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【ばぁばのおこもりごはん】「おふくろの肉じゃが」と煮物2品…95歳の料理研究家・鈴木登紀子さんのレシピ

家族揃って「いただきます」をすることが当たり前だった時代、家庭の食卓は家族の命と健康を紡ぐベースキャンプであり、”明日”を確認する会議室であり、将来、子ども達が社会に出て恥ずかしくないよう躾ける学校でもありました。

時代は移り変わり、家族それぞれが忙しくバラバラな生活時間を送るようになって久しいですが、いま、”StayHome”を合い言葉に家族が食卓に戻ってきました。

正確にいえば、「うちにいるしか選択肢がない」ということでもあります。家族だからこそ、ずっと一緒にいることがストレスになるときもあるでしょう。しかし、この”おこもり”時間は、ひょっとしたら今しかもてない貴重な家族の時間かもしれません。

「どんなに有名シェフの高級お料理だって、その源は”おふくろの味”なのよ。お母さんの料理にかなうひと皿はないの。この時間は家族の絆を結び直す好機だと思って、ぜひ、みんなでおいしいお料理をたくさん、楽しく食べてほしいと思います。子ども達にもどんどんお手伝いをさせてね」(ばぁば)

「“時季知らず”の肉じゃがは、おふくろの味の筆頭。ふんわりやさしいお味に仕上げましょう」

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今回は、作り置きにも便利な、これまでkufuraで紹介してきたばぁばの煮物2つと、定番の「ばぁばのほくほく肉じゃが」のレシピをご紹介します。

「日本料理は“旬”を大切にする『時季』のお料理です。四季ごとの山海の恵みを食べていれば医者いらず….…というのが、私の母・お千代さんの口ぐせでした。春には体がしゃきっとする芽吹きのもの、夏には体熱を冷まして水分たっぷりのものを。味や香りがよいのはもちろんですが、旬の食材には、その季節の体が必要とする栄養がちゃんと含まれているのです」(ばぁば)

とはいえ、春だからとキャベツやほうれん草を毎日食べるわけにはいきません。

「そこで、いつでも手に入る食材や干ものを使った煮ものなど、季節を問わない“時季知らず”のお料理も必要なのです。肉じゃがは、そんな時季知らずおかずの代表格。ほっとする甘さがなんとも嬉しい、今も昔も“おふくろの味”の筆頭です」とばぁば。

ばぁばの肉じゃがには「汁あり」「汁なし」の2種類ありますが、今回は小さな子ども達にも食べやすく、残ったら卵とじなどにしてもおいしい「汁あり」バージョンをご紹介します。

肉じゃがの出来は、丁寧なアク引きで決まります

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「肉じゃがは支度そのものはほとんど手がかかりません。ただし、アクはしっかりと引いてくださいね。そして、弱火にしないこと。グダグダと煮ますとじゃがいもが割れやすくなりますから、最初は強火、煮立ったら中火に落とし、ひるまずにそのまま煮てください。

アクを引く際は、水を入れたボウルを用意し、網じゃくしやお玉でアクをこまめにすくってボウルに移します。肉じゃがの出来はここで決まるといっても過言ではありません。手抜きは厳禁よ」(ばぁば)

肉じゃがの作り方

撮影/神史子(2015年)

材料(5〜6人分)

牛切り落とし肉 300g

じゃがいも 大4個(600g)

玉ねぎ 1個

サラダ油 大さじ1

薄めのだし 3カップ(水でもOK)

酒 大さじ3

しょうゆ 大さじ3

砂糖 大さじ4

みりん 大さじ1

塩 ひとつまみ

(1)牛切り落とし肉は、食べやすく切ってほぐす。じゃがいもは四つ割りにして皮を薄くむき、水に放してざるに上げる。玉ねぎは縦半分に切って芯を取り、繊維に沿って1cm幅に切る。

(2)鍋にサラダ油を弱火で熱し、濡れ布巾にのせて鍋底を冷ます。牛肉を入れてほぐしながら油を絡める。「こうすると牛肉が鍋にくっつきにくくなります」(ばぁば)。

撮影(料理工程)/神史子(2019年)

(3)鍋を中火にかけて牛肉を炒め、玉ねぎ、じゃがいもを加えてさっと炒める。だし、酒、しょうゆ、砂糖、みりんと塩を加えて強火にする。煮立ったら中火に落とす。

(4)アクを引く。水を入れたボウルを用意し、網じゃくしなどで表面に浮いたアクをそっとすくってボウルに移す。

「この手仕事がとっても大事なの。どんどんアクが出ますから、手早くしっかり取り除いてくださいね」(ばぁば)

アクが浮いてこなくなったら落とし蓋をし、じゃがいもがやわらかくなるまで1415分煮る。

(5)バットに空けてから器に盛る。

「煮ものはすべからず、鍋に入れっぱなしにしないこと。予熱で煮崩れしたり、アクがさらにでたり、せっかくのごちそうが台無しになりますからね。鍋から直接器にザバッとあけるなんて荒っぽいこともダメよ。バットにいったんあけて、そこから盛りつけること。見た目もおいしさのうちですよ」(ばぁば)

疲れをホッと癒す「かぼちゃの甘煮」

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「かぼちゃの煮ものというと、食べるのは大好きだけれど、作るのは“面倒”と言う方が多いの。

でも、ばぁばの『かぼちゃの甘煮』はとっても簡単。水とお砂糖、そして薄口しょうゆをほんのちょっとだけで炊き上げます。

煮ものは冷めながらお味がしみ込んでいきます。この甘煮も、冷めながらじんわりと甘くおいしくなっていきますからね、多めに作ってももちろんいいのよ」(ばぁば)

 

【材料】(4人分)

かぼちゃ 600g

水 適量(かぼちゃに対してひたひたより少なめ)

砂糖 大さじ6

薄口しょうゆ 大さじ1

 

作り方の詳細は、動画や『のこしていきたい母の味「かぼちゃの甘煮」【93歳・ばぁばの愛情たっぷりごはん】』の記事からどうぞ。

とろけるような「大根と豚バラ肉のやわらか煮」

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鍋に大根、豚バラ、おだし、調味料をすべて合わせてから火にかけ、じっくりと煮込む素朴な家庭料理。ご飯がすすむばぁばの煮ものの秘密は、食材の丁寧な下ごしらえにあります。

「大根は面取りをして、お味がしみやすくなるように忍び(隠し)包丁を入れます。それからお米のとぎ汁で下ゆでします。とぎ汁を使いますとね、大根のアクや苦味が抜けてお味もさらにしみやすく、しかし、煮崩れはしにくくなります。あとはちょこちょこいじらないことよ。時間がきちんとおいしくしてくれますからね」(ばぁば)

 

材料(6人分)

大根 1/2本(約600g)

豚バラかたまり肉 200g

しょうが 1片

米のとぎ汁 適量(大根がかぶるくらい)

だし 3〜4カップ

酒 大さじ3

砂糖 大さじ3

みりん 大さじ2

しょうゆ 大さじ3強

絹さや 8枚

作り方の詳細は、動画や『【大根と豚バラ肉のやわらか煮】95歳の現役料理研究家・鈴木登紀子ばぁば料理教室を実況中継』の記事からどうぞ。

ファイティングポーズのばぁば
撮影/神史子(2020年)

PROFILE

鈴木登紀子(すずきときこ)

日本料理研究家。192311月に青森県八戸市に生まれる。46才で料理研究家としてデビュー。東京・武蔵野市の自宅で料理教室を主宰するかたわら、テレビ、雑誌等で広く活躍。『きょうの料理』(NHKEテレ)への出演は、50年近くになる。『ばぁば92年目の隠し味』(小学館)はじめ著書多数。

【ばぁばのレシピはこちらからも】

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