琺瑯は酢と塩分に強く、食材の風味を損なわないから、下ごしらえに欠かせません。
null「たかが道具、されど道具」です。質のよい調理道具はけっして安くありませんが、大切に扱えば何年、いえ何十年も使えます。道具は「育てる」ものだと私は思っています。機能的で美しい道具を自分の手に合った使い勝手のよい“手先”に育てる。すると効率が上がって、お料理もおいしく仕上がります。
琺瑯の調理道具もそんな「ちょっと購入に躊躇する」道具ではないでしょうか。バットや計量スプーンなど、料理の下ごしらえに使う程度なら、プラスチックで十分なのでは……と思われるかもしれません。しかし、医療の現場でも使われる琺瑯は、耐熱性・冷却性にすぐれ、汚れやにおいがつきにくいため雑菌も繁殖しにくいのが特徴です。
そして何よりも、酸と塩に強い! これは食材に下味をつけるときやドレッシングなどを作るときに、とても重要なことです。
琺瑯はガラス質の美しい白色で、食材や調味料の色味が際立ちます
nullポイント1:お酢や塩分に強く、風味を損なわない
琺瑯は、鉄の表面にガラス質の釉薬を焼きつけた素材でできています。そのため、耐熱や冷却性にすぐれ、また、酸や塩分、さらに薬品に対しても強い耐久性をもっています。
昔はステンレス製の計量スプーンを使っていたのですが、ドレッシングを作るときに、お酢と塩、その他の調味料を計量し、そのまま一緒にボウルに入れてしばらく放置して味をみると、なんだか味がぼやけている。
おそらく金属との化学反応だと思いますが、ふたたび酢と塩を足して……ということを繰り返していました。琺瑯は食材や調味料と化学反応を起こすことがありません。汚れやにおいが付きにくいのもうれしいですね。
ポイント2:白色だから、食材の様子がわかりやすく見た目も美しい
ステンレス製のバットですと、光が反射して食材の実際の色味が分かりにくいときがあります。スタンダードな琺瑯のバットは、ガラス質の表面に白色を焼きつけています。白のレフ板効果で食材の色がくっきりとわかり、下味をつけた際も、浸透具合も一目瞭然。また、佇まいがすっきりと清潔感があります。お野菜なども琺瑯のバットに入れておけば、出しっぱなしにしていてもおしゃれです。
ポイント3:手入れがラク。ただし、ぶつけたりしないように注意。
食材や調味料と化学反応を起こすことがなく、色や汚れ、においを吸着しにくい琺瑯は、さっと洗えてお手入れが簡単です。ただし、ぶつけたり落としたりすると、表面のガラス質に欠けや割れが生じることがあります。丁寧に扱いましょう。
【今回使用した商品】
「ホウロウメジャースプーン」(自在道具)
3本セット(大)2,420円・(小)2,090円(ともに税込)
松田さんがプロデュースする『自在道具』のアイテム。計るだけでなく、かき混ぜたりするのにも便利なスプーンです。扱いやすいように柄は細めで、ちょっと長くなっています。
「バット(全白)」(野田琺瑯)990円〜(税込)
野田琺瑯さんのバットはサイズが豊富です。入れ子にすれば収納に場所を取りませんから、大中小で何台かもっておかれると便利です。
写真/鍋島徳恭
松田美智子(まつだ・みちこ)
1955年東京生まれ。女子美術大学卒業後、料理研究家のホルトハウス房子さんに師事、各国の家庭料理や日本料理を学ぶ。1993年から「松田美智子料理教室」を主宰。テーブルコーディネーター、女子美術大学講師、日本雑穀協会理事も務める。使いやすさにこだわったオリジナル調理ブランド「松田美智子の自在道具」も好評。http://www.m-cooking.com/