他の人と同じではだめ。もう一歩先の新しいものを見せたいと、制作にあたり気合いを入れたそうです。

「子どものときに初めてつくったカルボナーラにはじまり、僕の料理には、これまで出会ってきたもの、見たもの、経験……すべてがつながって、“僕”という型になっています。イタリアンだけでも、中華だけでも、和食だけでもない。“多ジャンル”なことも、その一つ。僕は旅することも好きなのですが、『最高のキャンプ飯』でも、世界各国の料理からヒントを得たレシピも紹介しました。

速水さんの料理にはスパイスも欠かせません。こちらは私物のスパイス&ハーブ。「家にあるスパイスをなんでもいいので1:1で混ぜて使えば、大抵失敗しません。中でもパプリカパウダーは色合いもきれいで、ガーリックシュリンプや炒め物に使うと立派なおつまみになります」。(写真:『最高のキャンプ飯』より)

本質を理解したうえで作ることも大切にしています。たとえばビリヤニやパエリアは、フライパンで作るレシピもあるけれど、本場ではちがうとか。今回のレシピでも、そこは大切にしました。

ただ、キャンプ料理とはなんぞや?みたいなことは、とくに勉強していません。なぜならキャンプ料理には正解がないから。多少焦げてもいい。それが味になるんです。焦がしも成立するっていうのが不思議な世界ですよね」

速水さんイチオシの「キャンプ飯」は?

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「スイーツは、手軽に作れるものばかりです。とくに『マシュマロサンド』は、カラフルなチョコを使えば見た目も華やかになっておすすめ」(写真『最高のキャンプ飯』より)
スタッフさんたちと、みんなで焼きながら撮影したという『マシュマロサンド』のワンシーン。「マシュマロがぷくっと膨らむ姿は、大人も子どもも一緒に楽しめます」。(写真『最高のキャンプ飯』より)

スパイスを巧みに使った世界の料理や豪快な塊肉、作る工程も楽しめるデザートなど、多彩なメニューが並ぶ『最高のキャンプ飯』。どれも本格的ながら手順はシンプルで、いろいろと作ってみたくなります。

中でもおすすめの一品を聞くと「え〜……全部!!」と即答。

「気持ちを込めて、チームで一丸となって作った一冊なので、おすすめを一つに絞るのは難しいですね。

今回は、心強いファイヤーマスターがいたので、焚き火はお任せして、僕は料理と盛り付けメイン。みんなで助け合いながら、一品一品、撮影していきました。撮影中は天気が悪い日もありましたし、苦手な虫からキャ〜って逃げたりもしつつ……(笑)。僕もテンションが上がって、楽しかった記憶しかありません」

丸鶏がほろほろに煮込まれて、やさしい出汁がじゅわっと染み出た「チキンスープ〜台湾スタイル〜」。冬場のキャンプでコトコト作りたい!(写真『最高のキャンプ飯』より)

「強いておすすめを選ぶなら、これから寒い季節なので『チキンスープ〜台湾スタイル〜』でしょうか。丸鶏を使っているからハードルが高く感じるかもしれないけれど、手に入れやすいチキンレッグに代えてもいいですよ。塩こしょうと最小限の調味料に、五香粉、長ネギやショウガなどの香味野菜を入れて煮込むだけと簡単。体がぽかぽか温まります」

自身のYouTubeでも料理を紹介している速水さんですが、今回はまた違った一面を知ることができるレシピ本になっているのでは?

『最高のキャンプ飯』を「大切な作品です」と愛おしそうに見つめる速水さん。その言葉が表すように、ページをめくるごとに彩りや盛り付けのバランスなど細部にまでこだわった品々が登場し、心がときめきます。

「僕が普段楽しんでいるデイキャンプと同じく、一体感で生まれた一冊です。三浦孝明さんの写真も美しくて、パラパラとページをめくるだけでも、『おいしそう』『楽しそう』と感じていただけるはず。おうちでも作れる料理もあるので、こういうキャンプ飯もあるんだと知っていただく機会になれば嬉しいです」

野外・キャンプ料理撮影/三浦孝明 室内撮影/黒石あみ(小学館) ヘアメイク/高橋幸一(Nestation)、 アシスタント 濱野歩美 スタイリング(人物)/小松嘉章(nomadica)、アシスタント 松本竜弥

『最高のキャンプ飯』(小学館)

『最高のキャンプ飯』
著/速水もこみち 刊/小学館

料理上手で知られる俳優・速水もこみちさんの料理への飽くなき探究心は止まらない! キッチンを飛び出し、直火にこだわって作り上げた速水さん初のキャンプ料理本が誕生。自身もここ数年どハマりしているというキャンプ飯。この本では、キャンプに行って、翌日帰るまでのシチュエーション別に、速水流おすすめレシピを紹介。ご本人愛用のアウトドア調理ギアや、家にストックしているお気に入りのスパイスなども。
料理の手順は至ってシンプルながら、食材の組み合わせやスパイスにとことんこだわり、焚き火で調理することで一気においしくさせる。「アウトドアならではの豪快なレシピの数々を、大切な仲間や家族と焚き火を囲みながら、作って食べてもらえたら幸いです」(速水もこみちさん)

ニイミユカ
ニイミユカ

朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote

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