道具はグリップが命。お使いの包丁、柄はしっかり手に収まっていますか?
null「たかが道具、されど道具」です。質のよい調理道具はけっして安くありませんが、大切に扱えば何年、いえ何十年も使えますし、道具は「育てる」ものだと私は思っています。機能的で美しい道具を自分の手に合った使い勝手のよい“手先”に育てる。すると効率が上がって、お料理もおいしく仕上がります。
“手先”といえば、まさに包丁はそのリーダー格。お料理も食材を切ることから始まります。いかに手早く切り揃えるか、切り口が火の通りや調味料理のなじみ具合を左右し、ひいてはお料理の仕上がりの美しさを決定します。それだけに、柄がすっぽりと手に収まり、力を入れずともスッスッと切れる包丁を使うことが大切なのです。
包丁が変わるとお料理が変わります。そして楽しくなります。もしもいまお使いの包丁にストレスを感じていて、下ごしらえが億劫になっていたら、ぜひ、優秀な手先となって動いてくれる包丁への買い替えを検討してみてください。
ねぎのみじん切りでまな板がビシャビシャになったら、繊維を押し潰している証拠です
nullポイント1: 刃わたり15cmの包丁なら、刃先がブレずにしっかり切れる
市販の包丁には女性用・男性用はありません。大きな手の男性も、小さな手の女性も同じ柄を握ることになります。これにそもそも無理があるんです。
手に余る包丁できれいなせん切りやみじん切りは無理。余計な力は入るし、刃先のコントロールもできません。もしもねぎをみじん切りしていてまな板がビシャビシャになるようなら、それはねぎを切っているのではなく、押しつぶして繊維を壊しているだけ。
刃わたり15cmほどの切れ味のよいペティナイフサイズの包丁なら、小さな手中にもちゃんと収まり、力むことも包丁に振り回されることもなく、しっかり切れるはずです。
鯵や鯖程度の魚なら三枚に下ろすこともできますし、普段のお料理にはこれで充分に用を足すと思います。
ポイント2: 錆びにくく摩耗しにくい素材のものを選ぶ
包丁は、強く、軽く、錆びにくいステンレス製のものがおすすめです。なかでも「モリブデンバナジウム鋼」や「ハイス鋼」などの素材が配合された包丁は、通常のステンレス鋼よりも丈夫で切れ味が持続しやすい特長があります。
また、錆にも強いのでメンテナンスがとてもラク。モリブデンバナジウム鋼配合の包丁は、商品情報に「MV鋼」などと表記されていることもありますので、ちょっと心に留めて探してみてください。
写真/鍋島徳恭
【使ったのは…】
「粉末ハイス鋼包丁」(自在道具)
「刃わたり15㎝、京都の老舗『菊一文字』製の包丁です。素材に切削工具にも使われる非常に硬い鉄鋼材、ハイス鋼の粉末配合で抜群の切れ味が持続します。刃と柄のバランスを細かく調整してありますから、ずっと持っていても疲れません。刃が薄く切り口がとてもきれいに整います」(松田さん)
素材:刃/ステンレス 持ち手/合板
サイズ:刃わたり約15cm、全長約26.2cm
価格:22,000円(税抜)
まつだみちこ◎1955年東京生まれ。女子美術大学卒業後、料理研究家のホルトハウス房子さんに師事、各国の家庭料理や日本料理を学ぶ。1993年から「松田美智子料理教室」を主宰。テーブルコーディネーター、女子美術大学講師、日本雑穀協会理事も務める。最新刊『おすし』(文化出版局)ほか、著書多数。使いやすさにこだわったオリジナル調理ブランド「松田美智子の自在道具」も好評。http://www.m-cooking.com/