知り合いもいない…渡航当初は不安だらけ
null連載1回目でご紹介したように、我が家は息子が小学5年生の途中で中学受験の予定から一気に留学に切り替えました。なので留学の準備を本格的にスタートし、カナダに到着するまでは、半年しかありませんでした。それまで息子は英会話を習ったことはあったものの、基本的には小学校の英語の授業レベルの英語力しかないまま留学することに。
現地に到着直後。カナダに親子留学をしていたママ友が、何人かカナダ在住の日本人を紹介してくれ、とても心強かったのですが、知り合いと呼べる人はまだだれもいない状態で、しかも息子も私も、海外に住むのは初めての経験。土地勘もまったくないし……と、最初は不安しかありませんでした。
到着してから半年くらいまでは、家具や生活用品を整えたり、近所のどこで何が買えるのかを把握したり、“普通の生活ができる状態”にするのに一杯一杯で、思うように仕事(日本の仕事をリモートで)もできない状態。毎日、とにかくバタバタでした。
カナダに来て1カ月くらい経って息子がくれた意外すぎる手紙
nullそんな状態のなか、ある日学校から帰宅した息子が私に手紙をくれたのです。開いてみるとそこには「カナダに連れてきてくれてありがとう」と書かれていました。
カナダに留学することは、本人も納得していたとはいえ、息子に合っていそうだからと勧めたのは私で、実際に来てみるまで息子が気にいるか分かりませんでした。来てみて、日本のほうがいいと言われたら帰ろうと覚悟をしていたので、とてもうれしかったのを覚えています。
留学環境が子どもに合っていたことで、グングン成長!
null息子がカナダに来てすぐに、「みんなテンションが高くて、笑顔。知らない人でもすぐに会話が始まる。遊べるところもいっぱいあるし。ボク、カナダ好きかも」と言ったことがありました。
日本では慌ただしい東京の都心に住んでいたので、ボール遊びもできない公園ばかりで、子どもが走り回れる場所も少なかったのです。
引っ越したのは、カナダのバンクーバー郊外なので、近所の公園はどこも広すぎるくらい広い。野球のバットで素振りをしても、だれにもなんとも言われないし、ボール遊びも当たり前のようにできる。エレベーターやお店で出会った知らない人と、ふとしたことから会話がスタートすることも。
そんなのびのびとした雰囲気が息子の心にフィットしたよう。ワンパクな息子が学校ではおとなしいと感じることもあるくらい、学校の友達はみんな元気だと言うし、こちらの学校では“みんな同じ”を求められない。先生が話しているときに、自由に発言しても怒られず、そこから話がさらに幅を広げていくようです。
日本でずっと続けていた野球をカナダでも始めると、チームメイトもコーチもみんながとにかく褒めてくれるんです。野球自体を心から楽しむ雰囲気がある。そのおかげか、日本にいるときよりも野球への気持ちが高まり、毎日自主練をするようになりました。
息子は勉強が苦手だと思っていたけれど、それでさえ、ただこれまでの勉強スタイルが息子に合っていなかっただけだと気づきました。今では、毎日やると決めている英語と算数のドリルを、私が気づかないうちにサラサラと終わらせている日もあるほど。
さらには、「ボク、最近勉強が楽しくなってきた」「野球がもっと上手くなってメジャーリーグの選手になりたい」とまで言うように。
“環境が合う”と、ここまで変わるのかと親である私がいちばん驚いています。
子どものいいところに目が行くようになり、親子関係もより良く
nullカナダに来る前は、私の仕事が忙しく余裕がなかったこともあり、息子に話しかけられても「今原稿書いてるから、ちょっと待って」と言ってしまうことがよくありました。
ですが、仕事のペースを落とした今、息子のために使う時間が増えました。こんなことも、息子の精神にプラスになっているような気がします。
息子の成長のおかげで、私も息子を褒めることが増え、息子のいいところに目が行くようにもなり、息子に感謝することも増えました。私が自分らしさを取り戻せ、毎日を幸せに過ごせているのも、学校や野球の仲間と家族ぐるみで付き合うことができるようになったのも、全部息子のおかげ。
子育てが辛くて、早く終わってほしいと思っていた時期があったのが嘘のように、今では毎日毎日息子を愛おしく感じています。
ファッションエディター。ファッション雑誌『Oggi』(小学館)、ウェブマガジン『mi-mollet』(講談社)を中心に、書籍、ウェブコンテンツ、ファッションカタログなどの編集・ライティングを行っている。好きが高じて著者として出版した、旅行ガイド本『子連れGUAM』(ワニブックス)は、これまでなかった“子連れ母”目線が話題を呼び、何度も重版。プライベートでは、12歳野球少年の母。2022年8月末から息子と2人でカナダに移住。親子留学の様子はInstagram@takahashi_kanako_ で投稿中。