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完成まであと少し…読書感想文は「このひと手間」でもっとよくなる【どうサポートする?夏休みの読書感想文vol.5】

夏休みに読書感想文が終わると「ようやく大変な宿題がひとつ終わった」とホっとした気持ちになる子どもが多いようです。なんとか無事に下書き用紙に文章を書きあげたら、“最後のひと手間”でブラッシュアップしていきましょう!

『kufura』は、読書感想文の講座を担当するなど、多くの生徒の作文の悩みに寄り添ってきた国語講師の吉田裕子さんにご協力いただき、親子で読書感想文を楽しく攻略するための「どうサポートする?夏休みの読書感想文」をお届けしています。

これまで4回にわたり、読書感想文の書き方についてお届けしましたが、最終回の今回は、子ども主体の推敲(すいこう)と見直しがテーマ。“画竜点睛”の段階で、よりよい読書感想文に仕上げるポイントについてうかがいました。

STEP1:句読点と「」の使い方のチェック

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子どもが低学年であれば親子でチェックしたいのが句読点の使い方です。読点(「、」)の打ち方は低学年で学習しますが、実際の文章で使いこなすのは子どもにとって案外難しいものです。

読点を文節ごとに打つ子、その逆で読点を全く使わない子など、その子のクセや性格が表れます。

“だから”“でも”などの接続詞や接続助詞の後や、長い主語の後に読点がついているかチェックしてみましょう。句読点を使うのが苦手な子には、「句読点は音読をするときに読みやすくなるように使うもの」と教えてあげるといいかもしれません。

また、会話文を表記するためのカギ括弧(「」)の使い方もチェックします。会話文が2行以上の場合、2行目以降は1マス開けるルールを設けている学校もありますので、学校で定められたルールに従います。

STEP2:長すぎる一文がないか?

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一文がダラダラと長く続いてしまう場合は、読み手にとっても読みにくいもの。2文に分けると読みやすくなります。ここは、お父さんやお母さんが指摘してあげるといいかもしれません。

【訂正前】あんまり運動が得意じゃない主人公の太郎は、走るのが苦手だけど、なぜかボール投げは得意で、それでもやっぱり野球は嫌いで、ぼくはそこがちょっと自分と似ていると思いました。

【訂正後】主人公の太郎は、あんまり運動が得意ではなく、走るのは苦手です。だけど、なぜかボール投げは得意です。そういうところがぼくにちょっと似ています。

STEP3:誤字脱字のチェック

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誤字脱字は、書いている当事者はなかなか気づかないことがあるので、子どもが自分で見直して気づかない場合には、最初の読者であるお父さん・お母さんがチェックしてあげるといいでしょう。

STEP4:本を読んでいない人にも分かりやすいか

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子どもの作文のひとつの傾向として、自分がわかっていることを読み手もわかっているものとして省略してしまうことがあります。「本を読んでいない人にもわかりやすいか」という視点で読みなおして修正をしていきましょう。

その際にはシリーズ4回目でお伝えしたように「感想文を1日寝かせる」のがコツ。書き上げてから時間が空くことで、自分の文章をある程度、客観的に見つめられるようになります。

STEP5:あなたならではの感想文になっているか

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最後は、子ども自身にチェックしてもらいます。それは「あなたならではの感想文になっているか」という点。

夏休みは、たくさんの生徒が同じ本を題材にして読書感想文を書きます。インターネットを開けば、感想文のお手本が出回っていますし、中には周囲の大人が大幅な加筆修正をしている場合もあるでしょう。しかし、大人が作った感想文は、やはり先生を始めとした“読み手”にはわかってしまうものなのです。

子どもの作文を読んでいると、拙く感じられて“それらしい展開”へと誘導したくなるときもあるでしょう。本から得られる教訓や、感動したポイントなど、親が熱心であればあるほど、どうしても子どもに答えを提示したくなるかもしれません。

でも、そこをグッとがまんして「枠をはみだすのもその子らしさがあっていい」と認めてあげて欲しいと思います。

以上、5回にわたって読書感想文のポイントをお届けしました。

最後に、執筆とチェックを終えた原稿用紙はキレイに折りたたみ、夏休みの大荷物にもまれてランドセルでグチャグチャにならないようにご注意を。

読書感想文は、ある程度ルールに従って文章を構成したり、“自分の視点”を自分の言葉で伝えることの訓練です。感想文を通じて深く関わった本の記憶は、子どもの心に長く残っていくのではないでしょうか。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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